経済
172931 『世界を壊す金融資本主義』ジャン・ペイルルヴァッド著
「万国の市民よ!団結せよ 」
 
前山薫 ( 36 東京 照明士 ) 08/03/23 PM08 【印刷用へ
著者はスエズ金融グループの元CEOで、クレディ・リヨネ会長兼CEOを務めた経歴の持ち主。

『世界を壊す金融資本主義』の「日本語版への序文」から一部抜粋。
(mixi:ビルダーバーグ会議コミュニティ 書籍紹介より)

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資本主義をテーマとしたこの小さな本は、2005年10月にパリで出版された。(中略)本書『世界を壊す金融資本主義』は、本国フランスで大変大きな反響を巻き起こした。本書では、今後、世界全体が埋没することになる経済システムを赤裸に描写しており、読者の反応は、批判というよりも好奇心、意見の食い違いというよりも疑問であった。

(中略)

日本の産業界は長期にわたる危機と再編成の時期を経て、世界でもっとも高い競争力を取り戻した。日本の産業界は、至極当然のやり方で、再び勝利者の座に就いたのである。特に、大企業をはじめとした企業の各経営者は、彼らにとってグローバル化の重要性をすばやく理解した。

すなわち、中国、アメリカ、そして現在ではヨーロッパにおいて、直接投資が増加したということである。世界第二位の経済大国である日本は、市場を求めて、あるいは、自国に欠けている製品やテクノロジーを求めて、経済の解放という切り札を用いたのである。

しかしながら、日本社会に緊張や矛盾が生じなかったわけではない。というのは、この切り札を用いるためには、日本は元来の社会モデルから少しずつ距離を置き、次第にアングロサクソン型規範に歩み寄らなければならないからである。

つまり、国際金融市場に完全に組み込まれるおかげで、アングロサクソン型規範が、すべての領域で君臨することになるからである。国際市場で行なわれているゲームに参加したいのであれば、アングロサクソンのルールに従い、多くの点で「型どおり」となる必要がある。

(中略)

最後に、こうした社会的妥協から生まれた以前の規律が弱体化したことにより、特に日本では他の国以上に、所得の不平等や貧困の増大といった問題が生じている。

一方では、20年の間に所得税最高税率は70%から37%にまで軽減された。これはフランスの最高税率の推移と比較した場合、際立ったものである。他方、所得税や社会保障費などを差し引いた所得の不平等を示す指数であるジニ係数は、1987年の0・338から2002年の0・381へと一貫して上昇している。

この2001年の数値は、アメリカやイギリスのそれと匹敵するものであり、フランス、ドイツ、スカンジナビア諸国よりも、はるかに高い。同様に、平均的給与額の50%未満しか所得のない個人の割合を計測する貧困率に関しても、一般に流布している意見とは反対に、日本は先進国中でもっとも貧困率が高い国の1つである。日本の貧困率は、またしてもアメリカのそれに匹敵し、西ヨーロッパ諸国よりも、はるかに高い。ゆえに、日本において社会的緊張が生じるリスクは無視できない。

要するに日本もまた、日本特有の形で「金融資本主義」の到来にさいなまれているところなのである。しかし、日本の非常に長い歴史、その高い文化レベル、その伝統が及ぼす影響力、島国としての特徴といったことを考慮すれば、このアングロサクソンの近代性の闖入は、強烈な抵抗をまきおこさざるを得ないであろう。

こうした意味で、今後、東京で繰り広げられることは、さらに高い次元の出来事として我々は注目しなければならない。日本は他の国と同様、金融資本主義の荒波に飲み込まれるのであろうか。それとも、日本は鎖国することなく、日本独自の規制を打ち立て、日本の独創性を保護していくことができるのであろうか。また、我々は日本を好例として、新しいアイデアを見つけ出すことができるのであろうか。

日本市民とヨーロッパ市民は同じ挑戦に立ち向かわなければならないのである。つまり、それは経済的・社会的不均衡を修正することのできる政治を改めて創造することである。この不均衡を放置した場合、我々は急速に堪え難い状態に陥る危険性がある。はたして我々は、この挑戦を克服できるのであろうか。

2007年1月 パリにて
ジャン・ペイルルヴァッド
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世界を壊す金融資本主義
[原書名:LE CAPITALISME TOTAL〈Peyrelevade, Jean〉]

著者 ジャン・ペイルルヴァッド
監修 宇野彰洋・山田雅俊
訳  林 昌宏

162p 19×12cm
NTT出版 (2007-03-20出版)
[B6 判] NDC分類:338.1 販売価:\1,680(税込) (本体価:\1,600)

増殖するウルトラ・リッチ、権力を握った年金基金とファンド・マネージャー。グローバル化という名の下で、「トータル・キャピタリズム」の暴走が地球規模の格差社会を生み出している。フランスで議論を巻き起こしたアメリカ資本主義への警告の書。

第1章 ドイツ型資本主義モデルの終焉
     貯蓄から投資へ
     護送船団方式の崩壊
     カネがすべての金融資本主義

第2章 株主が握る力、その理論と実践
     株式擬似民主主義という幻想
     ヨーロッパの教義VSアメリカの神話
     コーポレート・ガバナンス誕生の舞台裏
     株式会社とは何か
     絶対化する株主の権力

第3章 株主とは何者か?
     世界の株主たち
     蔓延する国際的格差社会
     株式が生み出すいびつな所得格差
     「万国の株主よ!団結せよ」
     高齢化社会、機関投資家の台頭、社会的連帯感の喪失
     モノ言う株主、ファンド・マネージャー
     資本市場とコーポレート・ガバナンス

第4章 市場と経済成長
     拡大する市場主義が生み出す功罪
     弱体化する国家、単一モデルを目指す世界
     金融市場の権力構造
     宣教師となった機関投資家
     株主資本利益率(ROE)の罠
     市場が経済活動を破壊する
     企業の寡占化とM&Aの真相
     金融専門家によるマネーゲーム
     国の役割を問う

第5章 何をすべきか?
     「企業の社会的責任(CSR)」は単なる飾り
     世界規模で暴走する市場経済の行く末
     トータル・キャピタリズムに対する提言

結論
     万国の市民よ!団結せよ
 
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