子育てをどうする?
18261 「いい子」の非行が増えている。
 
槇原賢二 ( 30代 大阪 塾講師 ) 01/12/11 PM01 【印刷用へ
水戸家庭裁判所の調査官、佐々木光郎氏によると、1990年の初めころから、それまで大人を困らせたこともなく、勉強やスポーツでがんばっている、いわゆる「いい子」の非行が増えてきているそうです。

例えば、大学進学を目指していた高校1年生のA少年は、繁華街で同級生らと酒に酔った中年男性を襲い、金品を強奪しました。重大な犯罪なのですが、面接では「皆でワイワイガヤガヤしながら何かをするのが楽しいかった」といったそうです。佐々木氏によると、行為の結果が重大であるのに比して、非行に至るさまは、あたかも小学校の高学年の子供たちが群れをつくって遊んでいるように感じられたそうです。

また、A君は「別の自分が悪いことをした。本当の自分はまじめである。」「成績が良ければ何をしても許される。」とも真顔でこたえ、また、「反省したから(犯罪の)責任は消えた。」などともいったそうです。勉強もスポーツもできる少年が、こと対象性・社会性に関してはこの程度の認識しか持ち得ていないということです。

彼のような思考をする青少年による非行が近年増えているということですが、彼らの生育史を読み取るといくつかの共通点が見られるそうです。

わが子の教育に熱心な両親のもとで育ち、たいていは小学校に入る前から何かしらの習い事を始め、中には「遊びは無駄である」といわれている子どももいる。小学校に上がると、親が子供のSKを決めて、我が子の「良いところ」しか見ようとしない。子供は親の顔色をうかがいながら「親が喜ぶのが最善である」と思い、自分の行動の基準にしている。親の願いに応えようと頑張るが、そうしないと親からの「受け入れ」を失うと思い込んでいる。また、「大人のいうとおりにしていれば楽だから」という子どももいるそうである。

そのような子どもは大人からみれば「いい子」に写るわけですが、実は、人間の成長にとって最も大切なものが身についていないのです。上記の少年の例など、学童期に体験しておくべき仲間体験を青年期になって、犯罪行為という方法で、取りもどしたともいえます。

上記のような成育史をたどるわけですから、彼らのほぼ全員には、幼児期での自然体験や学童期になってのギャングエイジの体験がないそうです。ギャングエイジとは、子どもたちがきわめて親しい仲間集団をつくり、秘密基地や独自の掟をつくり、自分達だけの社会をつくり、活動・生活する時期で、10歳前後の子どもが軸となり、下は4、5歳の子どもまでが参加する異年齢集団です。このような集団の中で、子どもは他者との付き合いや集団で生活するための技術・知識、つまり「仲間づくり」の方法を学ぶといわれています。

かつての日本での「子ども組」でもそうですが、どのような社会にも、幼児期から学童期にかけて、子どもが仲間を体験、実感できる集団が存在していました。そのような場で子ども達は、人間にとって大切な共認回路を発達させられたのです。幼児期から学童期にかけて、対象性・社会性を学んでいく場としての自然体験、ギャングエイジ体験の喪失が、子供たちの成長に様々な悪影響を与えているとの指摘が、近年、多くなっています。

また、最近では、このような状況に危機感を感じ、失われたギャングエイジ体験の場をよみがえらせようと、学校のある時期に異学年の子ども達に合宿をさせる通学合宿の試みもみられるようです。

参考:12月8日「日本経済新聞・教育版」
 
  List
  この記事は 16312 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_18261
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
107057 ギャングエイジは「死」という観念と潜在思念を繋げていく時期? 竹村誠一 06/03/09 PM10
105198 「友達と遊んで楽しい」と思うことが大切。 前田かおり 06/02/05 PM06
105177 「遊び」は私権時代の価値観念 前上英二 06/02/04 PM11
102553 どうしたら犯罪を未然に防げるか 大嶋洋一 05/12/14 AM00
102190 集団や社会の中での充足体験こそ子育ての真髄 本田真吾 05/12/08 AM00
92356 「いい子」とは親にとって都合の良い子? ミスター 05/06/09 PM01
ほめて育てるか、叱って育てるか 「開放空間「THE ROTEN」」 05/05/31 PM11
91534 いい子の非行の背景にあるのは 琵琶湖 05/05/27 AM10
91473 子育て論には共認回路の発達過程の研究が必要 高田敦 05/05/26 PM01
子供版(?)の「なんで屋露店」、「なんで屋劇場」、「るいネット」 「開放空間「THE ROTEN」」 05/05/19 PM11
90426 秘密基地、どこでつくれる? 矢野聡子 05/05/10 PM10
89833 「本当の自分」という思い込み。 田村正道 05/05/01 AM00
89126 子ども組 谷光美紀 05/04/19 AM00
88992 出す側と受ける側 野崎章 05/04/16 PM10
88969 社宅と共同体 小林有吾 05/04/16 PM09
85988 子供達が「子供らしく」なる為には。 庄恵三 05/02/19 PM11
85978 圧力を受け入れること=肯定性 前山薫 05/02/19 PM10
84507 イイ子・ワルイ子 笠原光 05/01/23 PM11
18509 RE:『「いい子」の非行が増えている。 上山昇良 01/12/14 AM00
18458 一人一人の面倒よりも、みんなで盛り上がる場の必要性 あいうえお 01/12/13 PM01
18333 可能性を感じます。 松下直城 01/12/12 PM00

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp