法曹・官憲・役人こそ、社会閉塞の黒幕
224280 過剰な法令遵守が生む思考停止社会
 
田中素 HP ( 44 長崎 企画 ) 10/01/15 AM03 【印刷用へ
サンデープロジェクトで、小沢一郎が追及を受けている4億円の借り入れが2004年の官報に「記載されている」ことを明らかにし、検察の暴走を牽制した郷原信郎元地検特捜検事は、その著書で、過剰な法令遵守(コンプライアンス)の強制が生む社会的な弊害に警鐘を鳴らしている。以下、『思考停止社会』(2009年2月講談社現代新書)まえがきより抜粋引用。
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 刑事司法の機能は、普通の人はやらないような特別に悪いことをする異端者、逸脱者を社会から排除することであり、民事司法の機能というのは、この社会の中の普通の人が普通に起こすトラブルではなくて、感情的ないがみ合いとか近親憎悪的なトラブルというような、普通の手段ではなかなか解決できないような特別な争い事を解決することでした。

(中略)

 ところが、二〇〇〇年前後から経済構造改革が進められ、経済活動の自由化の一方で、ルールの徹底が強調されるようになって、状況が大きく変わってきました。「法化社会」という言葉に象徴されるように、従来は、社会の周辺部でしか機能していなかった法令が、社会の中心部に向かってどんどん攻め込んできました。市民生活も経済活動も、否が応でも、法令との関わりを持たざるを得なくなってきました。法令との関わりが日常の世界になりつつあるのです。

 そうなると、法令に対する姿勢も、単なる「法令遵守」から変えなければならないはずです。法令の内容やその運用が市民生活や経済活動の実態に適合しているかどうかに市民が関心を持って、より適合するように法令を使いこなしていく、という市民参加型の司法や法令の運用に変えていく必要があります。ところが、法令に対する日本人の姿勢はなかなか変わりません。法令が出てくると、水戸黄門の印籠に対するのと同様に、その場にひれ伏し、何も考えないで「遵守」するという姿勢を続けているのです。

 法令が印籠だとすると、本来、印籠を出す立場にあるのは、司法判断を下す裁判所のはずなのですが、法令によって権限を与えられた行政庁が命令という「印籠」を出すことや、法令上は何の権限もないマスコミが、「違法」のみならず、「偽装」「隠蔽」「改ざん」「捏造」などのレッテル付けをして「印籠」を出すということも多くなっています。このようなにわか「助さん」「角さん」が出す印籠に対しても、人々は何も考えないで、ただひれ伏して従うという態度をとり続けています。

(中略)

 こうして日本人全体が陥っている思考停止が、今、日本の社会を大きく蝕んでいます。物事が単純化され、本質が見失われ、一面的な評価が行われることで、日本の社会に生じる矛盾、弊害はどんどん大きくなり、国の、そして、社会全体のパワーが確実に低下しています。
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(引用以上)

従来、身の回りに起こったトラブルは当事者間の話し合いを持って解決してきた日本人にとって、法令は滅多なことでは関係することのない「伝家の宝刀」であり、その伝家の宝刀が日常生活に次々と振り下ろされるようになってしまったことが思考停止の背景にある、と郷原氏はいう。

試験制度の弊害が生み出した現代の官僚が法令遵守を盾に暴走を続け、マスコミが正義の味方の顔をしてこれを煽る。国民の多くは違和感を感じながらも、法令という「印籠」を前に思考停止に陥っている。これは、「コンプライアンス・ファシズム」とでも言う状況ではないだろうか。
 
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