・異物から身を守る防衛機能として発達してきた免疫系を最近勉強し始めています。
・勉強し初めという事もあり、色々疑問は尽きないのですが、特に不思議だと思った現象について今回調べてみました。
・それは「精子と卵細胞、そして母体」7730にあるように、「免疫機能(異物を排除するのが基本)と受精(卵子に対する異物である精子の融合)という矛盾? 」の謎を解き明かす事=体内受精における免疫寛容システムとは何か?という御題であります。
○卵子にとって精子は本当に異物なのか?
・卵子に限らず、精子は男性の他の細胞にとっても異物となります。なぜならば、精子の染色体数は正常(n=46)の半分(n=23)だからです。なので、精子と血液が接触することにより、抗精子抗体産生を伴う免疫反応が始まります。
・通常、精子形成は精巣すなわち‘免疫学的バリア,の中で行われますが、一部の男性では、精子あるいは精子成分がこのバリアから漏れ出て、抗精子抗体の産生を刺激してしまう場合があります。これが男性発による不妊の原因ともなります。
・しかし、女性にとって精子抗原は性交によって初めて接触する外来抗原で免疫応答が誘導されても不思議では無いが、全ての女性に抗精子抗体は産生されないのは事実のようです(下記例外は除く)。一方、それがなぜなのかは未解明のようです。
・女性で抗精子抗体が出来るのは、女性の血液中に精子が接触してしまう際に出来てしまうことがあります。これが女性の抗精子抗体であり、女性発による不妊の原因ともなります。
→まとめると、「精子は異物であるが、一般には女性には抗精子抗体が生殖行為において産出される事は無い。しかし、なんらかの原因で男女共に血液の接触があった場合は抗精子抗体が免疫機能として産生される事がある。」
・さて、異物である精子が卵子付近まで辿り着く事が可能である事は先述より分かったが、次は融合するにはどうすれば良いのか?という所に着目したい。
○異物である精子と卵子を結ぶもの=先体反応
・詳しくは、「生物史から自然の摂理を読み解く」〜精子と卵子の認識機能:先体反応(リンク )が詳しいのですが、どうもこの先体反応によって脊椎動物(魚のホヤや哺乳類のマウス等)などは卵子の透明帯が、棘皮物(ヒトデやウニ等)は精子の先体突起がそれに該当するようです。
・また、「蛋白質分解による細胞・個体機能の制御」〜精子ユビキチン-プロテアソームシステムの機能解析(リンク )によると、
>受精過程のなかでも特に精子が卵保護層を通過する際に、精子由来の酵素が卵黄膜タンパク質(精子受容体:HrVC70)を細胞外でユビキチン(Ub)化すること、またそれを精子細胞膜結合型プロテアソームが分解することを、原索動物マボヤを用いて明らかにしてきた(文献1,2)。この現象は当初ホヤの受精に限られる現象ではないかと考えていたが、最近哺乳類においても同様の現象があることが報告され、受精に関与する細胞外Ub-プロテアソームシステム(UPS)の解明が強く望まれている。
とあり、未だ専門家でも未明領域ではあるが、どうやら卵子における膜に秘密がある事は明らかである事は分かり、なにかしらの変異(異物→同物化)が行われていると見れる。
今回はこれまでですが、今後は「精子ユビキチン-プロテアソームシステム」というキーワードからより詳細的に調べる必要性もありそうです。
またなぜ、全ての女性に抗精子抗体は産生されないのか?という謎もありますので継続して調べるのも面白そうです。 |
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