お茶の特有な苦渋味成分である「カテキン」について、体にいい悪いと諸説ありますが(127026)、インフルエンザウイルスを抑える役割として大きく期待できそうという一面も見逃せません。
『期待される「お茶の効能」』(静岡赤十字病院ニュース 大畑雅彦氏)リンクより転載します。
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お茶の特有な苦渋味成分である 「カテキン」 は、 抗酸化作用で赤ワインブームを呼んだポリフェノールの一種です。 カテキンはウーロン茶や紅茶、 ココア、 日本茶などにも含まれていますが、 特に緑茶には、 カテキンの中で最強の殺菌力を示すエピガロカテキンガレート:(-)Epigallocatechin gallate (EGCg) の割合が最も多いのです。 お茶の効能は多岐にわたり、 実験データレベルも含めると、 がん予防、 コレステロール調整、 ボケ防止、 血圧調整、 抗アレルギー作用、 抗菌作用、 抗酸化作用、 抗突然変異作用、 消臭、 虫歯予防、 風邪予防、 老化防止、 脳卒中の予防効果などが挙げられています。 1996年8月の腸管出血性大腸菌O―157騒ぎでは、 マスコミで食中毒におけるお茶の殺菌力が取り上げられ、 広くカテキンの名前と効能が話題になりました。 普段飲む濃さの十分の一の薄さのお茶1ミリリットルで、 1万個の細菌を殺菌すると言われています。 昔から、 茶がらでまな板や調理場を拭いたりする習慣は、 食中毒防止の先人の知恵と言えるでしょう。 ここでは、 がん予防効果の現状と日常生活に活用できるお茶の利用法を述べることにします。
◆がん予防の観点から
緑茶カテキンは、 消化器がんの予防に対し有用性が期待されています。
疫学研究(疫学・・疾病の罹患など、 健康に関する事柄の頻度や分布を調査し、 その要因を明らかにする研究)としては、 緑茶の産地である静岡県では、 胃癌死亡率が全国より約20%低く、 緑茶の生産地ではさらにその発生が少ないというデータが報告されています (図1)。 また、 北九州地区の調査では、 緑茶を1日10杯以上飲用する人には胃癌の発生率が低いことを、 米国国立がん研究所では、 中国・上海市での調査から、 緑茶を飲む習慣と食道がん発症抑制の相関を確認しています。
動物や細胞を用いた研究室レベルの実験結果では、 緑茶抽出物およびカテキンの発ガン抑制作用を支持する膨大なデータが今や蓄積されています。
がん予防の有用性の研究は、 これらのデータをもとに、 最終的にはヒトへの大規模な介入試験 (臨床試験) を経て裏付けられます。 現在、 世界の様々な研究機関や企業などが共同で、 緑茶のがん予防の有用性の確立をめざし、 介入試験を重ねている最中です。 その成果によっては、 お茶や緑茶カテキンが“がん予防飲料”に、 また“がん化学予防”の観点から医薬品が開発されるかもしれません。
◆お茶の日常的な活用法
寝たきり状態のお年寄りの身体を、 緑茶の出がらしで拭くことで、 水虫やたむしの原因である白癬菌に大きな効果があったという報告が注目されています。 家庭用としてお勧めなのが、 ストッキングに緑茶10〜30g分の茶がらを入れ、 10リットル、 90℃のお湯に5分間侵して作る清拭湯です (40〜45℃に冷ましてからタオルに浸して使用する : 総カテキン濃度230 ppm)。 入浴できない方にこの方法で清拭を週に3回行うと、 早い人で1週間、 遅い人でも7週間で白癬菌が検出されなくなります。 赤ちゃんのおむつかぶれにも有効です。
2つ目には、 薄めたお茶でのうがいです。 これからの季節、 インフルエンザウイルスに対するお茶の作用は特に顕著で、 大流行を起こすA型およびB型ウイルスの両方に効果を発揮します。 家庭で飲む濃度を4分の1に薄めたお茶を、 インフルエンザウイルスと五秒間混ぜた後に、 培養細胞に加える実験を試みたところ、 瞬時にウイルスの感染力を100%抑えたという報告があります。 人ごみの中に出かけての帰宅後や、 風邪が流行っている時は、 就寝前に普段飲む濃さの2〜3倍に薄めた緑茶 (お茶の有効成分の80〜85%は一煎目に溶け出してしまうので、 一煎目または二煎目を使う。 茶の温度はぬるま湯程度) で、 うがいを励行しましょう。 またお茶を飲むことも、 喉に潤いを与え、 風邪の予防に役立ちます。
参考資料
1) 藤森 進,他. 緑茶カテキンの凄い健康パワー.二見書房
2) リンク
3) リンク
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