市場における個人主義に慣らされてしまった現代人には、私権と言えば個人私権を直ちに連想してしまいがちである。しかし、私権とは排他的占有権であり、人類史においては、その主役は(単位)集団であり、そして最初に集団私権(=自集団の蓄財第一)を生み出したのが、遊牧部族である。この観点から、私権社会の起源を整理してみた。
○集団私権意識=蓄財第一意識の登場
牧畜部族は人口の増大に伴って、男だけの小集団が遠征部隊として、遠方へと遊牧に乗り出すことになる。
しかし、そのままでは遠征集団に子どもが生まれない。加えて集団間の紐帯が失われてしまう。そのためやがて、男達の遠征小集団に娘が送り出されるようになった。こうして人類史上初の、(哺乳類では極めて例外的な)父系制が登場する。(と同時に、本家と遠征集団という多段階化された部族集団が登場する)
その結果生まれた時から一緒であると言う、母系制で確立されていた女達の絶対的な安心基盤は喪われ、女たちは(持参)財に収束し、出身集団や嫁ぎ先の集団に蓄財期待を強めていく。その結果集団全体が蓄財意識に染められてゆく。これが集団私権の登場である。
○力の原理の登場
各遠征集団が自集団の蓄財第一へと変貌すると、部族内の集団間に利害対立が生じ、部族集団の統合が困難になる。(同時に娘達は実家集団の利害を反映しているため、単位集団自体の統合も揺らぎ始める。)利害対立する各集団を統合するためには、遠征集団を押さえ込む力の基盤が必要になり、本家も力を蓄える(家畜を増やし成員を増やす)方向に動き出さざるを得なくなる。
このようにして、純粋な課題・役割の共認に基づく「共認原理」から、力によって統合する「力の原理」へ部族集団の統合原理は徐々に転換してゆく。
○正当化観念と略奪闘争の開始
このようにして部族全体が力の原理に転換し、蓄財(排他的占有)意識に染められていったという条件の下で、集団全体を統合するために、自部族を正当化する正当化観念が採用される(守護神信仰)。
この、観念によって自部族を徹底的に正当化し=特別視(他部族を劣等視)した事によって、他部族に対する攻撃性が異常に強くなり、それらの部族によって、最初の略奪闘争が引き起こされたのであろう。
このように遊牧部族は、立体集団、父系制、(集団)私権意識、力の原理、正当化観念という、後の私権社会を形成する基本要因を全て取り揃えていた点が極めて注目される。 |
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