故人ですが、著名な理論物理学者である宮島龍興氏の提言エッセイ 「官僚制度はあべこべ」の内容が、るいネットで議論されている内容と共通するところが多いので、紹介します。
政治家は民意で選ばれているのに、官僚を民意で選べないのでは民主化とは言えない、真の民主化のために官民をつなぐ電子会議室が発明されることを願う、さらには官だけではなく企業も民主化していくべきだという内容です。
■宮島名誉会長 第79回提言エッセイ 「官僚制度はあべこべ」(平成17年3月28日掲載)リンク
1.公務員は公僕の筈
私は「チョンマゲ頭のお役人」の題でessayを雑誌「官界」にのせた事があります。幕府の役人であった武士階級が家を守ったのと同じように、官僚も実質的に自分の家に当たる官僚組織を断固として守るう上に、Perkinsonの法則にしたがって組織の増大を図る性質がある事を強調したものです。残念ながらこのessayは黙殺されました。
今の官僚制度は、自分達にとって極めてお気に召している意味で組織内では民主的ですが、国民から見ると官僚は名前だけは公僕で実質は国民の支配者です。官僚制度はあべこべの官僚独裁ではないでしょうか。税金以上に国費を支出し組織を増殖したがるのは当然です。
役所内部は国民から見ると密室です。用事で会う場合のほか、役人が何をしているか外部から見る機会は全くありません。国民が役人の業績がわからない、評価のしようがないと訴えて見ても、役所の仕事は組織の仕事だから個人評価はできないと逃げられてしまいます。それなのに昇進や新しい部局長の任命の際などに、候補者が内外から公募された話は聞かず、選考がどう行われたか誰にも見えません。人事院には履歴だけでなく個人の業績のarchivesがきちんとあるでしょうか、国民は見れるでしょうか。
公務員の採用は厳重な資格や試験に依っていると言っても、それは家の跡継ぎをドラ息子の代わりに養子にする程度で、実質的には何の変化もありません。
2.公務員制度の民主化
行政は公務員が行います。従って公務員制度の民主化は極めて重要です。また様々な場でどういう役の人達によって行政がどうおこなわれているか、これは学問としても大変重要な資料とおもいます。これがあって始めて行政や公務員の実質的な評価ができる筈です。accountability は数字合わせだけの審査ですむものではありません。
このような基礎的な記録など、住んでいる町でも聞いたことはありません。ひそかにどこかにあるのでしょうか。あっても透明でなくては無意味です。
このような基礎があれば、行政の改善や公務員の配置転換のほか、民間人からの課長局長の公募などもずっと自由に合理的に可能になるでしょう。そうすれば公務員の自己増殖も防止されるでしょう。
3.行政・政治・国民間の民主化
政治家の公選は民主化の象徴です。世界ではかなりの歴史があり、公選がなければ非民主的と言われます。我が国のように、一世紀以上の実績があっても、公選だけで民主化が達成されたとはとても言えない現状はご覧の通りです。
公務員は政治家である大臣が監督するから、間接的だが民主的であるとは、屁理屈にもなりません。憲法の言う通り公務員を国民がえらぶ、行政に国民の意見が反映するなどが行政の民主化の第一歩でしょう。
各省にある審議会は多く公募ではないし、役所が都合のよい人選をするから、とても公平とはいわれません。
自治体で電子会議室などを駆使して行政と住民間の民主化を試みているのは結構です。然し誹謗や我儘で揉めているのが大部分で、成功例は藤沢市くらいであるのは残念である。しかし成功例があれば、成功の要点を明らかにして、他の自治体も実行できるようにする必要があるでしょう。
政治に国民の間の民主化にも同じ考えが成功するかもしれません。つまり国会と国民、議員と国民の間に電子会議室的なものを設置して、意見の成熟を図る上手な手法がああ発明されたらと願っています。
さらに民間の諸組織も民主化される必要があるのは言うまでもありません。
こうして行政・政治・国民の間に民主的な輪ができてうまく廻って、社会の民主化は第一歩を踏み出す事になるでしょう。なお道遠しである。
宮島龍興氏経歴:(社)日本教育工学振興会名誉会長、(財)コンピュータ教育開発センター理事長。1916年7月27日生れ(91歳)。理論物理学者。76年筑波大学長、80年理化学研究所理事長、89年勲一等瑞宝章受章 |
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