素人による創造
2278 専門家集団と事実
 
吉国幹雄 ( 48 鹿児島 講師 ) 01/03/28 AM01 【印刷用へ
科学に関しての、あるいは事実に関しての議論は重要であり、遠回りのようでも避けて通るべきではないというのが私の考えです。事実を重視するということに関しての姿勢は、絶対にはずしてはいけないと考えています。

まず、誰もが認める現象や実験観察の結果を基礎事実として取り上げます。現象論の世界で事実を明らかにするという立場を第一に貫く必要があります。これは複雑系研究の場合のアプローチも同じでしょう。しかし、こここで確かに基礎事実といったとたんに既に二つの危険性を帯びてしまいます。

まず、その事実ですら、観察者の認識や考え方、さらにはそれに影響を与える背景としての社会的な思想によって左右される危険性があります。だから、徹底的に固定観念やイデオロギーを排除する必要があるのは言うまでもありません。

次に、逆の問題があります。それを事実と認めるその主体の問題があります。誰が認めるのかという認識されるカテゴリー(共同体社会)の問題があります。例えば専門家集団(専門家共同体)において認められた事実でも、つまり専門家が事実といっても実は一般人にとってはよく分からない場合があります。(例えば、素人がレントゲン写真で見せられて説明されてもそうですかとしかいえない)。つまり専門家の事実といっても、外界と専門家の眼とそして専門家の前提的知識との相互作用によって初めて「作り出されたもの」が多くあるでしょう。事実は専門家固有の理論(定説)によって作られる危険性すらあります。

つまり、専門家集団の認識と一般人社会の認識とがずれる危険性(複式構造)があるということ。とりわけ科学が「自然や社会など世界のある特定領域に限った法則的認識を目指す合理的知識の体系または探究の営み」であるならば、それは普遍性のある事実とは言えないでしょう。万人が知っている限りの知識に照らし合わせて整合しているという総合的な論理整合性こそが、専門分化された科学の独り善がりの独走を制御するものであると考えられます。

現在、私達はみんなが認める事実の体系を作ろうとしています。そのためには基礎事実が必要です。しかし、この事実そのものが極めて怪しいものが多いというのが、実感です。それゆえに、「基礎事実」(とりわけ実験や定説)の前提条件・前提認識を今まで以上に明らかにする必要があると考えます。前提条件が明らかにされ一般人が納得できるものは事実として進めていけばよいのではないでしょうか。

例えば、生物学においては、はっきりとこうだと言えるような基礎事実があまりに少ないようです。だから、少ない事実の中から整合する仮説を打ち出し、それを否定する基礎事実やより整合性の高い別の反対の仮説が登場しない限り、その仮説を正しいとして議論を進めていけばよいのではないでしょうか。
 
  List
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_2278
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
明るい未来のために(11)‥‥人類の脳のOSのバージョンアップとは!? 「明るい未来のためにやらなければいけない、たった一つのこと」 11/12/14 PM00
198793 環境問題を考える視点 大嶋洋一 09/02/01 PM06
163742 素人でも良く分かるから“必要だ!”って判断できる 鹿村幸代 07/10/19 AM08
阪大、論文捏造の処分に感じる問題 「Biological Journal」 06/02/22 PM07

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

「合同板」必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、48年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp