採集・漁撈・狩猟から栽培・牧畜・遊牧へ
247019 牧畜に西洋管理社会の源流をみる1:家畜の起源
 
山澤貴志 ( 45 鹿児島 ITコンサル ) 11/03/12 PM01 【印刷用へ
246858にもあるように西洋社会の特徴として支配−被支配の社会関係(≒奴隷社会)が挙げられるが、その原型を牧畜段階における牧夫=羊飼いと羊との関係にみる視点は、かなり的を得ていると思われる。

例えば、ユダヤ、キリスト教的伝統において<迷える子羊><善き羊飼い>といったメタファーで人事を描き、救済保証の代理人である司祭を<牧夫>と呼ぶのは、旧約聖書を書いた人物がヘブライの民を羊飼いの後裔と位置付けているからであろう。

遊牧社会の登場が社会の複層化と集団自我→戦争の起源→西洋の略奪性の激しさに大きな影響を与えたであろうことは間違いないが、それに先行する牧畜社会が生み出した「管理社会」的性質や自然観・生命観の変質(畏怖すべき対象としての自然から支配対象としての自然へ)が、さらにその基層をなしているのではないか。

そこで改めて、牧畜化がもたらした人間社会の変化についてみてみよう。

以下は、谷泰著「牧夫の誕生」2010岩波書店からの引用である。(※は私の意見・補足等)尚、谷氏は1934年生まれの京大名誉教授。今西錦司、梅棹忠夫氏らの一門で、その考察は現存する世界の牧畜民のフィールドワークに裏付けられている。

●家畜化は西アジアの天水農耕地帯(丘陵地)で始まった

農耕の起源は1万年前のトルコ北東部からイスラエルにおよぶレヴァント地方の低湿地帯とされるが、まだ同時期には羊・山羊の家畜化の進行は認められない。家畜化が起こるのは農耕の開始に1000年は遅れ、西アジアの丘陵地帯において天水農耕が始められた時期である。つまり、まず狩猟採集段階から狩猟・農耕段階への移行があって、その後に、農耕・牧畜段階への移行が起こるのである。

※この史実は、定住と栽培を主導したのが女たちであり、男たちの生産様式は遅れて変化したということを意味しているように思う。

尚、家畜化以前の動物か家畜化された動物かの識別は、残された動物遺骨が若い雄に偏っていることを持って家畜化の始まりとみなしている。なぜならば、狩猟された動物には雄雌、老若の大きな偏りはないが、家畜段階になると雌は繁殖のために屠殺が遅れ、専ら若い雄から間引かれるからである。こうした動物遺骨の分析から、天水農耕が開始された西アジアの丘陵地帯が家畜の起源地と推定される。

●家畜化の前適応としての追い込み猟

西アジアにおける農耕開始直前の段階(ナトゥーフ文化段階)ではガゼルが主な狩猟対象である。ガゼルの遺骨もナトゥーフ前半では、雄雌がほぼ同じ割合で出てくる。しかし、中期になると雄が8割を占めるようになる。これはガゼルを今日「砂漠のカイト」と呼ばれる石積の囲いに追い込んで捕獲する定置追い込み猟によって生け捕りした結果であろう。しかし、このガゼル追い込み猟がそのままガゼルの家畜化に至った訳ではない。季節性、草原性のガゼルを家畜化するのは容易ではなかった。

※ 砂漠の凧については以下のニュースサイトを参照下さい。リンク
 
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