日本を守るのに、右も左もない
197074 鎖国とは自給自足の裏返しであり、勤勉、労働に根ざしている。
 
田野健 HP ( 48 兵庫 設計業 ) 09/01/11 PM11 【印刷用へ
江戸時代の鎖国経済論を展開されている川勝平太氏の「富国有徳論」から鎖国について書かれていた部分を紹介します。(一部内容を編集、まとめています)

>日本が鎖国をしたというのは歴史的には以下の事実があった事による。
日本に鎖国という言葉が使われた最初が1801年、ドイツ人のケンベルの『日本史』が英訳され、それをオランダ語に重訳されたタイトルを志筑忠雄が縮めて「鎖国論」と翻訳したのが最初である。1800年ごろには既に輸入品の国産化が達成され、日本は自給自足の状態となっていたので「鎖国」が徳川3代以来の粗法であるような意識が幕末に広まり、日本は昔から鎖国をしていたように思われた。
しかしその10年前の松平定信はロシアの通商の要求に対して以下のように応接している。「日本の国際関係は通商の国と通信の国よりなる。通商の国は唐人であり、オランダ人である。通信の国(外交関係を結んでいる国)は朝鮮、琉球王国である。」

鎖国意識は鎖国という言葉ができあがってから後に生まれたものであり、1800年には日本国はすべての舶来品を国産化していたという事実を軌にして鎖国論が成立したのである。日本は中国の自給自足の経済システムを模倣して1800年初頭の幕末時点で自給自足経済が確立していたことにむしろ注目しておきたい。
当時、中国の「自足」という概念を取り込み「足るを知る」という自足の心が培われていた。近世日本は自給というシステムを完成させることで物を大切にするという観念を育て、徹底した資源のリサイクルの体系を作り出した。

新大陸というフロンティアを持つ西欧の「近代世界システム」の対極にあった「鎖国システム」は前者が資源が無尽蔵にあり消費こそ経済の土台であるという観念に対して、労働資源を中心とした「勤勉革命」に根ざしており、その後の日本人の労働観を作り出すことに成功した。

「勤勉革命」は勤勉、すなわち労働を多投することを意味し、働くことに喜びを見出し、物を粗末にしないで資本の節約に結びついていく。日本には狭いが稲や綿を作り出す高効率の土地がある。
これらの農地では働けば働いただけその見返りがある〜この時代、施肥技術の高度化による多肥労働集約型の生産様式が定着する。そうすれば勤勉、労働が善であるという価値観が出てきた。現代に続く勤労を尊ぶ労働精神は、日本古来の価値観ではなく、むしろこの時代の経済社会の中から生まれてきたのである。
〜以上

【まとめ】
鎖国とは自給できていたことの裏返しであり、外国からの輸入に頼らない徹底した自給システムである。
これが可能になったのは中国からの思想にも拠るが、中世に日本が貿易で大きな失敗していることに学び、自給システムを構築することで国力を蓄えた江戸の知恵である。また、幸運にもこの時期に佐渡等の地方で多くの金属が発見され、金属の自給できたこともそれを可能にした下地であった。
日本は決して資源が少ない国ではないが、労働という資源を最大限活かし、再利用というシステムをまだ科学技術が低い時代に成立させていた。

ペリーが日本に通商を求めた際に応対した林大学頭は「わが国には何でもある。したがって何もいらないので帰ってください」と応えたという。
日本は「鎖国」をしていたのではない。海外へあえて出て行く必要がなかっただけである。

21世紀初頭、先進国の経済破綻が目前に迫り、再び国力を蓄える必要が登場している。貿易を管理する鎖国という経済理論も検討するに十分値するのではないだろうか。
 
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201395 Re:「鎖国とは自給自足の裏返しであり、勤勉、労働に根ざしている。」に質問です! 匿名希望 09/03/05 AM02
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