国家の支配構造と私権原理
208109 共同性を備えている日本がとった律令制度から地方自治への変化の必然
 
田野健 HP ( 48 兵庫 設計業 ) 09/06/04 AM10 【印刷用へ
日本人が中国から律令制を取り入れた際に行った、変換行為の一例があったので紹介しておきたい。

>中国人の官人の登竜門である「科挙」の試験制度には、あたえられた条件への「判」(決済文)が課せられるが、その決済に直接適用できる律令の条文があっても、その律令条文を直接には引用せず、その規定を支える思想や理念を経書(儒教の経典)などの語句を縦横に引用して詳しく説明しなければならなかった。中国の官人には律令の規定の背後にある思想をはっきりつかんでいることが要請されていたのである。
個々の条文を正等ずける根拠を経書などを引用しながら詳しく説明する「疏」(注釈)が唐の律に付されているのも、同じ理念の現れであろう。
しかし日本律の制定者は、手本とした唐律から、経書などを用いて律令文の根拠を詳しく説明した「疏」の部分を数多く削除している。
「〜吉田孝 古代国家の歩み」

科挙と律は中国の律令制度の両輪である。
日本は科挙が根付かなかったのではなく、最初から科挙を取り入れるつもりがなかった事が伺える。強力な官僚を育てる気がなかったのである。

律令制度の本質は地方を中央から送り込んだ官僚で統治、封鎖する事にある。それにより地方から中央に莫大な資金や資材を収奪し、国力を維持することができる。さらに中央から見れば危険分子である地方自治の反乱を未然に防ぐ事ができる。中国の律令制とは地方をいかに押さえ込むかという一点において優れた制度であった。

日本においても屯倉などをおくなどしてその様式が取られたが、送り込まれたはずの官僚も結局は現地に馴染み、中央から離反していく。
屯倉制度が定着しなかったのはその帰結であり、やがてそれは荘園制度として地方自治を中央が認める形で変質して行く。しかし日本の優れている点は地方自治の体制に移行しても中央と地方が並存していた事である。
なぜならばそれは律令制が行われるの以前の(古墳体制に代表される)連合体制という馴染みのある形に戻ったにすぎないわけであり、何より地方には中央にない強力な生産基盤や共認基盤が残存していたからである。

日本の律令制度の失敗は同時に地方自治(幕藩体制)と中央(朝廷)の連合形態という中国や朝鮮半島にはないまったく新しい形態を可能にした。平安から江戸初期までの800年間は日本的土着共認と中央的政治体制の刷り合わせの試行錯誤の期間であり、日本的政治システムの産みの期間であったと思う。

その意味では江戸の社会システムとは中国的システムが完全に日本化した完成形と見る事ができるのではないだろうか?
 
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