国家の支配構造と私権原理
239606 10/17なんでや劇場(3) 武力時代の東洋の共同体質⇒秩序収束⇒規範収束
 
冨田彰男 ( 47 兵庫 経営管理 ) 10/10/19 PM04 【印刷用へ
しかし、イスラムでは王はいないし、インドでは王がいるが形式上は神官の方が上である。(また、身分序列が確立しているからと言って、必ずしもキリスト教のような一神教になるわけではない。日本然り、インド然り。インドのバラモン教でも、シバ神などの部族連合時代の神々が生き残っている。)

イスラムとインドは何故こうなったのか? その共通項は?

ここで東洋と西洋の違いに触れておく。

6000〜5000年前、イラン高原において乾燥化を契機に、最初の略奪闘争(戦争)が起こり、それが玉突き的に伝播して武力支配国家が出来上がったわけだが、その伝播ルートは二つある。一つはメソポタミア・エジプト・アラブへというルート、もう一つは中央アジア〜モンゴル高原へというルート。イラン高原は急速に乾燥していったことにより、極めて深刻な食糧危機に陥り、そこでの略奪闘争は皆殺しが常態となったが、モンゴル高原はイラン高原ほど乾燥が激しくない。従って、ここでは掠奪闘争というより覇権闘争の色彩が強く、皆殺しも発生したが、それより支配・服属という形が主流になる。従って、勝者はもちろん服属した氏族も、氏族集団としての共同体性を強く残すことになる。

インドを征服したアーリア人も「我々は神である」と言ってインド先住民を支配したわけで、大して殺戮していない。だからインド人にも共同体体質が残っている。

また、イスラムはアラビア砂漠に逃げ込んだ遊牧部族(アラビア人)である。アラビア半島の大部分は砂漠という極限環境であったがために掠奪闘争にさらされず、遊牧部族の共同体集団が残存した。結果、アラビア半島の遊牧集団たちは、武力支配国家という段階を経ずに、いきなり市場の拡大圧力にさらされることになった=市場経済が中心的な食い扶持となった。

市場圧力は共同体を破壊する。つまり市場原理VS共認原理は決定的に対立する。そこで共同体原理に立脚して宗教集団の強力な規範で以って、市場原理の弊害を封鎖したのが、マホメットが創始したイスラム教である。だから、イスラム教では利息の禁止や喜捨が規定されている他、日常の生活規範までがコーランによって細かく定められているのである。

つまり、インドとイスラムの共通項は、共同体性の残存度が高いということ。イスラムは国家全体が宗教集団化し、インドは未だにバラモン教時代のカースト制度が残存している。

これは、観念収束ではなく、共同体に立脚した規範収束の結果である。

共同体性を最も色濃く残しているのは日本。実は日本人にとっては身分序列は居心地が良い。実際、縄文人たちも朝鮮からやってきた支配部族に対して抵抗せずに受け容れている。それは共同体体質故に、秩序収束⇒規範収束(身分序列や生活規範)が強いからである。日本人と同様にインド人もイスラム人も、規範秩序に守られているという感覚であって、だからこそ居心地が良いのである。(西洋人はそのことを批判するが、それは彼らが共同体性を失った自我民族だからに他ならない。)

日本人・中国人・インド人・イスラム人の精神構造は、共同体質故の秩序収束⇒規範収束である。(イスラム教は唯一神を掲げてはいるが、その実態は生活の隅々にまで及ぶ規範体系である。これは儒教もそうであるが、宗教と呼ぶべきなのか、大いに疑問である)

日本人は戦前まで村落共同体が残存しており、そこでの本源共認と規範としての身分序列によって統合されてきた。そこでは観念性はほとんど見られない。先に検討した、現実共認と宗教共認の分裂は実は、西洋固有の特徴なのではないか。実際、日本人・中国人・インド人・イスラム人の精神構造は、共同体基盤に立脚した規範統合と言うべきであって、全く分裂していない。

東洋では、庶民にとって必要なのは現実の秩序共認であって、支配者として王や天皇は存在しているが、それは庶民にとってはどうでもいい存在なのではないか。単に、収束した秩序の上の方に天皇がいる。その方が精神安定的で居心地が良いので奉っているだけなのではないだろうか。イスラムやインドの神官も同様で、庶民が収束した秩序の上の方に神官がいた方が安定的なので共認されているのではないか。

言い換えれば、日本人やインド人が、国家や天皇や官僚に期待しているのは、秩序さえ安定していればそれで良いということなのではないだろうか。社会期待としてとらえ返せば、日本人・東洋人・イスラム人は共同体体質を色濃く残存⇒安定期待⇒秩序収束⇒規範共認に収束して安定を求めるという構造である。

それに対して、救い期待に応えて一神教が登場したのは西洋特有の構造である。また、仏教も救い欠乏を土台にしており、それがインドにおいて仏教が根付かなかった理由であろう。
 
