脳回路と駆動物質
18432 エンドルフィンの不思議
 
吉国幹雄 ( 48 鹿児島 講師 ) 01/12/13 AM11 【印刷用へ
実現論で解脱物質(快感物質)として考えられるホルモン(あるいは神経伝達物質)として、オキシトシン・エンドルフィン・ドーパミンがあげられています。前回、親和物質として考えれているオキシトシンのもともとは集団物質と呼ぶべき根源的なホルモンではないかと述べましたが、そうすると他の二つのホルモンは進化論的にあるいは機能的にそれぞれどのような違いと意味を持っているのでしょうか。
まずは、エンドルフィンについて、ドーパミンとの差異も含めて検討します。(ドーパミンについては後日改めて扱う予定です)

エンドルフィンといえば、人間だけでなくラットの精液にも含まれていて「うれしい」時に、分泌されるホルモン。快感作用を持っている。
エンドルフィンといえば、親しい人と別れるときに「さびしい」思いをするときに、分泌されるホルモン。鎮痛作用を持っている。

快感作用と鎮痛作用、繋がらないことはないが、頭が痛いからといって「鎮痛剤」を飲んでも、快感があるわけではないが…、さて?

エンドルフィンは機能的には体内麻薬物質であるといわれています。実際に、モルヒネと構造的にも似ており(脳内の阿片薬や阿片様物質をオピエート・オピオイドと呼んでいます。他にエンケファリンなど3系20種類ほど見つかっています)、実際にβエンドルフィンはモルヒネの10倍の鎮痛作用があるようです。ちなみにドーパミンはどちらかといえば、体内の覚醒剤です。

「麻薬」「覚醒剤」いずれも快感作用と依存症を引き出します。麻薬は精神的な依存だけでなく、身体的な依存を引き起こすものを医学的には指しているようですが、これは麻薬物質の働く場所が、たとえばエンドルフィンの場合は脳内だけでなく全身の神経系特に消化系でも多く分泌されるからだと考えられます。それに対して、覚醒剤は脳内にとどまっているわけです。

このようにまず、エンドルフィンの特徴としてドーパミンと異なり、脳内はもちろん、全身の重要な部位で分泌されています。このことからも、ドーパミンよりもかなり古い(根源に位置する)ホルモン(神経伝達物質)であると予想されます。実際に、エンドルフィンやACTH(村田さんも紹介されている副腎皮質刺激ホルモン)は単細胞生物にも見出されているようです。細胞間のやり取りであるホルモンとして使われる以前から存在しているところを見ると、オキシトシンなどよりもかなり古い根源物質のようです。

また、エンドルフィンは脳内での作用の仕方として、他のドーパミンのような快感物質とは違う作用をします。ドーパミンは快感物質として、その物質そのものに快感という色をもった神経伝達物質です。ドーパミン作動性の最大の神経(束)はA10神経です。これを制御抑制する神経がギャパ作動性神経です。ギャバ作動性神経によって、負のフィードバックを受けているわけです。(ずっと、ドーパミンが出っ放しだと頭の中が快感に酔いしれて狂ってしまいますから、他の神経で制御抑制しているわけです)。

ところが、このギャバ作動性神経の末端に多くのエンドルフィンのレセプター(麻薬レセプター)がついているのです。エンドルフィンが制御抑制回路を抑制することで、結果としてA10神経に対して正のフィードバックをしていることになります。また、フィードバックといえば多くの神経はオートレセプターを持ちます。快感回路も同様です。出しすぎたあるいはシナプスに滞留する神経伝達物質を自らが回収する負のフィードバック機能です。ところが、多くの麻薬物質はこのオートレセプターにくっつくわけです。そうすると、回収されずに快感物質が長く脳内に滞留したり、多く伝達されることになります。

つまり、もともとはエンドルフィンそのものは「快感」という色を持っているのではないということでしょう。快感を感じさせるのが、二次的(間接的)な働きということになれば、その本質的な意味はどこにあるのか、あったのか。
 
  List
  この記事は 18274 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_18432
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
エンドルフィンの働きって? 「Biological Journal」 07/03/21 AM00
ダイエットが成功しない理由 「Biological Journal」 06/03/29 AM01
18647 エンドルフィンの基礎から 村上祥典 01/12/16 AM01
18444 エンドルフィンの不思議、その2 吉国幹雄 01/12/13 PM01

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

「合同板」必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
前夜の意識状況1 答えがないので、課題捨象
前夜の意識状況2 課題を捨象して充足収束=充足基調
前夜の意識状況3 無用となった感応観念(価値観念や規範観念)
観念捨象の実践模索では足りない=観念を必要とする地平
構造認識の現況1 否定意識や自我観念から脱却できない近代人=現代人
構造認識の現況2 特権知識階級の商売道具と化した「構造認識」
構造認識の現況3 既成観念の全的否定
思考次元1 潜在思念の実践思考
思考次元2 否定意識の倒錯思考
思考次元3 本能⇒共認⇒観念の超越思考(構造認識)
全てのネックは「答えを出せない」という一点にある
現代意識潮流と戦略ターゲット
必要意識⇒課題意識には、不全発と可能性発の二通りある!
不全発の『変革の必要』から、実現発の『認識の必要』への大転換
観念パラダイムの逆転1 現実捨象の倒錯観念から、観念捨象の現実直視へ
観念パラダイムの逆転2 現実否定の倒錯思考
観念パラダイムの逆転3 現実とは、人々の意識である
観念パラダイムの逆転5 現実、その下部意識と上部意識
観念パラダイムの逆転6 残る観念は、頭で塗り替えたら終い
観念パラダイムの逆転7 新しい認識だけが、現実を変えてゆく
新パラダイムの点検1 現実の壁を対象化できるか?
新パラダイムの効用1 現実否定の鎖を断ち切って、プラス活力の上昇へ
新パラダイムの点検2 可能性と不全(肯定か否定か)
新パラダイムの点検3 可能性or不全の源を対象化し続ける源泉
社会収束1 評価共認が生み出す同類圧力
社会収束2 私権圧力を超えた外向収束の潮流
新しい潮流8 現実を対象化するための概念装置
『必要か、必要でないか』という真っ当な判断の土俵が出来てゆく
必要か否かの『判断の土俵』が、国家と市場を呑み込み、解体し、再統合してゆく
新しい可能性が顕在化するとは、どういうことか?
新しい『場』は、古い評価指標の洗礼を受けて、はじめて顕在化する
実現の論理
実現論は、易しいけど難しい
行動方針4 まず身近な職場を改革してから、社会をどうするかを提示せよ
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
大衆の期待の変化に応じて統合力も変わってゆく
大衆には、運動を立ち上げる余力が無い→余力を与えられた悪徳エリートが支配する社会
金貸し勢力の弱点と自滅の構造
金貸しと悪徳エリートに止めを刺すのは?

『るいネット』は、48年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp