オキシトシンと同様に快感物質(解脱物質)といわれるドーパミン。この伝達物質は特にサル人類に顕著な神経伝達物質であり、サル・人類史(つまり、共認回路あるいは観念回路)と深くかかわる物質です。今回は、議論を進めやすいように、ドーパミンに関する基礎的な知識をまとめてみます。
●特異なカテコールアミンである
ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの三種の物質をまとめてカテコールアミンと呼びますが、いずれも覚醒物質であることには違いないのですが、ノルアドレナリンもアドレナリンも交感神経から脳の外に多く分泌されています(つまり、ホルモンとして働いています)が、ドーパミンのみが脳内にとどまっている神経伝達物質です。
ドーパミン作動性のニューロンでは、ノルアドレナリンを合成する反応を触媒するドーパミン−β水酸化酵素が欠如するため、神経終末からドーパミンを放出するようになった一連のニューロンです。つまり、化学的には<チロシン→ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン>と作られます。ところが、神経伝達物質として進化とともにより途中段階の毒性の強い、構造的には簡単な物質を逆に使うようになったと考えられます。このことは、カテコールアミン作動性の神経では、ただ一種類の物質ではなく、この3つが同時に分泌されているのが観察されていることからも推察されます。おそらく、進化の段階で酵素が働かなくなった結果たまたまできたドーパミン(その毒性が強いにもかかわらず)を、使うという異常な状態が発生し、それを使うことで(おそらく不全を)麻痺させることに成功したのではないかと思います。
また、ドーパミン作動性のA10神経の末端では、前回触れたオートレセプターがない構造も見られるので、負のフィードバックが働きにくい構造を持っているようです。ドバッと出っ放しになってしまうということ。
●サル・人類に特異的である。
魚類・爬虫類においては、脳内のカテコールアミンは、ほぼノルアドレナリンとアドレナリンだが、哺乳類になって大半がノルアドレナリン。サル・人類においてはドーパミンがノルアドレナリンに達するほど増加しています。
サル・人類の知能の発達とドーパミンは切っても切り離せないということになります。今まで見てきた神経伝達物質が単細胞・無脊椎動物まで起源をたどることができたのに対し、ドーパミンは進化的にはサル人類になって始めて神経伝達物質として多量に使われるようになったわけです。実現論では快感物質として、闘争共認の成立、そして自我回路の成立にも使われたと考えられている物質です。
脳内では、中脳と視床下部のところにドーパミン作動性の神経の中枢があり、視床下部発のドーパミン作動性神経は下垂体に働いて(脳内を下降して)ホルモン分泌を制御しているようですが、中脳から出ている神経は、視床下部を通って、大脳辺縁系神経を伸ばし、さらに大脳新皮質へと上昇し、特に側頭葉の内側(快感を感じる場所といわれている)に入っているようです。つまり、いたるところにドーパミン作動性の神経が張り巡らせているということです。
●+物質であること
共認の鬼っ子としての自我回路とくれば、封鎖・封印すべき対象ということですが、「ドーパミン」そのものが脳内でこれほど分泌されているので、自我回路だけに使われているのではなく、また快感物質であるのは間違いないようですが、働く場所によって快感の中身が違うようです。実際にドーパミン作動性の神経が他のドーパミン作動性の神経を制御している場合もあるようですから。
快感のうち、性の快感について言えば、ラットの実験ではメスではロード−シス反射は増加するが、誘惑行動は著しく減少する。オスでは交尾行動を促進する。性行動と関連は強いのですが、しかし、働く場所によって効果を期待できない、あるいは他のホルモンとの連動でないと思ったほど効果はないということのようです。(ドーパミンは外から直接注入できず、脳内で作られるのでうまく実験できないのかもしれませんが)
いずれにしろ、+物質(活力となる物質)であることは、間違いなさそうです。活力物質(覚醒物質)としては、アドレナリンもノルアドレナリンもあるので、そちらの検討も必要ですが。
ただ、現象的には、手先が震えるパーキンソン病は脳幹周辺のドーパミンが枯渇して引き起こされることははっきりしているようです。ただ、治療のためにドーパミンを脳内で多量に発生させると分裂病になる場合が多いということもわかっています。 |
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