市場の支配構造
211097 タクシスの郵便事業はハプスブルク帝国の諜報手段だった。
 
田中素 HP ( 43 長崎 企画 ) 09/07/19 PM03 【印刷用へ
> タクシス一族が富を形成し始めたのは1489年からで、そのきっかけは郵便でした。初めはハプスブルク家のマクシミリアン一世の郵便物を無料で届けることで、その名誉が報酬のようなものでした。210965

タクシス家が郵便事業を請け負った理由は、単なる名誉や金儲けのためだけではなかった。以下、「ハプスブルク帝国の情報メディア革命―近代郵便制度の誕生」(菊池良生著)の書評リンクより抜粋引用。
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 郵便制度とはなんのために作られたのか。
 まず、これは公営のものであり、統治の手段として情報収集のためのものであり、軍事的な意図があったということを認識しないといけません。これが、すべての庶民とはいわないけれど、誰もがそれなりに利用できるようになるまでには何があったのか、何が必要だったのか。

 序章で書かれた一つのエピソードは、三つのことを伝えます。
 一つは、スペイン王フェリペ二世、「偉大なる」と形容しても良い存在だったカール五世の後継者であるフェリペ二世とは、カトリックによる世界統一の野望に取り憑かれ、国家の財政をとことん破壊し、スペインを生産国家から破産国家へと導いた国王であったこと。
 二つ目は、フェリペ二世は、息子ドン・カルロスの動向を探るために平然と彼の私信を開封するように命じ、しかもそれは当時ごく当たり前のことであったこと。信書の秘密などという道徳観念がない時代だったのです。
 三つ目は、タクシスという人物がハプスブルク家の郵便を、国家の承認の元に支配していたこと。ドン・カルロスの私信を開封した駅逓長タクシスとは、単なる郵便局長ではない。ライモンド・デ・タクシス(1515-1579)は、父の代よりスペイン王国の貴族として書信、小荷物、旅行者の輸送のすべてを支配下においた人物です。そしてタクシス家は、1867年にこの権限をプロイセン帝国に譲渡するまで、中央ヨーロッパの通信ネットワークを掌握し続けた家系だったのでした。
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(引用以上)

本書によれば、マクシミリアン一世によって整備されたヨーロッパ郵便網は、ハプスブルク家の「世界帝国志向」がもたらした情報通信メディアだという。インターネットはもちろん電話も無かった当時、郵便はほとんど唯一の遠隔情報ルートであり、帝国の統合に極めて重要な諜報対象だったからだ。私信の開封・検閲を時の権力からの重大な特務として請け負い、全ての情報を握れる位置にいたのが郵便駅長=タクシス家だった。
 
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