  List
  この記事は 239604 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_239606
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
脱グローバリズムの可能性をインドに探る〜カーストが近代思想や民主主義、市場原理に対する防波堤となっているのでは? 「日本を守るのに右も左もない」 14/08/10 AM02
253875 戦国時代の日本からも共同体性がうかがえる。 福島寛樹 11/07/02 PM10
253540 共同体意識は高いが社会意識は低い momokun 11/06/26 PM01
253504 共同体性を残す日本 冨田遼 11/06/25 PM09
253218 ドラえもんも究極状況に現れれば神様になれるのかも。。。 西谷明日希 11/06/18 PM10
253217 武力支配の時代の収束と統合 冨田遼 11/06/18 PM10
社会期待の歴史(3)〜武力時代の東洋の共同体体質⇒秩序収束⇒規範収束〜 「地球と気象・地震を考える」 11/01/02 AM01
241268 みんながつながれる課題を探しているのだと感じた。 匿名希望 10/11/26 PM09
241042 現代日本人にも通じる「現状の居心地がよい」という感覚 匿名希望 10/11/21 AM02
240670 けっこう根強い民族性 わっと 10/11/12 PM06
『ここがスゴイよ日本人!』二日目 〜ひもとけばすごいよ昔の日本人(後半)〜 「路上で世直し なんで屋【関西】」 10/10/31 AM00
シリーズ「日本人の“考える力”を考える」第9回〜中間整理〜同化能力こそ日本人の考える力 「縄文と古代文明を探求しよう!」 10/10/30 PM05
239973 中国は秩序収束も観念統合も出来ていないのではないか? 狒狒 10/10/27 PM11
239936 中国の奴隷制度の歴史1 土竜 10/10/27 AM02
239928 中国人の二重規範 大西敏博 10/10/26 PM11
239871 日本人は仏教に救いを求めたのか?? パンちゃん 10/10/25 PM01
239816 世界は勿論、日本人の心象をも抉る構造化に出会った 匿名希望 10/10/24 AM10
239795 日本人の大切にするものとは zakimatsu 10/10/23 PM10
239687 日本人の身分意識とは職能意識であり、社会から与えられた役割意識 田野健 10/10/21 AM08
239666 イスラムと神官 北村浩司 10/10/20 PM10
239657 日本で仏教が受け入れられたのは? 匿名希望 10/10/20 PM07
239656 インドのカーストは職能制度でもあった。 田野健 10/10/20 PM04
239638 東南アジア仏教国に救いは必要だったのか? 狒狒 10/10/20 AM07
10/17なんでや劇場(3) 武力時代の東洋の共同体質⇒秩序収束⇒規範収束 「日本を守るのに右も左もない」 10/10/20 AM00
239607 10/17なんでや劇場(4) 西洋の自我収束⇒観念収束⇒唯一絶対神信仰 冨田彰男 10/10/19 PM04

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
人類の進化
ヒトは何種類いたのか? 「異種同時共存説」による人類進化
「アフリカ起源説を補強する新証拠で、窮地に陥った多地域進化説」 @
「アフリカ起源説を補強する新証拠で、窮地に陥った多地域進化説」 A
単一起源か?多地域起源か?(その2)
アニミズム(精霊信仰)について
シャーマニズムと幻覚回路
原始人類集団のリーダーは、精霊信仰⇒祭祀を司る女であった
共時一体感覚にささえられる文字による共認 2
不安発の古代宗教と感謝・同化の精霊信仰
ネアンデルタール人は「野蛮」だったか?   人類の生活をどう復元するか
スンダランド海洋航海民の誕生
黒曜石、翡翠の広域に渡る存在は、交易ではなく贈与の結果ではないか@
黒曜石、翡翠の広域に渡る存在は、交易ではなく贈与の結果ではないかA
ポトラッチの実態
捧げものが同類闘争圧力により変質したものがポトラッチ
贈与の意義
採取時代の適応原理
「祭り」の多面性と核心
祭りは共生適応ではなく集団統合(解脱+闘争)共認の場
人類の本性は共同性にある@
人類の本性は共同性にあるA
人類はなぜ大地を耕しはじめたか? 寒冷期と農業の起源
4大文明の多元的・同時発生説
戦争がなくならないのはなんで?:ノート2
原始時代〜部族連合時代〜武力支配時代
武力時代の東洋の共同体質⇒秩序収束⇒規範収束
西洋の自我収束⇒観念収束⇒唯一絶対神信仰
白人の部族移動の歴史
山賊・海賊によってつくられたギリシア・ローマ
戦争の起源
西欧だけが性を罪悪ととらえる文化であるのはなぜかA〜古代ギリシア・ローマに快楽敵視が存在した証拠はない
西欧だけが性を罪悪ととらえる文化であるのはなぜかB〜隠蔽したいローマ帝国崩壊後の空白の200年間

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp