アメリカ:闇の支配構造と略奪戦争
189143 失敗しても責任を問われない不思議な国際機関:IMF(2)
 
復讐の叫び 08/10/07 PM09 【印刷用へ
続きです。

国際派日本人養成講座 「The Globe Now: 世界を不幸にするIMF」
リンクより転載します。

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■4.高みの見物■

 IMFの融資条件が本当に危機脱出のために有効ならこういう口出しも許されようが、スティグリッツはその内容が誤っており、危機を逆に拡大してしまった、と言う。
  
 IMFは、為替相場を維持するためには、外国資本の流入が必要であり、そのためには金利を引き上げろ、と要求した。それも25%以上にも。これは単純明快な正しい理論である。高金利による当該国の企業倒産を考えに入れなければ。
  
 通貨危機に襲われたアジア諸国では、企業は株式による自己資本よりも、銀行などからの借り入れに頼っていた。したがって金利の上昇は企業経営に甚大な影響を与える。金利が25%にもなったら、投下資本に対してそれ以上の利益を出せない企業はやっていけなくなる。
  
 当時、アメリカでは、連邦準備銀行が0.5%ほど金利を上げようとして、クリントン政権はそれによる景気後退と失業率上昇を恐れていた。もしIMFが米国に25%もの高金利を要求したら、クリントン大統領は、IMFが米国経済の破滅を企んでいる、と非難しただろう。(もっともIMFの主導権を握っているのはアメリカなので、そもそもこんな要求をするはずもないが。)
  
 しかし、融資を受けるためにアジア諸国はある程度、IMFの要求を聞き入れなければならなかった。その結果、インドネシアでは全事業の約75%が経営難におちいり、タイでは銀行融資の50%近くが焦げついた。いくら高金利でも、貸付先がいつ倒産するか分からないような国に海外資本が流入するはずもない。
  
 スティグリッツはIMFに方針を変更するよう訴えた。このまま高金利を続ければ、どんな悲劇が起こるか分からないとも指摘した。返ってきた返答は、「あなたの正しさが証明されたら、そのとき方針を変えましょう」。IMFが高見の見物を決め込んでいる間に、タイやインドネシアや韓国の国民が長年汗水垂らして築き上げた企業や商店が、次々と倒産していった。

■5.ついに暴動発生■

 IMFはまた金融機関の体質を問題にして、自己資本比率(使用総資本に対する自己資本の割合)の基準を直ちに満たすか、それが出来ない銀行は閉鎖するよう要求した。自己資本比率を高めるには、新しい資本を株主から集めるか、融資を減らすしかない。経済が下降している中で新しい資本を集めるのは難しいので、新たな融資を断ったり、貸付先企業に返済を迫った。その結果、ますます多くの企業が倒産し、銀行側も不良債権が増えて、体質はますます悪化した。
  
 インドネシアでは16ほどの銀行が閉鎖され、さらに多くの銀行が閉鎖されるかもしれない、という通告が出された。預金者たちは自分の預金を守ろうと、国営銀行に乗り換えたため、残っていた民間銀行もたちまち顧客を失った。
  
 スティグリッツの「どんな悲劇が起こるか分からない」という警告は、98年5月のインドネシアでの暴動となって現実化した。数万人が暴動に加わり、多数の商店、銀行が略奪・放火され、約30カ所で火の手が上がった。
  
 IMFは230億ドルを提供したが、それは為替相場を支えるためと、外国の投機資本を含む債権者を救済するだけであった。インドネシアの貧困層への食糧と燃料の補助金はそれよりもはるかに少額であったが、徹底的にカットされ、その翌日に暴動が起きたのである。暴動は、投資対象としてのインドネシアの信頼性をさらに傷つけ、いっそう外国資本を遠ざけることになった。

■6.IMFの言うことを聞かなかったマレーシア■

 IMFの言うがままとなって、壊滅的な打撃を受けたインドネシアとは対照的に、隣国マレーシアのマハティール首相はまったく独自の行動をとった。1ドル=3.8リンギットに固定し、外国資本の引き上げを12ヶ月間、凍結した。IMFのエコノミストは、そんな規制を始めたら外国からの投資は激減し、株価は下落して大変なことになるだろう、マレーシアは根本的な問題に対処するのを先延ばししている、と非難を浴びせかけた。
  
 一方、スティグリッツ率いる世界銀行のチームは、マレーシア政府に協力して、直接的な資本取引規制よりも、国外に流出する資本に税をかける出国税方式への転換を提案した。税金なら段階的に規制を調整できるからである。
  
 この方式は順調に機能して、マレーシアは一年後、約束通り、出国税を撤廃した。規制によって投機資本の攻撃から通貨を守りつつ金利は低く抑えたので、企業の倒産も少なく、IMFの処方箋にしたがったタイやインドネシアなどよりも下降は浅く、回復は早かった。その後、経済の安定性が評価されて、外国からの投資はむしろ増えたのである。

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(3)に続く。
 
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