新資源・新エネルギーの開発は?
221939 微生物が田んぼを電池に変える!
 
BAIO 09/12/14 PM08 【印刷用へ
微生物は酸素呼吸をしている時、外部から取り入れたエネルギーの1/3だけを使い、残りは外に捨てているといいます。この微生物が使ったエネルギーの残りを人間が使わせてもらおうという発想から、微生物燃料電池、微生物太陽電池という、大変興味深い研究が進められています。

山路達也氏の『エコ技術研究者に訊く』より抜粋リンク
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自然との共生は、さまざまな科学分野での大きなテーマになりつつある。東京大学 先端科学技術研究センター、橋本和仁教授のチームが研究を進めているのは、田んぼなどに棲む微生物から直接電気を取り出せる燃料電池と太陽電池だ。将来は、田んぼで発電が行えるようになるのだろうか?
プロジェクトリーダーの橋本教授、および渡邊一哉特任准教授、中村龍平助教に詳細をお聞きした。

●電流発生菌は私たちの身近にいる

普通の燃料電池は、水素を入れてやれば酸素と反応して発電します。メタノールから水素を作り、それを使って発電するタイプもあります。一方、微生物燃料電池は、エサとなる有機物を与えてやれば発電します。

●電流を発生させる菌

電流発生菌自体は100年ほど前に発見され、そこら中の地中や水中、どこにでも見つかります。電流発生菌から電気を取り出す試みも行われましたが、電流密度が低いため実用にはならず、それほど研究は盛んではありません。

電流発生菌に有機物を与えると、流れる電流が急速に増え、あるところまで来ると一定になります。さらに電流発生菌を増やしても、発生する電流は変化しません。電極に電流発生菌が取り付いているのですが、電極の面積は限られているため、離れた場所にいる菌は電極に電子を渡すことができないのです。

●微生物同士の共生関係を活かせば、電流が増える

そこで、電流発生菌の生息環境について考えてみることにしました。例えば、代表的な電流発生菌であるシュワネラ菌は、海底火山の地殻から採取されました。地球科学の研究者に訊くと、深海から微生物を採取すると必ず酸化鉄や硫化鉄がまとわりついてくるのだそうです。

そこで、シュワネラ菌のいる培養液に酸化鉄のナノコロイド(酸化鉄の微少な粒子が液体に溶け込んだもの)を加えたところ、電流の発生量がぐんと増えました。しばらくすると電流は減り始めますが、エサの有機物を追加すれば、また電流が出るようになります。微生物だけの場合に比べて、50倍以上の電流が発生するようになりました。

酸化鉄ナノコロイドが糊、および電子伝達を仲介する物質として働いているものと考えられます。これによって、電極から離れたところにいる電流発生菌も電子を受け渡すことができる、つまり呼吸して生き延びられるようになったのでしょう。さらに、鉄イオンと硫黄イオンを加えると、微生物が硫化鉄を作り始め、電流の発生量は200倍になりました。

●生ゴミから直接発電する微生物燃料電池

次は田んぼから泥を取ってきて、酸化鉄を入れてみました。エサの有機物を与えてやると、酸化鉄から電子を受け取れるタイプの微生物の割合がどんどん増えていき、それに伴って発生する電流も増えていきました。こういう環境に適応した微生物が助け合いながら、生き延びようとしているのです。今のところ、1立方メートルの実験装置から130Wの電力を取り出せます。

●発電効率の向上がカギ

今は1立方メートルの装置で130Wですが、家庭用として使うなら1000Wは出力できるようにしたいところです。まだ電流発生菌が発電する仕組みにはわかっていない点も多いため、現在この解明を進めており、電極の改良も行っています。数年以内には1000Wを達成したいと考えています。

●微生物太陽電池

光が当たると光合成を行ない、電極に電子を渡せるような微生物がいればよいのですが、残念ながらこういう微生物は知られていません。それではどうするか。こちらも微生物燃料電池の場合と同じように考えました。自然界にはいろんな微生物がいるから、助け合って生きていけるのではないだろうか。

そこで、東大構内にある三四郎池や、温泉から水を採取してきました。これらの培養液には窒素やリンは加えますが、エサの有機物は加えません。培養液に光を当てれば、この条件下で生きていけるエコシステムができるだろうと考えたのです。実際、光を当てると電流が発生しました。

培養液を調べると、少なくとも2種類の微生物が共生していることがわかってきました。1つは光のエネルギーから有機物を作る光合成細菌。もう1つは、有機物を取り入れて電流を発生させる電流発生菌です。光合成細菌の作った有機物を、電流発生菌が取り入れて電流を生み出していたのです。

●田んぼの水に光を当てると電流が発生

水田を電池として使えないか実験してみたところ、やはり電流が発生しました。イネが光合成を行い、根から有機物を出し、それを使って微生物が電流を発生させている、つまり太陽電池として機能していると考えられます。この場合の発電効率は0.01%とまだまだですが、自然の共生関係を利用して発電できた意義は大きいと思います。

●実用化に向けてのロードマップ

微生物燃料電池は十分実現可能ですが、微生物太陽電池についてはまだ実用化云々を考える段階ではありません。今後さらに新しい知見を取り入れ、発電効率が今の100倍、1〜2%になってきたら、初めて応用的なことを考えられるでしょう。
 
 
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