科学者って、どこかおかしくない?
192565 人体部品ビジネス  ヘンリー・ハンスマンの『アメリカにおける移植用臓器マーケット論』1/2
 
奥村博己 ( 47 京都 農業 ) 08/11/18 AM06 【印刷用へ
アメリカの経済学者、ヘンリー・ハンスマンの『アメリカにおける移植用臓器マーケット論』を今井竜也氏が紹介しています。リンク

以下引用

移植臓器の不足は曰本のみならず、アメリカにおいても問題となっている。そしてアメリカでは、臓器売買を容認すれば、現在の壜性的な移植用臓器不足は解消するという観点から、臓器売買に賛成する意見も根強い。
 今回はその臓器売買賛成論者の中で、もつとも急進的な理論であると思われる「臓器マーケット」の設置を提唱している経済学者、ヘンリー・ハンスマンの論文を紹介したい臓器売買について賛成論を唱える論者が殆どいない曰本から見れば、極めてナンセンスな理論のように思われるかもしれないが、彼の理論はその是非はともかくとして、相当に具体'性のある実践的な提唱であり、アメリカにおける臓器売買賛成論の−形態として、きわめて興味深いものである。

1.臓器マーケット提唱論の要因
 アメリカ国内において、毎年20000人の人間が、その臓器が移植に適するとされる状況下で亡くなっているが、実際にその臓器が移植に供されるのはその15パーセントに過ぎないといわれている。
 ハンスマンはその要因について、こう分析する。この提供率の低さは、故人やその家族の提供反対の意思が反映したものではなく、故人やその家族が、提供に事前に同意していなければ臓器を摘出してはならないことをアメリカの法が要求していることに起因する。
 そして、その摘出された僅かな臓器も、それをもっとも必要としている人や、もっとも適合`性の高い人に移植されず、臓器が摘出された病院や、同じ地区の他の病院で移植されるのが一般的であり、適切な配分という点でも問題がある。
 ハンスマンはこのような状況を省みて、移植臓器の供給の増加と、臓器を適切に配分するためのシステム改善案として、本論文において移植用臓器のマーケット設立論を提唱するとしている。

2.死体臓器の場合
1)どのような形の市場が想定できるか。
生体から摘出できる臓器は極めて限られているゆえ、マーケットに十分な量と種類の臓器を供給するためには、死体臓器の存在は必要不可欠であろう。
 では、具体的に、その死体臓器のマーケットとして、どのようなものが想定できるだろうか。
 ハンスマンは言う。既に死んでしまっている人からは臓器を買うことは出来ないしまた、移植臓器の供給源となるであろう人間を期待してずっと待つということも出来ない。仮に、死んだ場合はその近親者にその人の臓器の所有権を付与するという法が出来たとしても、故人の死のショックで』礁悴している家族が、短い時間で理性的に商取引の話に応じられるとも思えない。
 そこでハンスマンは、その人間が死んだ時に臓器を採取する権利を、その人が生きていて健康なときにあらかじめ、彼から買っておくという方法を提唱する。そして、アメリ力のように健康保険が任意加入の国においては、臓器採取の権利の購入と、健康保険の加入を統合するという具体案を出し、以下のように述べている。
 保険契約者はその保険契約書の中に、保険契約の期間中に死んだ場合は、移植に適応する自分のいかなる臓器についても、保険会社がそれを摘出する権利を有するという規定を書き入れる。この項目にチェックを入れたなら、その見返りとして保険契約者は、保険料の特別割引を受けられる。
 また、自己の臓器の権利を保険会社に譲渡することを欲しない場合、その被保険者の保険料に特別増額がなされるなら、その旨を明記した項目にチェックを入れることを保険契約者に要求し得る。
 そして各保険会社は、未来のドナーとなる被保険者の身元を、政府が管理する登録所に提示する。病院は、臓器が移植に適応する患者が死んだ場合、この登録所をチェックして、もしその故人がここに登録されていた場合は、病院は登録所に、どの患者の臓器が入手可能か指摘し、登録所関連の国営のネットワークを通じて、適合するレシピエントを選出する。
 レシピエントは、移植臓器を受け取るにあたって、ドナーの契約していた保険会社、ないしはその代理人に、決められた額を支払わなければならない。
 そして、アメリカと違い公的な保険を有する国においては、保険会社ではない他の組織を介在させる必要があり、具体的には各種私的保険一自動車保険、生命保険、不動産保険一がその任を果たし得る。そのための適切な法があれば、未来の臓器を買う権利というのは、このような様々なタイプの参加者に開かれ得るものだ、とハンスマンは説いている

2)臓器の値段はどのようにして決められるか。
 摘出された臓器の値段をどのように決めるかという問題について、ハンスマンはこう述べている。摘出臓器のマーケットを設立して、需要と供給の効果で最終的な価格を決めさせるという方法もあるが、この値段はマーケットよりむしろ政府によって行政的に設定されるという方法をとった方が、システムとしてより良い機能をはたすことだろう。
 市場的要素を和らげるための具体案として、保険会社が買い取った未来の臓器の権利を、政府が全て決められた価格で買い取り、なんらかのシステムを通じて政府自らが分配法を決めるというやり方もある。
 本論文では、具体的にどの臓器にどのくらいの価格が付くと想定されるかということには触れられていないが、それについてハンスマンは、先に提唱した保険料割引システムを現実的なものにするために、保険契約者の臓器提供の同意を取り付けるに足るだけの保険料割引を提供でき、かつその割り引いた保険料に余りあるだけのものを保険会社にもたらし得る値段でなければならないとしている。

3)保険料割引で臓器提供は増カロするのか上に述べたことは、案として見るとなかなか慧眼だといえるかも知れないが、それが実際に臓器の提供率を上げられなくては意味がないであろう。
 このようなやり方で提供率が上がるのかという問題について、ハンスマンはこう述べている。そもそも大抵の人は、自分の臓器を提供するという主義を持っていないように思われる。その理由を推測すると、別に確たる信念を持って臓器を提供しないというのではなく、ドナーカードの記入や携帯が面倒くさい、自分がこの問題について正しい選択が出来るのか自信がない、こんな問題を真剣になって考えるのは嫌だ、というような理由が大半のようである。
 しかし保険料割引の提供という案は、このような潜在的ドナーの注目を臓器提供という問題に集め、彼らに臓器を提供するという動機や、提供への疑義を晴らす理由を与えるかもしれない。この割引は、臓器を諦める代償として提供されるものでばない。個人が臓器提供を決定するのに伴う物的、心理的負担を、保険料割引提供という形で保険会社が代わりに負ったとしても、それを補って余りある見返りが保険会社に十分にあるからこそ提供されるものであり、おそらくこれが実現すれば、各保険会社の熱烈な勧誘合戦が行われるだろう、とハンスマンは予測している。

中略
引用以上 つづく
 
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