日本人と縄文体質
240158 江戸時代の村落共同体のありよう(4)〜村どうしのネットワーク〜
 
佐藤祥司 ( 壮年 設計 ) 10/10/31 PM10 【印刷用へ
■結び合う村と村
江戸時代の村は村落共同体といってよい内実を備えていたが、村を越えた地域的結合も、多様なかたちで生まれた。人々が取り結ぶ社会関係が村の枠を越えて広がり、村の機能を地域的結合が補い、また新しい機能を生み出していった。

○村どうしのつながり――組合村
江戸時代の地域的結合は、村々の連合、すなわち組合村として展開したところに大きな特徴がある。

組合村が生まれたきっかけとして以下の5点が挙げられる。
@自然的諸条件への対応
A領主的・国家的な諸役賦課への対応
B地域外の人々への対応
C地域内の諸階層への対応
D地域秩序の維持

@:用水系をともにする村々が連合して用水組合(水利組合)をつくり、水の引き方や水路の維持・管理方法などを取り決めて、円滑な用水利用を図った。
地水(川除)の場合も同様で、河岸に堤防を築く際など、一方の岸だけ高い堤防を築くと、川の反対側の村々が水害に遭いやすくなるといった問題などを相談のうえ解決し、治水工事を行うために治水組合をつくった。
ほかに、共同利用する山野などの入会地での利害調整のための入会組合や、凶作・飢饉にそなえて、村々で作った組合などもあった。

Aには二つの側面がある。
一つめは、大名など個々の領主(幕府含む)の賦課への対応。これには治水組合や年貢米共同輸送のための組合村など。
二つめは、個別領主の支配領域を超えた公儀(幕府)の役賦課への対応で、国役・鷹狩役・助郷役などを担う組合村があった。

Bには、浪人・乞食・勧化(かんげ:寄進・喜捨を求めて村を廻る宗教者)・盗賊・悪党・無宿・行き倒れ人などへの集団的対応や、都市の特権商人・株仲間・座への対応などで、1村で対処するよりも、村々が共同歩調をとったほうが有利だった。百姓家を戸別訪問しないように代表が交渉を行うことや、暴力に集団で対応すること、また、特産品を安く買い叩かれることに対する防御のために、村々が連合した。

Cでは、職人手間賃・奉公人給与・日雇賃銭の抑制や風俗の統制など、一定水準の単価を維持するためには周辺の村々が共同歩調をとる必要があった。若者組が主導する村の祭礼が華美になりすぎるなど風俗を統制するにも周辺の村々が足並みをそろえなければならなかった。

Dでは、地域秩序や平穏の維持、例えば防犯・火災対策、祭祀をめぐる共同作業、地域内紛争の調停などでの共同体制がとられていた。

江戸時代における地域結合の契機は、これに尽きるものではありません。むしろ、時と所に応じ、様々な契機によって、多様な地域的結合が見られた。1村が一つの組合村だけに属しているのではなく、結合契機を異にする複数の組合村に同時に所属し、重層的な繋がりをもっていた。


■組合村とは異なる地域結合
江戸時代における地域結合は組合村に限定されず、次にあげる諸結合も組合村と重なり合って存在していた。

@地域的市場圏、労働力市場、出入作(村を越えて土地所持関係が展開すること)、地主小作関係、金融関係などによって形成される経済的地域結合

A俳諧・国学サークルなど文化的・学問的地域結合
B通婚・信仰・教育・医療など日常生活の諸側面に関わる地域結合

こうした地域結合は、必ずしも村を単位としておらず、明確な範囲を特定しにくいのが通例。こうした関係は村と村、人と人という、点同士を結んだ関係の連鎖であって、一定の範囲内を隈なく覆いつくすというものではなく、この連鎖をたどれば関係はどこまでも広がっていくというもの。

これらが、組合村と複雑に絡み合いながら、江戸時代の地域社会を構成していた。
 
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