西洋医療と東洋医療
198319 旨さとは何か?〜「味覚と嗜好のサイエンス」から
 
狒狒 ( 48 ) 09/01/26 PM08 【印刷用へ
■味覚とは何か

味覚の5要素は甘味、塩味、酸味、苦味、そして旨味です。
これはそれぞれ、味蕾という味覚毎の専属機関で感知されます。
甘味は栄養分、カロリーの多さを、塩味はミネラル分を感じるセンサーで、積極的に摂取する対象を感知します。
酸味は食べ物の腐敗に対する、苦みは毒物に対するセンサーで、忌避すべき対象を感知するためにあります。
特に苦みは一つの味蕾で数十種類の異なる物質の苦みを感じ、多くの毒物に対応できるようになっているわけです。
では旨味は何のためにあるのか?

■ラットもやみつきになる

人間以外の動物は、食事が豊富でも肥満になったりしません。
必要なカロリー以上を摂取すると、体が食料を欲しなくなります。そう出来ています。
しかし、実験室でラットがやみつきになる食料があります。砂糖と油です。
どちらも飼育ゲージの中に供給すると、際限なく摂取します。当然、、肥満に。
人間や人に飼われたペットの肥満と一緒ですね。
アメリカ人がブクブクと太るのは、砂糖と油でやみつきになるように作られたジャンクフードのせいです。

油は味覚とは違い、「味」としてはありませんが、舌の奥の方で感じることが出来ます。
この感覚がないと、霜降り肉やマグロトロを美味しく感じることが出来ません。

砂糖、油がや動物をみつきにさせるのは理由があります。
どちらも必要な栄養源、且つ高カロリー。
生きていく上で、多く摂取できれば、断然有利です。コレは食べれるときに食べておけ、と本能が命じるわけです。
美味しい!という副賞を付けて。

もう一つ、ラットをやみつきにする成分があります。鰹だしの風味、旨みです。
鰹だしだけでは栄養がないので、やみつきにはならないのですが、でんぷん質を溶かして栄養を付けると、体が欲してくれるらしい。どんどん飲むそうです。

砂糖、油、鰹だしの旨み、つまり、糖、脂肪、アミノ酸の3大栄養素な訳です。旨味も体が欲する味なのです。

旨さに「コク」という概念があります。
しかし、コクがどんな味か説明できませんが、甘さ、油分、旨味の3要素の複合体であると考えられています。

■旨味文化の和食

欧米の食文化では、必要カロリーの40%くらいを肉類、脂肪から採ります。
狩猟→牧畜の生産様式からくる必然なのでしょう。
日本が近代化する以前は、肉、脂肪系から摂取するカロリーは10%に満たなかったようです。
米を玄米で食べれば、ほぼ栄養素は確保できますし、肉類で摂取しては人口が養えなかったでしょう。
古い日本の料理では、油は殆ど使われませんでした。
つまり、やみつきになる成分の内、油を使えなかったのです。加えて砂糖は貴重品でした。
米を食うおかずとして、旨味が不足することになります。
そこで、出汁です。野菜などを食べるのに、油を使うのではなく、出汁を加えて旨味をアップさせた。
ここに、出汁を中心に味付けを組み立てる調理法が発達しました。
加えて、醤油、味噌といった発酵による調味料も発達しました。
発酵は微生物の働きで旨味を増します。これは東南アジアから東アジアに共通する調理の文化です。

日本の料理は出汁の文化です。欧の料理は油分を中心に旨味を組み立てる文化です。
欧において日本の醤油、味噌に当たる、旨味増強食品は乳製品でしょう。確かに肉にチーズとかは旨い。

■味覚は学習も大きい

味覚は本能から必要とされた感覚ですが、学習によって形作られる感覚でもあります。
酸味、苦味は忌避すべき食物を感知するためですが、この味覚も人間は美味しさの一部としています。
唐辛子の辛さや、スパイスの刺激は痛さ、熱さの反応です。味蕾ではなく痛点、温点です。
赤ちゃんや犬はこれを好みません。赤ちゃんは苦い物を口に入れると吐き出します。真っ当な反応です。
しかし、大人には苦味こそ旨さです。春〜日本人ならフキノトウやタラの芽の天ぷらの旨さを知っています。
韓国人は唐辛子の辛さが必要でしょうし、四川人は山椒の痺れが必要でしょうし、インド人はクミンの爽やかさが必要でしょう。
松茸の風味をこの世の極上と感じているのは日本人だけです。(風味はほとんどが嗅覚に依存します)
単純な甘味、脂味と違って、その周辺にある本能要求以外の味覚は文化です。
子供の頃から親しむことによって、「旨さ」の文化が形作られます。

旨さも学習から生まれます。
ラットも親の代から子供時代も含めて鰹だしを舐めてきた個体と、成長してから舐めだした個体では、実験で比較するとその好物度が違います。
日本料理の会席におけるメインは椀物ですが、その上品なコクを味わうためには学習が必要です。
極限まで洗練され、抽象化された椀物の汁は、子供が味わっても喜ぶものではありません。
日本において健康的な食生活をするためには、日本人が積み重ねた食文化を継承する必要があるのです。
それは本来、お母さんからお母さんへ伝えられているはずのものです。家庭料理には民族の食文化が凝縮しています。
ジャンクフードの甘さ、油脂分だけの旨さしか知らなければ、出汁の持つ深い味わいを美味しく感じることが出来ないのです。

「味覚と嗜好のサイエンス」「コクと旨みの秘密」 伏木亨 著 より
 
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