市場原理
190556 忘れられた経済学者シルビオ・ゲゼル@
 
根木貴大 ( 34 静岡 営業 ) 08/10/24 PM07 【印刷用へ
脱・資本主義の可能性を、政府紙幣・地域通貨制度の導入による”利子”撤廃に見出した経済学者、シルビオ・ゲゼルに関する投稿を紹介します。(リンク

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>シルビオ・ゲゼルは、1862年、ザンクト・フィット(当時はドイツで、現在はベルギーのリエージュ州)で、プロイセン人の父とワロン人の母の間に、9人兄弟の7人目の子供として生まれました。幼い頃から独仏以外のさまざまな言語に親しみ、ベルリンの郵便局に勤めた後、兄の商店のもとで商売を学んで、その後スペインのマラガに特派員として2年滞在。ブラウンシュヴァイクやハンブルクでも商売の経験を積み、24歳の時にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに渡って兄の商店の支店を開きました。

当時のアルゼンチンは、広大な農地の開発のために欧州移民の誘致に積極的でしたが、金本位制度導入後、金不足のためにデフレが起きたり、それを克服するために紙幣が乱発されインフレが起こったりという混乱した経済状況でした。それを目の当たりにしたゲゼルは、物価の推移を詳細に分析し、損失の回避に成功しましたが、これをきっかけに経済学の研究へと関心を深めてゆきます。

1891年、初めての著作『社会福祉国家への架橋としての貨幣改革制度』を発表。この著作は、その後、数多くの発行されるゲゼルの「社会的問題の原因およびその解決手段」に関する著作の根幹となりました。

アルゼンチンでの経験により、ゲゼルはマルクスとは異なる立場を取り、労働における搾取は生産手段の私的所有にあるのではなく、貨幣制度の構造的欠陥にあると考えました。ゲゼルは、お金の中に矛盾する二つの役割、つまり市場に仕える"交換手段"としてのお金と、同時に市場を支配する"権力手段"としてのお金と、2つの特性を見ていました。そして、どのような方法によって、中立的な交換手段であるお金の特質を損なうことなく、増大する権力手段としてのお金の特性を無力化することができるかを考えました。

お金が市場に君臨する要因として、ゲゼルは次の2点を挙げています。

1.需要手段としての従来の貨幣は、労働力や経済界の提供側の商品やサービスとは異なり、蓄えることが可能である。また、貨幣の所有者にさほどの損失を与えることなく、投機的な理由によって一時的に市場から引き上げることができる。

2.貨幣は商品やサービスに比べてはるかに高い流動性を備えている。トランプのジョーカーのように、いつでも、どこでも使うことができる。

この二つの特性は、お金(特に多額の所有者)に特権を授けます。購買と販売、そして貯蓄と投資の循環を中断させることが可能であり、投機的な現金保有の放棄と貨幣の経済循環への再投入に対する特別のプレミアムとして、生産者と消費者に利子を請求することができます。

>ゲゼルは、お金の権力を無力化する方法として、貯蔵性および流動性のメリットを相殺するコストをお金の中に組み入れることを考えました。現金としてのお金に手数料(運輸業における貨物車両の留置料に相当する)が課せられるのであれば、お金は市場に対する優位性を失い、交換手段としての奉仕的な機能だけを果たすことになる。循環が投機的な行為によって妨げられることがなくなれば、通貨の購買力が長期に渡って安定できるようになり、流通するお金の量を恒常的に物質量に適合させることが可能になるというのです。

『社会福祉国家への架橋としての貨幣改革制度』以降、ゲゼルは1890年代に『貨幣の国有化』、『現代商業の要請に応える貨幣の適用とその管理』、アルゼンチン政府のデフレ政策に反対する『アルゼンチンの通貨問題』等を発行します。これら初期の著作の中で、ゲゼルは"貨幣制度の有機的改革"の手段として"減価する銀行貨幣"について語っています。

「この改革によって社会有機体の中でも自然界の中でも"死せる異物"であった貨幣は、すべての生物体の永遠の死と再生に組み込まれる。貨幣は同時に無常の存在となり、利子および複利によって無限に増殖する特性を失うことになる。この種の貨幣制度改革は、貨幣流通の封鎖を解いて、多様な景気的および構造的な危機症状に苦しむ社会有機体に穏やかな自然治癒という援助の手を差し伸べ、再びバランスを取り戻させ、調和のとれた自然界の全体秩序に順応させる全的な調整的治療法といえるものである。」

>若い頃から地球を渡り歩いたゲゼルは、初期の段階から人種差別主義や反ユダヤ主義のイデオロギーとは一線を画した思想を持っていました。また、ダーウィンの進化論には強い影響を受けながらも「人間社会において生存闘争と自然淘汰による優勝劣敗は必然」とする社会ダーウィニズムには反対していました。過度の民族主義に対しては異議を唱え、東西の近隣諸国との協調に尽力。民族国家の領土拡張主義は、権力によらないヨーロッパ諸国の連合にとって代わられるべきだと考え、脱資本主義的な世界通貨秩序の創設を試みました。そして、資本主義的独占や関税境界もなく、保護貿易主義や植民地的侵略のない開放的な世界市場を支持し、現在のIMFや世界銀行、そしてユーロなどとはまったく質の異なる、あらゆる国内通貨に対して中立的な立場をとる世界貨幣を発行する"国際通貨協会"を設立して、自由な世界貿易関係の均衡が保たれるように管理することを考えました。

ゲゼルが目指したものは、資本主義から解放された市場経済の仕組みをもつ"自由経済"といえるものです。それを達成するために自由土地と自由貨幣の理論がありました。
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新しい潮流1 社会捨象→不全捨象の充足基調(’70・’80年代)
新しい潮流2 私権統合の崩壊と社会収束の潮流(’90・’00年代)
新しい潮流3 社会不全⇒認識欠乏の蓄積
新しい潮流4 言葉それ自体が引力を持ち得ない時代
新しい潮流5 実現派は仲間収束から社会収束へ
新しい潮流6 解脱仲間から認識仲間への逆転
仲間圧力と認識仲間
新しい潮流は、新しい人間関係を必要としている
市場社会の、カタワの「集団」
本当は、「集団」に入ったのではなく、社会に出たのだ
古い人間関係は、影が薄くなるばかり
関係パラダイムの逆転1
関係パラダイムの逆転2
活力源は、脱集団の『みんな期待』に応えること
収束不全発の適応可能性の探索、その深くて強い引力
充足基調から探索基調への転換
'90年代の危機感と変革期待の行方
秩序収束と答え探索の綱引き
潮流2:戦後日本の意識潮流
潮流3:’70年、豊かさの実現と充足志向
潮流6:’95年、私権原理の崩壊と目先の秩序収束
潮流9:経済破局を突き抜けてゆく充足・安定・保守の潮流
今後10年間は充足⇒活力を上げれば勝てる 
「日本人はいつ物を考え出すのか?」(1) 共認充足が最大の活力源。'10年代はそれだけで勝てる
市場時代の共認非充足の代償充足⇒解脱(芸能)埋没
'70年〜現代 収束不全⇒本能的な秩序収束⇒課題収束⇒認識収束
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大学生が授業に出るのはなんで?
「やりがい」に潜む社会的欠乏
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仲間収束 2:一人でできない子
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