生命原理・自然の摂理
17384 セロトニンの不思議、その1
 
吉国幹雄 ( 48 鹿児島 講師 ) 01/11/29 AM11 【印刷用へ
田中さん、こんにちは。「進化論」の会議室の方に田中さんの「ドーパミン」をはじめいくつかの神経伝達物質に触れた17094が紹介されています。こちらの会議室では現在、神経系(脳)についてホットな議論を展開中ですが、神経伝達物質についての詳細な議論もこれからだと思っていましたので、田中さんへのレスという形をとりますが、まずは神経伝達物質の一つであるセロトニンに関して、前から不思議だなと思っていたこともあるので、少し触れてみたいと思います。

まず、基礎知識・基礎事実の確認から。

B系のセロトニン作動系の神経は脳幹の延髄から橋・中脳あたりに9つの神経核(1万〜2万の神経細胞の集まったところ)を持っている、(長谷川さんも紹介された)無髄神経です。ここから全脳へ向かってセロトニンが分泌されるわけです。C系(アドレナリン作動系、3つの神経核)、A系(A1〜A7ノルアドレナリン作動系、A8〜A16ドーパミン作動系)が、いずれも覚醒系(興奮系)であるのに対して、セロトニン作動系は抑制系であると言われています。

セロトニン作動系ニューロンの特徴として、(一部のドーパミン作動系にも見られますが)、閉鎖的なシナプス(簡単には1対1で神経伝達物質が受け渡されていくというイメージ)を作らないので、末端では広範囲に分泌され、またシナプスでは前軸索末端からシナプスに放出されたセロトニンが、シナプス後受容体に受け渡されずに、(前軸索末端の輸送体による)「再取り込み」も行われています。ホルモン分泌細胞に近い形を残しているともいえます。

【補足1】A.B.Cは神経の大分類と思えばいいです。最大・最長のA6神経(脳幹から大脳新皮質の先端まで伸びています)とか、田中さんも使われているA10神経(ドーパミン作動系の最大の神経)というのがよく科学書に取り上げられますが、これは1本の神経を指しているわけではありません。同じ起源の神経核に発した神経の集合体(つまり、約1万ほどの神経)のグループ名みたいなものです。ちなみにシナプスの数は、大脳皮質の神経細胞で1個あたり4万個、小脳で10万個と言われています。ちょっと掛け算をしてみただけで、すごい数のシナプスになりますね。

【補足2】このシナプスに、さまざまな神経伝達物質が出されるわけです。セロトニン作動系といえば、セロトニンを神経伝達物質として分泌する神経ということですが、ある一つの神経細胞に対して一種類の神経伝達物質が出されるわけではありません。複数の神経線維から分泌された複数の神経伝達物質がその神経細胞には共存することになります。(つまり、複数の神経伝達物質の受容体を各神経細胞は持っているということです)
従って、その神経細胞の興奮と抑制はそれらの神経伝達物質の総体によって決まることになりますね。だから、ひとことで「抑制」物質といっても他の物質やその軸索内のイオン状態によって、ある神経では「興奮」物質として働くこともあるようです。このへんが、「言葉」による混乱もありますね、ホント科学用語はむずかしい。

また、既に過去16046でも触れましたが、アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニン、いずれもアミン系の伝達物質(ホルモン)で、猛毒です。ただし、セロトニン以外はチロシンから作られますが、セロトニンはアミノ酸トリプトファン(必須アミノ酸ですが)から作られます。ドーパミンやノルアドレナリンが快感や覚醒の作用があるのに対し、セロトニンは脳内の過剰な興奮を押さえる抑制性伝達物質といわれています。(他のホルモンは、ややこしくなるのでここではいったん触れません)。

主なセロトニン作動性のニューロンの働き(行動との関係)として、視床下部に到達するもの(B4〜B9)は、食欲、性行動、睡眠、体温調節などに関係します。脊髄を下降するもの(B1〜B3)は、血管収縮や消化管の収縮膨張の調節などに関係している。最近では、気分傷害(うつ病ななど)では、セロトニン量が少ないことが明らかになり、先ほどのセロトニンの「再取り込み」を防ぐことでセロトニン量を増やす「抗うつ剤のフルオクセチン(商品名プロザック)などがよく使われているようです。また、睡眠薬としてもセロトニン量を増やす薬剤が使われます。


(以上参考図書『脳の栄養:共立出版、中川八郎』、『脳がここまで分かった:光文社、大木幸介』) 
 
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