実現論を塗り重ねてゆく
240909 中国の家族制度の変遷2
 
山澤貴志 ( 45 鹿児島 ITコンサル ) 10/11/17 PM10 【印刷用へ
STEP3:春秋戦国時代に入ると、群雄割拠となり、諸部族は、合従連衡を繰り広げることになり、従来の部族内婚による集団の結束よりも、どの名君につくべきか、という打算が蔓延るようになる。実は、この時代登場した孔子の教えとは、従来の氏族集団に拘ることなく、自らの自由意志で奉公する君主を選ぶという革新思想であった。(孔子の考の単位は家族であって氏族ではないことを見抜く必要がある)とはいえ、このような革新思想を実行に移せたのは一部のインテリ層に止まり、大多数の農民たちは、従前通り、共同体内に止まっていた。ただし、世襲に続いて、この時代、集団単位(経済単位であり婚姻単位)を氏族から家族へと変更するものたちが登場したことは重要である。

STEP4:春秋戦国を経て、秦・漢の時代、つまり帝国の時代になるが、ここでの注意点は、商工業を直轄業務とした上で、その旨みを独占しつつ、農民には農本主義を強要したところにある。そして名籍、徴税、徭役(ようえき)の制度が始まる。しかし、ここでも農業の基盤をなす土着共同体は解体させられた訳ではない。徴税・徭役の窓口は集落(里)の代表者である「典」や「老」に任された。この頃、先端農耕技術として牛を使った農耕(牛耕)と鉄器が登場したものの、まだまだ貴重であり、牛は国家から「里」単位で貸し出された。つまり徴税単位として「家族」がその単位となったものの、生産単位は「里」であり、共同体的諸関係は残存し続けたのだ。

STEP5:後漢時代に入ると、農村共同体に貧富の格差が拡大し、豪族が登場するようになる。つまり牛を個人所有するものは一気に冨を拡大し、従来の共同体的な生産関係に依拠せず家族単位で生産することが可能になったのだ。他方、そうして得られた利益を元手に土地を買い増し、債務奴隷に転落した農民を小作として使うことでの利益も生まれた。

こうして従来の共有地としての農村共同体が次第に豪族の私有地化していく。こうして地縁的結合よりも、豪族の血族的結合を重視する社会関係が登場する。血縁的人間関係を重視する現在の中国の社会関係の特徴は、この後漢時代につくられたものである。

このように中国は古い家族主義の歴史を持つものの、核家族的な関係へと細分化することなく現在、宗族といわれるような大家族的関係を維持し続けることになる。その理由は、日本と違い、中国には本家・分家という別がないことが大きい。父の家産は息子たち全員に均等に分割される。従って、住居単位は小家族ではあるが、そのように細分化された家産ではやっていけないので必然的に、生活用具や農作業を相互援助しあう関係を続けていくことになるのだ。

近代に入ると婚姻が個人の意思に任されたことで中国の社会関係も一気に核家族化に向かうことになったが、現在、改めて宗族的関係が見直されつつある等、未だに、大家族主義的伝統は生き続けているともいえる。しかし、貧しさ故に結合する、という中国の伝統は、他方で大きな貧富の格差を前提条件としている部分もある。豊かさを追い求める現在の中国は、再び貧富の格差によって大家族主義へと回帰していくのかもしれない。(ただし、過去そうであったように、大きな内乱は避けられないのかもしれないが)

参考:「中国史のなかの家族」飯尾秀幸著・山川出版2008年
 
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