古代市場と近代市場
211325 江戸時代 市場経済が発達したのは、なぜか? 需要が需要を生むシステム
 
小暮 勇午 ( 31 京都 路上人 ) 09/07/23 AM01 【印刷用へ
■天下普請=公共事業
大規模な公共事業→集積した財を「公共事業」へ⇒需要が需要を生む(=ケインズ政策)

関ヶ原の戦いで天下を取った家康は、全国の大名に命じて、江戸城の城郭築造工事、江戸市街地や水路網建設に当たらせた。このように天下人が諸大名に命じて土木・建設工事をさせるのを「天下普請」と言う。これは戦時の軍役と同じ扱いで、必要な資金・人員のいっさいを大名の石高に応じて供出させ、工事・役務を行わせるものだった。
  
数年に一度命ぜられる天下普請は、大名達に巨額の財政支出を強いた。それは幕府から見れば、敵対する可能性のある諸大名の経済力を削いでおくという防衛的な目的があったが、同時に、蓄積された経済力を、平和な「公共工事」に向けるという意味もあった。
  
また天下普請の間は大名は多くの家臣ととも江戸に滞在した。そのための大名屋敷、武家屋敷群が建設されていった。これらの建設工事が資材や労働力への巨大な需要を生みだし、さらに膨大な工事関係者の生活を支えるための食品、日用品、娯楽などの消費需要が生まれる。江戸時代初期の70年間、このような公共工事が集中的に江戸で行われた結果、需要が需要を生み出す形で、江戸は高度成長を続けた。

■参勤交代
地方で蓄積された富を分配する機能→需要が需要を生む⇒全国統一の貨幣経済の形成

1635年からの始まった参勤交代制によって、大名達は一年を江戸、一年を国もとで過ごすことになった。これも軍役と同様に、禄高と格式に応じた供揃いを義務づけられた。供揃いとは、そのまま戦闘に移れる武装した行軍行列のことで、飲料水と薪以外は、武器・弾薬・食糧をすべて持ち歩かねばならなかった。
  
参勤交代を含めた江戸在府に必要な経費は、大名の実収入の5,6割を占め、大きな負担となった。大名達は国もとの米を売り払って、貨幣を得て、それで江戸屋敷の生活費や諸経費を支払った。殿様に随行して地方からやってくる大勢の家臣団も、江戸での消費需要を盛り上げ、町人層を潤わせ、市場経済が発達して行った。
 
■商業航路の発達
江戸での公共事業のための物資運搬/江戸での消費に合わせた商品の運搬

天下普請のための石材など資材の運搬、さらに動員した家来や土木作業員の食糧供給のために水運が発達した。江戸城の石垣築造では、西国大名31家が3千艘の運搬船建造と、それによる伊豆半島からの石材輸送を命ぜられた。
  
また東北の大名は、太平洋岸を南下する東回り廻船航路で、江戸まで米や資材を持船で運んだ。家康は東北大名達に命じて、慶長14(1609)年、その中継地点である銚子に港を築かせた。このルートによる流通が盛んになるにつれ、民間による海上輸送の方が有利となり、東回り廻船航路での定期便が確立していった。
  
 また江戸の消費需要が盛り上がるにつれ、日本全国から多種多様な物産が水運で運び込まれるようになった。清酒は摂津国鴻ノ池(現在の兵庫県伊丹市あたり)の酒屋が慶長十五(1610)年に、最初に江戸に持ち込んだ。当時、江戸では濁酒しかなかったため、清酒は飛ぶように売れ、はじめは人が背負って運んでいたのが、駄馬による輸送となり、寛永(1624〜43)になると、船で運ばれるようになった。醤油も正徳年間(1711〜15)に、大阪から持ち込まれて、高級調味料としてもてはやされた。
  
上方の物産を江戸に運ぶために、大阪と江戸の間の民営の定期航路が発達した。二つの組織がそれぞれの定期便を運航して、明治に入るまで、競争を続けた。また江戸時代以前に確立していた北前船(大阪と日本海経由で北海道を結ぶ)、西廻り廻船(大阪と瀬戸内、九州を結ぶ)と合わせて、日本列島全体を結ぶ民間による定期商業航路が完成した。
 
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