縄文と弥生と古墳時代の境目
199434 古事記と日本書紀の違い 2
 
阿部佳容子 ( 46 大阪 営業 ) 09/02/10 PM10 【印刷用へ
----------------

なぜ、日本書紀の降臨神話にはタカミムスヒ系とアマテラス系の二系統の伝承があり、古事記はそれを1本に統合したのか。

皇祖神の名が一つに統一されずタカミムスヒとアマテラスの間で揺れ動いているのは、王の身体が二つに引き裂かれているジレンマを表わしているのであって、タカミムスヒからアマテラスへの転換を「別個の神が入れ替わった」と見るべきではない。古事記がこの二神のうちアマテラスを究極の主神として選択したのは、二つの身体に引き裂かれている王の矛盾を新たな権威の設定によって乗り越えようとしたものである。新たな権威の設定とは、皇祖神アマテラスを伊勢神宮に創祀すること、つまり宗廟制の導入を指している。(略)

王権授受という大筋において同じ展開をたどる古事記神話と日本書紀神話との違いはどこにあるのだろうか。それは皇祖神アマテラスを祀る伊勢神宮の描き方の中に決定的な差異をみることができる。

古事記ではアマテラスは高天原にあって天上の至高神として自らの魂を伊勢の地に祀るよう命じている。対して日本書紀ではもともと宮中に祀られていたアマテラス崇神朝に倭の笠縫村に移され、垂仁朝で伊勢の地に鎮座した、という歴史上の出来事として相対化し、しかもアマテラスを天上ではなく有限な地上で祭られる存在として位置づけている。つまり、日本書紀ではアマテラスという存在をやがては取って代わられるかもしれない地上的権威としてしかみていないのだ。

これは天皇家には到底認められない編集方針であり、したがって古事記ではこれを否定し、天孫降臨神話の中に絶対化したのは当然の措置といえよう。

呉哲男「古事記の世界観」

--------------------

天皇を絶対視する天武の「古事記」に対し、官僚制度の確立による(言い換えれば、権威の象徴として天皇をいただく)律令国家を志向する「日本書紀」、という構図がみてとれます。日本書紀を実質的に編纂した藤原不比等の意図は、これからは律令国家、天皇は形としていてくれたらいい、天皇には力は不要、天皇に必要なのは「血」のみ、ということだったのでしょう。結局、不比等のこの割り切った考えが、以降の「万世一系」を実現しました。

天皇による政治VS律令政治という対立は、8世紀前半に表面化し、8世紀後半、桓武天皇によって後者の勝利で決着がついた、とみることができます。

-------------------

桓武がもっとも執念を燃やしたのは、天武天皇の直系に連なる者をすべて歴史の上から抹殺することであった。二度にわたる「郊祀」の実践は、天武系を根絶やしにした「王朝交替」の正当性を誇示するものであり、また、長岡、平安京への遷都は天武的な空間(平城京)からの決別を意味していたとも言われている。

(同上)

-------------------

平安時代以降、「日本書紀」は正史としての地位を確立します。一方、「古事記」は、その存在価値の再評価を受けるのに、江戸時代の本居宣長を待たねばなりませんでした。
 
 
  この記事は 199408 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_199434
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
203251 神話と古代史を重ねてみました。 阿部佳容子 09/03/31 PM03
日本の風土が蘇生させた仏教文化〜和辻哲郎「古寺巡礼」より 「縄文と古代文明を探求しよう!」 09/02/17 PM11

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

「合同板」必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
米国債デフォルト:金融勢力の狙いは旧紙幣の廃棄
国債暴落後の世界経済はどうなる?
経済破局の下で秩序は維持できるのか?
新時代を開くのは、共同体企業のネットワーク
共同体企業のネットワークをどう構築してゆくか
国家紙幣によるゼロ成長の経済運営
企業を共同体化し、統合機関を交代担当制にする
農(漁)村共同体の建設
新理論の構築をどう進めてゆくか
脱貧困の素朴な願いが民主主義を媒介して、自我・私権欠乏にスリ変わる
金貸しが大衆を利用するための民主主義:大衆には名前だけの民主主義
大衆には、運動を立ち上げる余力が無い→余力を与えられた悪徳エリートが支配する社会
金貸し勢力の弱点と自滅の構造
金貸しと悪徳エリートに止めを刺すのは?

『るいネット』は、41年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp