環境破壊
249095 「内部被曝について」1 乳がん死亡率の上昇ー@
 
志水誠 11/04/09 PM04 【印刷用へ
サイト「き坊の棲みか」のき坊ノート「内部被曝について」より転載します。リンク リンク

 まず、つぎのグラフをじっくりと眺めて欲しい。これは1970年から2006年までの、日本の女性の乳ガン死亡者数(10万人に対する率)の推移を示している。容赦なく増加し続けていることがよく分かる。
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 最新データの2006年を述べておく。女性の乳ガン死亡者が11,177人、対10万人率が17.3。(じつは本稿の「暫定版」では、ここに『内部被曝の脅威』からとったグラフを掲げていたが、そのグラフは男性を含めた全人口に対する比率になっていたので、改めて、「人口動態統計」から作図しなおした。)

 わたしは、ずいぶん多いものなんだなあ、と思った。わたしの知人の範囲でも乳ガンの手術をしたという人が複数いるから、乳ガンの罹患者というのは莫大な数になるのだろう。このグラフは、そういう多数の日本人女性を分母にした、彼女らの乳ガンに関する35年間の「動向」を表現している。

 10万人に対する率としている意味を汲みとってもらいたい。たとえば、女性人口がドンドン増加している時期であれば、ある病気で死ぬ人数がドンドン増加するという場合もある。上のグラフが示しているのはそうではなく、日本女性の全体数とは無関係に現れている傾向だというのである。つまり、確かに日本女性は、乳ガンが原因で死ぬ率が増えているということだ。

 一貫した増加傾向にあるということは、恐ろしい意味がある。乳ガン検診による早期発見や治療は、数十年前と比べれば手厚くなっている。また、検診に対する女性の意識もずいぶん変わった。だから、乳ガンによる死亡率は減少しても不思議ではないのである。それにもかかわらず、「一貫して」増加しているのである。これが意味しているのは、次のことしか考えられない。乳ガンをつくる原因が増加しているということである。それが、何か食品でも自動車排気ガスでも合成洗剤でも他の×××でもよい。ともかく、それが「一貫して」増加しているのである。

 前掲の『内部被曝の脅威』p114以下で、肥田は、上のグラフを作成する動機はアメリカの統計学者J.M.グールドの傑出した仕事に触発されたと述べて、グールドの目の覚めるような仕事を紹介している。

 アメリカで上のグラフと同様の統計がとられ、1950〜89年の40年間にアメリカの白人女性の乳ガン死亡者が2倍になったことが分かった。その原因を求められてアメリカ政府は、膨大な統計資料を駆使した調査報告書を作成し

「乳ガンの増加は、戦後の石油産業、化学産業などの発展による大気と水の汚染など、文明の進展に伴うやむを得ない現象である。」
 
 とした。
 
 グールドは、この政府の統計処理に疑問を持ち、全米3053郡が保有していたその40年間の乳ガン死亡者数を使い、増加した郡と横這いか減少した郡とに分類して、郡ごとの動向を調べた。その結果わかったことは、けして全米一様に乳ガン死亡者が2倍になったのではなく、1319郡(43%)が増加し、1734郡(57%)では横這いか減少していたのである。つまり、明瞭に地域差があるということである。
 
 しかも、グールドは増加している1319郡について、増加要因を探し、じつに乳ガン死亡率が、郡の所在地と原子炉の距離に相関していることを発見したのである。原子炉から100マイル(161q)以内にある郡では乳ガン死亡者数が増加し、以遠にある郡では、横這いか減少していたのである。(なお、原著からの直接の図が公開されていて、さらに、詳しい説明もついている。

(アメリカの原子力施設と乳がん患者の相関関係)
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※アメリカの3053の郡のうち1319郡は原子力施設(原子力発電所と核兵器工場、核廃棄物貯蔵所)から100マイル以内に位置している。図の黒い部分。1985〜89年のアメリカの乳ガン死亡者のうち3分の2はその郡の住民である。(前掲書p141より ただし、引用者の判断で脚注を修正した)

 Aに続く
 
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