環境破壊
249332 「内部被曝」について@ 熱的汚染と元素的汚染
 
志水誠 11/04/12 PM03 【印刷用へ
サイト「き坊の棲みか」のき坊ノート 「原子力発電所」から転載します。
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 原子核分裂

 マンハッタン計画は原子爆弾を3個つくり、ひとつは爆発試験で使い(1945年7月6日、プルトニウム型)、ふたつは広島(同年8月6日、ウラニウム型)と長崎(8月9日、プルトニウム型)に投下した(実際には4個つくられ、もうひとつは戦後の核軍事演習で使われた)。

<中略>

 ウラニウムが放射能として弱いということと、原爆の原料になったり原子力の燃料になったりすることとが、混同されて、理解がアイマイになってしまうことがあるので、その点を述べておく。
 ウランは放射能としては弱いと専門家が述べているところを引用しておく。高木仁三郎がJCOの臨界事故を批判する中でつぎのように言っている。
 ウランというのは一般には、強い放射能を出す物質だという意識がふつうの原子力屋さんにはあまりありません。木炭とか石炭と同じような燃料物質だという意識があって、原子燃料ではありますけれども、強い放射能を出している物質だという感覚はあまりないのです。たしかに比放射能(1グラムあたりの放射線を出す量)にすると、ウランは弱いです。そういう物質ですから、放射性物質としては見なさず、軽視するところがあります。天然ウランの場合には特にそうです。(「原発事故はなぜくりかえすのか」著作集第3巻 p350)
 
<中略>

 ここで、核分裂反応について、マクロな尺度(人間の尺度)において、質的に異なる二重の汚染が生じていることを指摘しておきたい。「汚染」というのは、マクロな尺度でピュア(純粋、単純)でないという意味である。ひとつは熱的汚染である。もうひとつは元素的汚染(放射能汚染)である。

 熱的汚染とは、高エネルギーの粒子と電磁波が放出されるということ、それはわれわれの通常のマクロな尺度の百万倍から数千万倍の高エネルギーである。このメチャクチャな高エネルギーを持った粒子が原子炉内で生じ、周囲のマクロな物質(炉の構造物や冷却水)にぶつかる。マクロな物体が、その高エネルギーを受けとめた状態が“熱せられた状態”である。受けとめかねて破壊されてしまえば、放射性物質となったり隔壁の脆化が生じたりする。マクロな物体が生物であれば、原爆にあたった人間のように、高熱で焼けたり細胞を壊されたりするのである。
この高エネルギー粒子をマクロな物体が受けとめる過程は終局的には“熱拡散”であり、コントロールすることができない。

 元素的汚染とは、核分裂によって新たに生れる原子核が“ランダム”に生じることをさしている。同位体を区別すれば数百種もの原子核が生じるが、その生成過程の本質は量子的確率にある。したがって、きわめて乱雑な種類の元素の混合物が生成される。それらのほとんどは不安定な原子核であって、強い放射能を持つ。それぞれが関係する崩壊系列にしたがって長期間放射能を保つ。これが、炉心の核燃料棒のなかにできて蓄積されていく“核分裂生成物”である。
使用前の核燃料はウランなりプルトニウムなりからできているのだが、原子炉の中で“燃やす”と雑多で強い放射能を持つ元素がどんどん生まれてくるのである。その多くは自然界にほとんど存在していなかった同位体である。しかし元素としては生物になじみのものも多く含まれており、ストロンチウムが骨に、ヨウ素が甲状腺に濃縮沈着してきわめて危険である。
大量に生じる核分裂生成物は、雑多な核種を含みしかも放射性である、という点で、生物にとって深刻な元素的汚染をもたらすというべきである。

 20世紀前半に人類が知った原子核分裂という現象は、原子核というミクロな世界の現象であるが、それが連鎖反応という仕組みを通じてマクロな世界に現れてくるとき、熱的汚染・元素的汚染の二重の汚染をもたらす。この発熱と放射能の二重の汚染は、核分裂の量子的偶然性に深く根ざしていて分かちがたく絡み合っている。汚染というのはマクロな尺度でピュアでない、という意味であって、マクロな尺度に生きている人間は汚染をコントロールすることができない(エントロピー増大則に従うしかない)。
 人類は、原子核分裂を“平和的”に利用することにはいまだ成功していない。こんごも成功することはおぼつかない。核分裂をもてあそび始めた人類が1世紀足らずの間にやったのは、原水爆(その製造と爆発)と原子力発電所によって地球上を放射能で汚染しつつあるというだけである。
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Aに続く
 
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