国家の支配構造と私権原理
217574 科挙3(明〜清) 科挙の弊害と科挙の廃止
 
小暮 勇午 ( 32 京都 路上人 ) 09/10/19 AM00 【印刷用へ
217572の続き)
この科挙が本当に役に立つ人材を発掘する上では不十分であることは、中国でも古くから指摘されていた。四書五経の丸暗記が、現実の政治にどれほど役に立つのかといった批判である。しかし、それならどうすればいいのかという段になると、他に適当な方法が見つからない。ましてや、そのような改革論議を受け検討すべき立場にいたのは、科挙によって選ばれたエリート官僚である。彼らは既成の枠組みを見直すこともできず、ひたすら現状維持を続けたのである。

科挙の特長は、教育を抜きにした「官吏登用試験」であるという点にある。つまり、民間で自然に育成された有為の人材を、ただ試験を行うだけで政府の役に立てようとする”虫のいい話”であった。明・清時代に入り、西欧列強が力を付け、国家の衰退が決定的になると、国家もようやく国立学校制度設立に動き出す。それでも、その学校とは科挙試験のためのものであり、実質的な教育はなんら行われなかった。

産業革命を経た欧米列強からの圧力がさらに強くなると、さすがに新しい知識・技術の習得が必要となり、新しい教育を行う機関が設立される。しかし、一方で科挙制度は残ったままであったため、ほとんどの人間が科挙による登用を目指す。そのため一向に新教育は発展しなかった。つまり科挙制度が新教育の発展を阻害していたのである。こうして産業革命に対応した新教育制度発展の必要から、1904年を最後にして科挙は廃止されることになる。

<参考・引用>宮崎市定『科挙 中国の試験地獄』
 
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