学者とマスコミはグルで頭脳支配
207508 江戸時代をどうみるか?
 
本田真吾 HP ( 壮年 香川 建築家 ) 09/05/27 AM03 【印刷用へ
『市場主義の行き詰まりに日本人は江戸を想う(202046)』にあるとおり、日本人は江戸時代に可能性を見出している。これは、この記事を書いた外人記者の論調のような懐古的思考とは大きく異なる。明らかに、本源性に基づいた充足可能性が経済的充足を超えるという実感から来ている。

このように感じながら、江戸も含めた日本の社会構造の何が、充足をもたらしたのかを調べていくうちに、この外人記者と同じ思考法で分析された日本史が極めて多いことに気がついた。その思考法とは、西洋の歴史観をそのまま日本に当てはめたものである。これは、進歩的知識人といわれる戦後の研究者に共通のものなのだろう。

彼らは、古い封建的な支配に、自由と平等を手に入れる闘争を自ら起こして勝利したから、輝かしい西洋近代社会が出来上がった。それに比べて日本は遅れており、明治になってやっと近代国家への道を歩み始めたのだ、と。だから、江戸も含めた過去は悪であり、そこに帰るという発想は文明の後退でしかない、という観念である。

これは、単に万人が私権闘争に収束する市場社会の正当化でしかない。この様な視点を日本史に無理やり当てはめると、江戸時代は西洋私権社会と同様に幕府の理不尽な支配で、農民は徹底的に搾取されるだけの奴隷のような生活をしていた、ということになる。

このような例として、土地所有の分析がある。江戸時代の土地は現在的な意味での私有はなく、共有に近かった。ただ、年貢を納める代表としての名義は登録されていた。これをもって、西洋と同じ土地私有とみなし、社会体制を分析している文献が極めて多い。

これを前提にするから、社会関係はどのレベルにおいても支配者と被支配者だけとなり、昭和初期まで現存した村落共同体という体制は説明できなくなる。また、現実のこの共同体のおかげで、役割などの充足は十分過ぎるほどあったことも説明出来なくなる。

このように、多くの日本の社会体制分析がかたよったままだ。ここで、分析軸として忘れてはならないのが、大陸から来た支配層も、土着の共同体をうまく組み込まなければ安定支配は不可能だったことだ。

そうであるがゆえに、村落共同体を組み込んだ支配体制という、支配層と下層の共同体体制の二重構造になっていることだ。また、私権社会である中国から輸入した律令制度などの支配制度も、形は良く似ているが、実態の機能は先の二重構造から日本独自のものになっている。

この様な視点で江戸を見ていくといろんなものが見えてくる。例えば、江戸や城下町という都市間では、市場経済が発達していった。しかし、その後背地である村落共同体は、経済的には、米本位制度の中で自給自足に近く、共認充足が生きる糧であった。

この二つのバランスの中で、市場経済は高度になりながらも、現在の様な自分の消費行動が誰の制限も受けないという、異常な社会になることを抑制できていたのではないかと思う。


 
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