政治
213093 「戦争はなくせるのか?」〜現在のサル学からの見方(2)
 
田中素 HP ( 43 長崎 企画 ) 09/08/18 AM00 【印刷用へ
213092の続き。日経新聞8/13記事「人類の戦争の起源」より引用。
-----------------------------------------------------------------
 同じ祖先を持つ親族の規模は拡大する。

 「親族が膨張した結果できあがる究極の形が民族です。民族には始祖神話があり、語り継がれる。そういったものが核となり、民族の理念が確立され、敵対する民族が出現すれば、多くのメンバーが戦いにかり出されるのです」

 攻撃本能起源説は戦勝国を擁護するもので、誤り

 戦争の起源については、過去にも多くの学者が論じてきた。精神医学者のフロイトは1932年、科学者のアインシュタインとの往復書簡で「人間の心には破壊し殺害しようとする攻撃的本能が潜む」と述べた。動物行動学者のローレンツは63年「攻撃――悪の自然誌」に「人間は武器を発達させたために、攻撃行動の抑止機構を進化させないまま戦いを拡大してしまった」とつづった。

 「フロイトの説も、ローレンツの説も誤りです。ある意味で、戦勝国を擁護する学説です。戦争の原因は、人間の攻撃本能にあるのではなく、先に述べたように共同体の中で作り上げてきた人間固有の社会性に潜んでいるのです」

 戦争を防ぐにはどうすればいいのだろうか。

 「国と国、民族と民族、集団と集団の利害対立が生まれたとき、国や民族、集団への帰属意識や奉仕、共感といったものが戦争を引き起こす。そのことを、多くの人が冷静に自覚することが大切だと思います。だから紛争が生まれたら、双方の面目を保つ道を根気よく探り出すことも欠かせません」

 集団間の境界を超えた帰属意識を、多くの人が持つことも重要になる。

 「例えば、89年に起きたベルリンの壁の崩壊は、境界を超えた市民意識がもたらしたもので、東西の冷戦を終結させた。スポーツの世界や非政府組織(NGO)活動の現場レベルでも国境を超えた人と人との交流として活発に展開しています。人間が日常的に、国や民族のボーダーを超えて出入りしていれば、外国や他民族の他者への許容性は自然に高められるはずです」

 太平洋戦争のときのように、気がついたら国全体が戦争への坂道を転がり落ちていたというような事態は避けたい。山極さんの話から、われわれ市民が学ぶべきは、まず愛国心や民族愛を巧みに操って戦争へと導こうとする為政者に目を光らせ、選挙などで早めに彼らの芽を摘むことであろうか。
-----------------------------------------------------------------
(引用以上)

人類の戦争の原因が、従来から語られてきた単純な動物の攻撃本能説ではなく、「言葉」(=観念)、「土地の所有」(=私権意識)が発現したことの影響が大きいとしている点は首肯できる。また、人類固有の民族意識(観念)を利用して、支配者や為政者が戦争へ導くという部分は、現在の金貸し支配による戦争の発生構造にも通じる見方であろう。

しかし、なぜ私権意識が発生したのか?また、人類の命綱でもあった筈の共同体性がなぜ、山極氏の言う「死者の利用」という戦争の原因と化してしまったのかまでは迫れていない(これは、なんでや劇場で分析された“自集団の正当化観念→守護神信仰の成立”そのものであろう)。そのため、戦争回避の方策が、「集団間の境界を超えた帰属意識が重要」という風に、単に集団・共同体否定の論調になってしまっている。これでは、やはり金貸し等、支配勢力の推進する国際主義や個人主義等の騙し観念に絡め取られ、結果として戦争の根絶からは逆行してしまいかねない。

サル・人類学におけるさらなる追究が待たれる。
 
  List
  この記事は 213092 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_213093
  ※トラックバックは承認制となっています。

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、48年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp