今後の企業の可能性を探っていく上で、現在の企業の置かれている状況をおさえていきたいと思います。『社労士は見た!中小企業を伸ばす社員育成の極意(著:伏屋喜雄)』より引用します。
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従業員120人の建設会社のことである。役員8名、月1回の役員会に参加させてもらった。経営が厳しく人員合理化をするための参加である。役員をみて社長の求心力のなさに驚いた。2〜3人の役員を除いてほとんどの役員は自分勝手な発言が目立ち、社長の発言を聞こうとしない。まるで経営方針を共有しない役員の集まりでるのだが・・・。
折からの建設不況で業績が極めて悪化し、ついに赤字を出す状況に陥った。このため社長は会社立て直し策の一つに業績3割ダウンに基づく3割人員の削減に着手することにした。健全経営を遂行する上で当然の処方箋ではあるが、従業員を辞めさせるとなれば企業はおろか従業員とその家族に至るまで痛手の大きさは計り知れない。
人員削減には一定の法的手順を踏まねばならない。コンプラインアンスの見地からもその詳細を説明する機会を持つことになった。だが、私はあまりの役員の身勝手さに愕然とした。役員としてあるべき姿なのだろうかと。どうしてこんな状況になってしまったのか、疑問であったが、話を聞いていくうちにいくつかのことがわかった。
社長への信頼が多くの役員から得られていないこと、事業部制がとられているため他の事業部に関しては無関心であること、利益が上がっているうちはよかったものの急激な落ち込みで社長に矛先が向けられ責任転嫁するような甘えた役員意識が強いこと等であった。そうした中で、社長が今年度の経営方針や具体的な経営計画を発表してもそれを共有しようとする役員が少ないのは当然である。これでは会社が一つになってこの危機的状態を建て直すことは到底できない。
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