試験・身分制度の根深い害
219875 世襲社会の解体がもたらした戦後の学歴社会
 
田野健 HP ( 49 兵庫 設計業 ) 09/11/17 PM00 【印刷用へ
引き続き、戦後の学歴社会を見ていきたいと思います。

戦前は前稿でも見たように明治から大正期は学歴社会であっても富裕層にのみ開かれた世襲色の強いものだった。さらに昭和期には財閥の力が強くなり、政治も家柄のよいものが就くようになり世襲色を強めていく。帝国大学を出ても財閥系企業では番頭レベルまで、世襲政治家の下の官僚として仕える程度の出世しかできなかった。明治で一旦開かれた学歴社会が再び世襲制へと戻っていく。

しかし、敗戦すると状況が一変する。
世襲社会が解体し、財閥がGHQによって根こそぎ解体されると、庶民に対して門戸が開かれる。誰しもが学歴を得ることで社会の統合階級に駆け上がる事が可能になった。戦後これによって学歴社会の大衆化がなされていく。
財閥解体後の企業トップはそれまでの世襲の跡継ぎに代わって、東京帝国大学、京都帝国大学、東京商大(一橋大)出身者に入れ替わった。さらにさまざまな公職追放や戦犯の追放などによって戦前の名門や軍部のエリートが駆逐されて、政治の世界や戦犯の追放などの影響で、政治の世界や国策企業のトップに、官僚出身者が躍り出たし、官僚の力も飛躍的に増した。

英語が堪能でGHQと交渉できる人材が経済の世界でも政治の世界でも優遇され、帝国大学出身者にはわが世の春が訪れた。
池田隼人や佐藤栄作は当時40代であったが、上司や先輩は一掃されていたので、戦後すぐに事務次官として登用され、国の重要事項を決める力を持っていた。政治家に転身してからも同じ理由で当初から厚遇された。

かくして政財界とも学歴の高い人が牛耳っていった。
これが戦後から1950年代までの日本の実情であった。そして、それは庶民にとっても目に見えるもので、学歴を獲得することによって得られる成果を知る事になる。

実際には東大卒は名門の子弟であったが、庶民からすると手に届く学歴に見えたのだろう。東大はこのように垂涎の的であったが、諸外国のように私立学校ではなく国立であった為、復興以降は授業料を支払う事が庶民から見ても十分に可能になり、これらが受験熱を高め、受験戦争に拍車をかけた。

「戦後のベビーブーム」である団塊の世代は一学年260万人で大学の定員数はその1割しかないという狭き門になっていた。マスコミの学歴社会批判が出始めたのもこの時期からであった。しかしマスコミが取上げれば上げるほど学歴社会の幻想を大衆が抱き、60年代の試験社会への傾斜はさらに進んでいった。

〜参考「新学歴社会と日本」和田英樹
 
  List
  この記事は 219845 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_219875
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
220051 官僚の問題点は情報に疎い(=常識がない=対象化能力がない)ことである 猛獣王S 09/11/19 PM03

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp