マスコミに支配される社会
243348 テレビ業怪
 
新聞会 11/01/03 AM11 【印刷用へ
加治将一の「よろずご意見スペース」〜加治将一氏〜リンクより転載します。
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家にテレビはない。
 しかし、テレビはた〜まに眼にする。取材先やら講演先のホテルだが、眼に飛び込んでくるのは、なにが嬉しいのか、たいがいはしゃぐ芸人たちだ。雛壇から我先に笑わそうとしているのでトークが重なる。それも五、六人が束になってどっとくるのでワーワーと聞き取れない。
 とにかくうるさい。
 それもそのはずで、笑わす相手は視聴者ではないのだ。他の芸人仲間、それもとりわけ司会者なんだそうですな。
 視聴者不在。司会者にさえ、覚え目出度くあればよい。というのも司会者は、たいていキャスティングを握っている実力芸人だから、彼らに気にいってもらわないことには、次回の声がかからない。そこで必死になるという構図だ。
 テレビ業界に君臨する実力芸人。彼は、下々の芸人を公私ともに支配する。師弟関係など言えば聞こえはいいが、業界用語でいうところの「イジり」だ。
 なんのことはない、優先的地位を乱用しての上下共依存関係を強制しているだけにすぎないのだが、それが狭い業界の仕来たりらしい。
 テレビのむこうは騒音がカネになる世界だから、まあそれでもいいが、しかし聞かされるこっちはカネを貰えるわけじゃない。たまったものではないので、チャンネルを変える。


 と今度は、人気若手俳優主役のドラマだと。
 クラブ・ホストと見紛う髪型の小僧が、先の妙に長い靴を履いての刑事役。形姿はどれも整形と痩身で、演技は高校生の演劇部だってもっと上手いのじゃないのか程度だから、てんで臨場感はない。
 「おまえ、どうやって犯人を追いつめ、捕まえ、白状させるんだ、おい」
 思わず呟く。見ている方が恥ずかしくなる学芸会なのだが、創る方も創る方で、スポンサーとなってカネを支払う企業も企業ですな。
 おそらく電通、博報堂あたりに「視聴率」が高いから宣伝効果抜群ですよと、口説かれているのだろうが、そもそもそんな口車に乗って中身のない番組にカネを出す企業も、浅はかではありますまいか。
 「視聴率」くらい、当てにならないものはないのをご存じか?


 「視聴率」は、ビデオ・リサーチという会社が弾き出している。この会社、電通が株の35パセーント近くを握り、残りを博報堂やら各民放が細かく分け合っていて、つまり身内の談合会社みたいなものだ。
 調査方法の詳細は非公開ときている。
 いまどき非公開など流行らないが、日頃、他の分野には公開透明を声高に主張するメディの根本調査法が非公開であること自体、アホらしい。いや、加治に言わせたら視聴率などインチキそのものなのだ。
 まずサンプルが信じられないくらいに少ない。細かいことは書かないが、1億数千万はあろうテレビ受像機の中の、サンプル・モニター数は、わずか800台にすぎない。
しかも今日、一家に二台以上は普通なのに一台しか捕捉できず、他のテレビでなにを観ようがほったらかしだ。カウントしない。
 されに録画も対象外だ。
 つまりモニター家庭が共稼ぎなら、帰宅するまでの視聴率はゼロとなる。それに忙しい勤め人も録画に頼らざるを得ないので、平日の視聴率は、これもゼロ。
 加えて、いまや主流になりつつあるパソコン・テレビすらもカウントできない。
 すなわち共稼ぎ、仕事に忙しい人、パソコン・テレビを観ている人は除外され、ではいったいどんな人種の視聴率を測っているのか、想像すらできない。
 かつて民放に不正事件があった。
 だってそうだろう、モニターの数はたかだか800、そのうち50の協力を取り付ければ、視聴率はガンと上がるのだから。


 ニールセンというアメリカの視聴率調査会社が日本にもあったのをご記憶だろうか? こちらの方がぜんぜん公明正大である。そして案の定、同じ番組なのにビデオ・リサーチとニールセンで、真逆の調査結果が出ることは珍しくはなかったのだ。
 業を煮やした民放側は、コントロールしづらいニールセンとの契約を打ち切り、ついに2000年に撤退に追いやっている。
 ことほとさように、「視聴率」など出鱈目なのだ。
 「視聴率16パーセント達成!」
 はいはい、勝手に達成していなさい。
 根拠薄弱出鱈目数字にすがりつくテレビ局、広告会社、スポンサー企業、そこに日本人特有の気持の悪さ、危うさを感じるのは加治だけであろうか。
 ようするに、業界を牛耳っている支配層がインチキ数字を利用し、それが公正まっとうであるかのごとく大衆を欺き、体制を維持していくやり方である。
 インチキ数字と知りつつ、追い込まれ、多くのプロジューサーが「視聴率」なる魔物に呪縛されて鬱になるのは喜劇を通り越して怪奇現象だ。
 かくして妖怪「視聴率」によって、テレビはわけの分からない、お笑い芸人と、小僧、小娘に占領されてしまったのである。
 よって加治の家にはテレビがない。薄っぺらな文化など接したくもないからである。


 加治の作品『幕末 維新の暗号』(祥伝社)をはじめとする、望月先生シリーズはいずれもベストセラーだ。よって映画化の話は、これまで幾度も持ち込まれている。
 読まれた方なら望月先生が、ステッキを持った60歳過ぎの精神堅牢にして、頑固一徹な作家だということをご存じであろう。真実のためならどんな権力、暴力にも屈しない。
 それをこともあろうに20代の人気若手俳優にしたい、と言ってくるのだから世も末である。その人気の裏付けは妖怪「視聴率」だと。
 味噌汁で顔を洗って出直していただきたい。
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以上です。
 
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