市場の支配構造
211164 秘密結社が成長した時代〜十字軍遠征(2)
 
田野健 HP ( 48 兵庫 設計業 ) 09/07/20 PM03 【印刷用へ
(1)の続き

十字軍はこのような様々な要因・人々の利害が複雑に絡み合っており、経過とともに宗教的な要因が薄れ、経済的な要因によって動かされるようになった。

第1回十字軍(1096〜99)は、フランスの諸侯・騎士を主力として、4軍団に分かれて出発し、騎兵5千・歩兵1万5千の大軍は、緒戦で勝利をおさめ、トルコ軍と小競り合いを繰り返し半年に及ぶ攻城戦の末にエルサレムを陥れた。

イェルサレム回復後、多数の十字軍兵士達は目的を達成したとして帰国し、また西ヨーロッパから来る増援隊は少数だったので、現地軍は絶えず兵員不足に悩まされた。このために設立されたのが宗教騎士団である。宗教騎士団は十字軍時代に聖地エルサレム付近で次々と創設された組織で普通の修道会の「清貧・貞潔・従順」のほかに「武器による聖地の守護・巡礼の保護」を誓っていた。

聖地の守護を目的として設立された(1119)テンプル騎士団の団員は騎士と修道士の役割を兼ね、武器を持ってキリストに奉仕する誓いを立てていた。

第1回十字軍時代に成立し、ロードス島を本拠地に活躍したヨハネ騎士団、そして第3回十字軍の際に組織され活躍したドイツ騎士団は合わせて三大騎士団と呼ばれている。
宗教騎士団は、帰国後は護教活動や辺境の開拓に活躍した。特にドイツ騎士団は、ドイツの東方植民の先頭に立ち、後のプロイセンの基礎となった。
十字軍遠征によって国家以上の力を有するようになった騎士団も十字軍の終結と共に14世紀までに解散させられていった。
 
約200年の間に前後7回の十字軍が派遣されたことは、当然のことながらヨーロッパ世界に大きな影響を及ぼし、中世ヨーロッパ世界を大きく変化させることとなった。
宗教面では、十字軍が教皇の提唱で起こされ、一時的にせよ聖地を回復したことから、教皇の権威は一時的に高まったが、結局聖地を回復できなかったことで教皇に対する信頼を失わせることとなり、宗教熱は冷却し、さらには教皇権の衰退を招くことになった。

政治面では、諸侯・騎士が没落する原因となった。長期間の遠征によって多くの諸侯・騎士が命を落とし、家系の断絶が起こった。また莫大な遠征費の負担は彼らの経済的な没落の原因となった。その一方で国王による中央集権化が進展した。国王は十字軍の指揮者として活躍し、諸侯・騎士の没落によってその地位は相対的に強化された。また諸侯・騎士が戦死し、家系が断絶した場合はその遺領を王領に編入し財政面での強化をはかった。こうして各国では国王による中央集権化が進展した。  
 
経済面では、十字軍によって最大の利益を得たヴェネツィア・ジェノヴァなどの北イタリア海港都市がイスラム世界との遠隔地貿易(東方貿易)によって大きな利益を得て発展した。またヨーロッパ内部でも遠隔地商業や貨幣経済が発展し、都市が発達した。

文化面では、十字軍によって多くの人々が東方との間を往来したためビザンツ文化やイスラム文化がヨーロッパに流入し、特にイスラムから未知の学問や技術がもたらされ、近代以後のヨーロッパ文化発展の基礎がつくられた。

十字軍を経て発展したとはいってもヨーロッパ中世都市は私たちが想像しているよりはるかに小さく、人口は1000〜5000人位であった。1500年頃に人口が5万人を越えていたのはロンドン・パリ・ヴェネツィア・パレルモ・ミラノ・フィレンツェ・ブリュージュ・ガンの8つだけであった。ヨーロッパの本格的な市場化と発展はその後のルネサンスを待つ事になる。
 
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