共認心理学:現代の精神病理
215393 評価を想定して自分の行動をコントロールする子どもたち
 
矢ヶ崎裕 ( 35 長野 経営管理 ) 09/09/19 PM04 【印刷用へ
子どもに絵を描かせることで、子どもの心理状態と家庭環境とのつながりを探り続けてきた心理カウンセラーの森本邦子氏が、早期教育の弊害について指摘しています。

以下、『脱ひきこもり』(森本邦子著)より引用。
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 早期教育は素質的な知能が上位で、文化的な配慮のある環境の家庭の子にとっては大いにプラスになり、その子の特性である良い面がグングン伸ばされる。そして、子ども自身がより自己活性化を計り、意欲的にものごとに取り組む積極性のある子に成長していった例は数多くある。しかし、何度も言うように、それは全体の10〜15%程度であり、多数の子には不要なものである。ただ受け身に教材をやらされ、かつ覚えられない子どもには、自信を低下させたり、劣等感を抱かせたりするだけの結果を招くと私は思うのだ。そして早期教育は、子どもに光と影を与えてしまうことになり、大人の予想をはるかに超えて子どもたちに大きな影響を与えてしまった。

(中略)

 影の領域に入ってしまったのはどんな子どもであろうか。描画テストの普通ではない絵を例にとると、第一にはキャラクターものしか描かない、第二に文字や数字や漢字を書きたがる、第三に線で抽象的なもののみを描くといった子どもがあげられる。さらには空白部分を多く残して小さく描く、神経質な不安感を象徴するのびのびした筆致でない描き方をする、八個のうち五個か六個しか埋めようとはしない。これら問題のある絵を描いたのは、実はほとんどが男の子だったのだ。

 そういった子は、絵が苦手とか、上手に描けないことを劣等感として抱いているのとは少し様子が異なる。担任によれば何でもよくできて、もの覚えも良いという子が結構多くいるようだ。真面目、一生懸命さの点では上位にいる子たちだそうで、「あの子が、あんな絵しか描けないなんて信じられない」という教師の声をたくさん耳にした。

 彼らは「こうしなさい」という指示にはおとなしく従う子どもで、能力的にも特に劣っていない。「そのようにやろう」と真面目に努力し、「ああ、よくできたね」とほめられれば嬉しい。しかし、指導者の期待に沿うように自分の行動をコントロールしていくうちに、常に評価を想定しての行為に重点を置き、「自由に、自分の思うように好きにしなさい」というモデル提示のないことについては、バランスを欠く表現しかできない、やや奇妙な子どもになってしまったのではないだろうか。

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(引用終わり)

幼少期から「与えられた枠組み」(213827)に沿って答えを出す訓練をさせられた、おとなしくて真面目な子ども達は、枠組みのない状況に立たされた途端、行き詰まってしまう。「早期教育」が単なる試験制度の延長上の商品では、子ども達の主体性の芽を摘んでしまう、ということではないだろうか?
 
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