経済破局は来るのか?
190814 新ブレトンウッズの焦点:IMF改革=主導権争い
 
田中素 HP ( 42 長崎 企画 ) 08/10/27 PM08 【印刷用へ
国際通貨基金(IMF)の存在感が増している。アイスランドへの21億
ドルの融資を筆頭に、パキスタン150億ドル、ウクライナ140億ドル、ベラルーシ20億ドル、さらにハンガリーなど、IMFへ融資要請を表明する国が続々登場している190631。24日のアジア欧州会議(ASEM)においても、IMFの役割強化が重要との声明が採択された。

IMFの融資可能資金は約2500億ドル(約24兆円)。現在の世界恐慌の進行速度を考えると確かに十分な金額とはいえないが、いま提起されているのは単なる機能強化ではなく、組織原理そのものの再構築だ。

1944年のブレトンウッズ協定に基づいて成立したIMFは、これまでアルゼンチンや韓国など経済危機に陥った国に救済のための融資を行う代わりに、厳しい経済介入を行ってきた。その介入の内実は、財閥解体や市場開放など経済の自由化を米国に有利になるように推し進めることだった。

IMFの意思決定は加盟国の出資割合に応じた投票権で決まる。重要事項の決定には投票権の85%が必要だが、創設以来、米国の投票権が17%を占めてきた。つまり、米国一国が拒否権を握ってきた。昨年以降2回、新興国の地位向上という主旨で投票権比率の改訂がなされたが、それでも米国最優位は変わっていない。この改訂にも同じく85%ルールが効いてるからだ。

この投票権システムを武器に、米国はIMFを通じて経済危機に陥った国々を新自由主義の経済システムへと塗り替えてきた。その米国が弱体化しつつある今は、他国にとって世界経済の主導権を握る好機だ。とりわけ先進国の成長が望めない中、新興国、中進国の市場掌握にIMFは極めて有効な手段となる。金貸しの次の狙いもおそらくそこにある。

11月15日からスタートするG20金融サミット=新ブレトンウッズでの大きな焦点の一つが、新生IMFの主導権争いになるのは間違いない。ただ、参加する各国(と背後の金貸し)の思惑はそれぞれ違っている。

米国は、現状の優位性は維持しつつ資金だけ増強という最も虫の良い願望(それがもはや叶わない事が分かっているのでブッシュの顔色は悪い)。欧州勢は、現状のシステムは維持しながら米国からの拒否権の奪取を目論み、ASEMでアジアの囲い込みに入った。G20に参加表明したロシア・中国、さらに中東はよりドラスティックな改革を狙っているだろう。

また、IMFは国連機関の一つだが、その国連はこの金融危機を受けて国際的な公的金融機関のあり方を検討する作業部会を設置、トップには『世界に格差をばら撒いたグローバリゼーションを正す』『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』などの著者ジョセフ・E・スティグリッツが就任するリンク。スティグリッツは世銀副総裁まで務めながら、世銀やIMF自体のあり方を強く批判してきたリンク 189142。また、日本経済が底を打った2003年には政府紙幣論を提唱したことでも知られる。190206

IMF(の実権を握っていた米国金融勢力)は、上からも下からも改革を迫られ、もはや逃げ場は無い。金貸しのヒモ付きでない国家・組織の連携と働きかけによっては、新たな新興国支配のフレームづくりを画策する金貸しの動きを封じ、政府紙幣を組み込んだ共認原理による世界経済運営のシステムを構築することも、決して不可能な話ではなくなっている。
 
  List
  この記事は 190470 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_190814
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
『国際金融機関どうなる?』3.国際金融機関設立の目的 〜世界銀行はドルを世界にばら撒く為に作られた〜   「日本を守るのに右も左もない」 08/11/30 AM00
『国際金融機関どうなる?』2.国際金融機関の設立目的は? 〜IMFは、ドルを基軸通貨にする為に作られた〜 「日本を守るのに右も左もない」 08/11/27 AM01
国家紙幣の成否を握るIMF改革 「日本を守るのに右も左もない」 08/11/15 PM09
国家紙幣の成否を握るIMF改革 「日本を守るのに右も左もない」 08/11/15 PM09
191419 世銀やIMFを批判し政府紙幣論を提唱するスティグリッツが21世紀のケインズとなるか〜新国際通貨とポストIMF 猛獣王S 08/11/04 AM07
『新ブレトンウッズ体制は出来るか?』その1 金・ドル体制の崩壊 「金貸しは、国家を相手に金を貸す」 08/11/04 AM00
IMFと世界銀行 るいネット関連投稿集 「日本を守るのに右も左もない」 08/10/31 PM04

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp