古代市場と近代市場
247167 3/13なんでや劇場 交易によって何が変わったのか?
 
冨田彰男 ( 47 兵庫 経営管理 ) 11/03/15 AM00 【印刷用へ
●交易集団になると、何が変わったのか?

洋の東西を問わず、遊牧集団のほとんどは交易集団でもある。
なぜ、遊牧集団が交易を始めたのか?

前提条件として、交易の対象品目は乳製品や毛織物など加工品であり、それは母集団の女たちが作っていたものである。つまり、母集団がまだ残存している時代から交易が行われていた。また、交易が成立するにはお客が恒常的に存在している必要があり、遊牧部族のお客である農耕部族が周辺に存在していたはずである。

遊牧集団が交易を始めたのも、人口増によって遊牧だけでは食えなくなったからであるが、それ以前に周辺の農耕部族の人口増によって至る所に農耕集落が生まれ、定常的な交易が可能になったことが前提条件としてある。

6000年前にイラン高原で交易専業のエラム文明が登場したことを考えると、交易が始まった時期は6500年前頃と推定される(☆この時期は正確に押さえる必要がある)。

いずれにしても、西方のイラン高原〜カザフ草原で交易が始まり、遊牧兼交易が常態化すると、中央アジアの草原の帯を伝ってトルコ族→モンゴル族→ツングース族へと遊牧兼交易がたちまち伝播していった。こうして6000年前には中央アジアの草原の帯全体で遊牧兼交易が当たり前になった。そう考えると、アジアの東の中国でも殷を建てた部族が「商(商人の意)」と自称していたことも説明がつく。

●遊牧部族が交易に転じると何が変わるのか?

交易に転じると、損得・利益という意識が登場する。元々食えないから交易を始めたわけだから、そこには部族の命運がかかっている。こうして部族全体が利益収束し、利益拡大(蓄積)が部族の統合軸となってゆく。これを唯利収束(唯利統合)と呼ぶことにする。

また交易は損得のやり取りであり、利益第一に染まっていることも相まって、著しく他者に対する攻撃性を磨いてゆく=高めてゆく。こうして唯利収束と攻撃性故に、他部族を騙してもよいということになり、騙しと交渉術に長けてゆくようになる。

それだけではない。遊牧兼交易部族は貴重な財を運ぶ。利益第一となった彼らにとっては財が獲られないかが一番の心配事となり、利益第一が故に警戒心を膨らませた彼らが武装するのは必然であった。

元々狩猟部族であった彼らは、遊牧集団であったころから狩猟or猛獣から身を守るために弓矢や槍などを携帯していたが、それはあくまでも他動物を対象としたものであった。ところが、交易部族にとって武器は同類(人間)を対象としたものに変わる。従って、弓矢のような目立つ武器ではなく、ナイフ・短剣といった目立たない武器が登場したであろう。ナイフや剣は戦争が始まって開発されたのではなく、既に交易集団の段階で携行されていたと考えるべきであろう。

逆に言うと、ナイフや剣がいつ登場したのか? その時期までには既に交易武装集団が登場したということになる(☆これも調査課題)。

彼らは、元々は遊牧集団で、それだけでは食えないので遊牧集団兼交易集団兼武装集団という三位一体の集団と化したわけだが、武装集団化したことによって力の原理が全面に出てくることになり、その結果として、父権転換が加速される。遊牧男集団の「女よこせ要求」から父権転換した段階では、母権VS父権の綱引きがあったはずだが、遊牧集団が交易を始めた段階では一気に父権に転換したであろう。

●実現論(戦争の起源説)の塗り替え

「戦争の起源は遊牧発」というのが従来の説だが、戦争の直接の起源は交易に転換したことにあるのが正しい。

交易が始まり集団の統合軸が利益第一となり、それに武装が加わる。これは富族強兵共認に他ならない。つまり略奪闘争の前に既に遊牧兼交易部族は富族強兵共認で統合されている。

また、遊牧→父系転換の段階で自我は芽生えているが、交易集団の自我の強さはその比ではない。利益第一や富族強兵の共認が集団の統合軸となったことによって、成員の意識は強く自我収束していくことになる。

ここまで来ると、いつ略奪闘争(戦争)が始まってもおかしくない状態となる。そこで乾燥化→食糧危機という契機が生じれば、簡単に戦争が始まったであろう。
 
  List
  この記事は 247161 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_247167
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
283508 諜報の起源〜超集団の原点となった遊牧民は商業と軍隊だけでなく情報戦の生みの親でもある 山澤貴志 13/11/18 PM05
251142 【中国】中国は遊牧交易部族が作った国家? たっぴ 11/05/10 AM08
戦争の起源・見直し〜戦争の直接の原因は、6500年前の交易化にある! 「縄文と古代文明を探求しよう!」 11/03/26 PM00
247793 パンドラの箱を開けた瞬間の情景〜遊牧交易集団に思いを馳せて〜 やまと 11/03/23 PM05
247786 遊牧交易集団は、どうして略奪に手を染めたのか? 松尾茂実 11/03/23 PM03
247769 「自分に置き換える」を再認識 ますみん☆ 11/03/23 AM10
247639 狩猟道具から対人用武器への変遷1〜刀剣の象徴するもの〜 匿名希望 11/03/21 PM04
3/13なんでや劇場(3) 交易によって何が変わったのか? 「日本を守るのに右も左もない」 11/03/21 PM03
247170 3/13なんでや劇場(4) 略奪集団であるが故に自我の塊になった西洋人 冨田彰男 11/03/15 AM00

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、42年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp