市場の支配構造
210965 トゥルン・ウント・タクシス一族とは
 
小西良明 ( 26 愛媛 会社員 ) 09/07/17 PM06 【印刷用へ
16世紀頃からヨーロッパ全土にスパイ組織を形成し、情報を支配していたと言われるトゥルン・ウント・タクシス一族(通称タクシス一族)について、リンクリンクに詳細な記述がありました。これらを整理してご紹介します。


16世紀初めにヨーロッパ各地の飛脚や色々な郵便を統合し、一般に利用される郵便事業を起こしたのはタクシス一族で、神聖ローマ皇帝から、郵便事業の独占と、これを世襲する権利を与えられ、ベルギー・フランス・ドイツ全域からイタリアの南端までヨーロッパの各地を結んで、郵便事業を発達させていました。

この一族の起源はイタリアのベルガモ出身のド・ラ・トッレ家です(今から900年前)。その後ドイツ風にトゥルン・ウント・タクシスと名乗り、今の本家の人々は独レーゲンスブルクのエムメラム城に住んでいます。苗字のトゥルンは元のイタリア名のトッレ(塔の意味)がドイツ語のトゥルムになりこれがさらに訛ったもので、タクシスのほうは同家が税金(Tax)の徴収を請け負っていたことの名残りです。

タクシス一族が富を形成し始めたのは1489年からで、そのきっかけは郵便でした。初めはハプスブルク家のマクシミリアン一世の郵便物を無料で届けることで、その名誉が報酬のようなものでした。しかし、郵便事業の創始者であるフランツ・フォン・タクシスは名誉よりも儲けを優先し、一計を案じます。それは、皇帝から預って馬車に乗せた急使と金品を人質にとって、「有料の郵便事業を許可しなければ返さないぞ!」と迫るかなり強引なものでした。この企ては見事に成功し、タクシス一族はそこから高料金の郵便事業を展開し、儲け続けました。ハプスブルク家の下で貴族や聖職諸侯、外交官、商人の通信も扱う特権を得、郵便の隆盛と共に、タクシス一族はますます財を成していき、貴族の位まで手に入れたのです。

しかし、1800年頃から、通信を特定の一族に委ねる事業ではないと郵便事業を国営化する動きが出てきました。ナポレオン、バイエルン政府、メッテルニヒそしてビスマルクも国営化していきました。タクシス一族は郵便事業を次々と売却し、1867年には350年の間順調に活動し大いなる利益を生んだこのビジネスから手を引くこととなりました。

郵便公爵トゥルン・ウント・タクシス家はオーストリアにて名門一族として語られています。一族は昔も今もヨーロッパの王家に結びついていますが、1854年オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフとエリーザベト(愛称シシ)の結婚によって、この一族はハプスブルク家とも縁続きとなります。トゥルン・ウント・タクシスの跡取の公子がシシの姉ヘレーネと結婚し、皇帝と義兄弟となったのです。

また、郵便事業を手放したタクシス一族は、そのまま手をこまねいてはいませんでした。事業売却で得た資金を別の分野に投資して更なる成功を収めました。1984年には当主のヨハネスが、元ウェートレスでファッションはパンクとされるグロリアという女性と結婚して大ヒンシュクを受けていましたが、1990年にそのヨハネスが亡くなると、グロリアは14億ドルの資産の運用に見事な采配を発揮しました。

このような経緯を経て、タクシス一族は世界有数の大富豪として存続しているようです。しかも、別投稿(210932)によると、

>ヨハネスの遺言は、郵政民営化により、ヨーロッパ各地の郵便事業が売り出された場合には、それを「片っ端から乗っ取れ」と言う内容であった。そして、郵便事業が民営化されるよう政治家を「誘導」し、郵政民営化を主張する政治家を一族が「支援」するように、という内容であった。

とあります。一度は国からの圧力で手放した郵便事業ですが、更なる資産を蓄えた今、再び手元に引き戻そうとしている様子が伺えます。
 
  List
  この記事は 210932 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_210965
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
212138 トゥルン・ウント・タクシスに関する追加資料、および現在 深紫 09/08/03 PM10
211261 裏の歴史を知るために表の歴史を学ぶ(るいネット参考投稿) 田野健 09/07/22 AM00
211164 秘密結社が成長した時代〜十字軍遠征(2) 田野健 09/07/20 PM03
211163 秘密結社が成長した時代〜十字軍遠征(1) 田野健 09/07/20 PM03
211097 タクシスの郵便事業はハプスブルク帝国の諜報手段だった。 田中素 09/07/19 PM03

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
超国家・超市場論1 新しいまつり場は、国家と市場を超えられるか?
超国家・超市場論2 闘争(能力)適応 と 共生(取引)適応
超国家・超市場論3 置かれた環境を貫く 闘争圧力を把握せよ
超国家・超市場論4 同類闘争の圧力と共認統合の限界
超国家・超市場論5 私権闘争・掠奪闘争をどう止揚・統合するのか?
超国家・超市場論6 生存圧力に基づく同類闘争から、同類圧力に基づく同類闘争=認識競争へ
超国家・超市場論7 私権闘争を統合した 力の序列共認
超国家・超市場論8 国家(力の序列共認)と その統合限界
超国家・超市場論9 私権闘争の抜け道が、交換取引の場=市場である
超国家・超市場論10 何をするにもお金がかかる社会
超国家・超市場論11 市場は社会を統合する機能を持たない
超国家・超市場論12 市場の拡大限界は、国家の統合限界でもある
超国家・超市場論13 人類の新たな活力源=圧力源
超国家・超市場論14 外向収束⇒認識収束に応える『認識形成の場』
超国家・超市場論15 『認識形成の場』こそ、新しい社会統合機構の中核である
超国家・超市場論16 ゼロから、自分たちの『場』を作る活動
超国家・超市場論17 新しい社会統合機構が、国家機関を吸収・解体する
超国家・超市場論18 認識形成の『場』を構築することこそ、真の社会活動である
超国家・超市場論19 もう、傍観者=インテリ統合階級は、要らない
超国家・超市場論20 認識形成は遊びではない、生産活動である。
超国家・超市場論21 『認識形成の場』が、なぜ有料化されるべきなのか?
超国家・超市場論22 お金は、現実の必要度を測るモノサシ
超国家・超市場論23 『必要か、必要でないか』という真っ当な判断の土俵が出来てゆく
超国家・超市場論24 必要か否かの『判断の土俵』が、国家と市場を呑み込み、解体し、再統合してゆく
超国家・超市場論28 新しい可能性が顕在化するとは、どういうことか?
超国家・超市場論29 新しい『場』は、古い評価指標の洗礼を受けて、はじめて顕在化する
超国家・超市場論30 実現の論理
判断の土俵と解体・再統合 大学の例
判断の土俵とは、人々の潜在思念が作り出した共認圧力の場
『必要か否か』が環境問題に対する基底的な答えになる
社会統合組織の史的総括 国家と教団
社会統合組織の史的総括 市場と演場
大衆の期待の変化に応じて統合力も変わってゆく
マイナス原因構造とプラス実現構造という両輪
支配階級の私有権は絶対不可侵だが、庶民の私有権は剥奪され得る

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp