古代社会
241808 戦争の起源 1 シュメール ウバイド終末期における防御の必要性
 
阿部佳容子 ( 48 大阪 営業 ) 10/12/06 PM01 【印刷用へ
4年前の下記投稿では、メソポタミアの、ウバイド終末期(6200年前〜6000年前頃)、ウルク中期(5700年前〜5300年前頃)における社会構造を墓制から、解き明かしています。

シュメール:ウバイド終末期に身分格差が初現する(138587)
シュメール:ウルク中期には身分の世襲化が始まる(138591)

同じ著者が、この時期の集落における各施設の空間配置を分析し、軍事施設の変遷を推定していましたので、紹介します。

小泉龍人「都市誕生の考古学」より

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・ウバイド終末期の集落北端には、見張り台とされる施設が立地している。この施設は3つの部屋から構成され、西側に大きくカーブする街路が隣接する。集落の西北側の入口から街路を通って侵入する者を、見張り台で監視していたとされる。

・ウルク期になると明らかな軍事施設が登場し、ウルク前期併行の集落北端にはウバイド終末期と同様の施設が建てられた。この施設はいくつかの部屋からなり、とくに東側の外壁は分厚く、隣接する区画にはレンガ敷きの街路が設けられている。そして部屋からは大量の土製投弾が出土していることから、この施設は集落北端の入口を防御するための見張り台とされる。

・同時に集落中央に位置する円形建物は、径約19mもあり、日干しレンガ製の外壁は約1mの厚さを有する。入口は西側の斜路にひとつだけ設けられ、内部は計17の部屋に仕切られている。さらに、部屋内から多くの石斧、棍棒頭や石鎚などが出土していることも考えあわせて、この円形建物は軍事的な性格をもつ内城とされる。

・ウルク中期前半になると、先行期にくらべて集落を防御する施設の痕跡はほとんど見られない。集落の入口に配置される市門などを護る見張り台や、武器庫のような軍事施設は確認されていない。集落南西端にはゲスト・ハウスあるいは首長館が位置しており、総じて平和的な性格が強くなる。この傾向は、ウルク中期後半になっても継続するが、やがて、いくつかのウルク後期の遺跡では軍事的要素がふたたび強くなり、本格的な塁壁や武器がつくられる。

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ウバイド終末期〜ウルク前期には、「見張り台」があったとされますが、武器の少なさや軍人と推定される墓の少なさからみて、軍事力はそれほど強固なものではなかったようです。この時代は、他者を攻撃するような本格的な軍隊の段階にはなく、もっぱら集落を護る自衛的な段階だったようです。

ウルク中期ではさらに緩み、見張り台すら残っていない。その平和時代を経て、ウルク後期、本格的軍備が始まります。
 
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