市場は環境を守れない、社会を統合できない
171570 電力自由化、「脱原発」と矛盾 〜ヨーロッパの実態〜
 
リンゴヨーグルト ( 20代 男 ) 08/02/27 AM02 【印刷用へ
欧州における原子力発電の展望と矛盾を紹介します。

以下引用スタート
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電力自由化、「脱原発」と矛盾 リンク
岸本 康(科学評論家)

 統一通貨「ユーロ」が根を下ろしたヨーロッパでは、さまざまな市場改革が進んでいる。日本でも電力市場の規制緩和が段階的に始まったが、私はこのほど原発全廃政策の実態を調べる目的で、ドイツ各地を単独で訪れ、官・民、学界、ジャーナリスト十数人と個々に面談してきた。ドイツを例に、欧州の電力事情と原発をめぐる実情を報告したい。
 欧州の電力やガスのエネルギー産業の当事者たちは、未経験の混乱と挑戦を強いられているようだ。欧州全域は将来、五大電力グループに支配される方向にあるという。EDF(仏)、RWE(独)、E−ON(独)、ENEL(伊)、ヴァッテンファル(スウェーデン)の五グループだ。
 ドイツには最近まで各地に約一千社の電力事業者があった。電力自由化の競争が始まり生存をかけて合併。いまは電力供給量の約八割が統合四社に独占供給されている。その四社のうち二社は外国の電力・ガス供給会社をも吸収、だが、残る二社は逆に外国資本の傘下に入った。
 このため奇妙な現象が続出している。ドイツ第四位のEnBW社は、EDF社から34.4%を出資された。EDF社はフランスの国営電力会社だから、EnBW社はフランス政府の電力政策に支配される。フランスは電力の八割以上を原子力発電で賄っていて、その原子力政策が一変することはあり得ない。                          
 
ところが、ドイツで原発全廃止の法律が成立している。
 さらに奇妙なのはハンブルク電力である。同社と旧東ドイツのベルリン電力など民営三社は、バルト海の対岸スウェーデンのヴァッテンファル社と新会社を創設した。ヴァッテンファル社はスウェーデンで電力の半量を供給している大会社であり100%国営である。
 新会社は、本社をベルリンに置き、ドイツの法律に従う。すでに7月から高圧送電事業を開始し、来年1月までに残る全部門も動き出し正式発足を迎える。同社は北欧から東欧一帯をサービスエリアに収めるという野心を持っている。すなわちスウェーデンの国営会社がドイツ第三の民間会社を支配する。                            
 だが、両国は原子力政策で一致していない。スウェーデンは22年前に全原子力発電所を2010年までに廃絶する政策を確定したが、現在までに一基を停止しただけで全廃は不可能な状態だ。唯一閉鎖した原発は、国有ではなく民間のシドクラフト社の所有である。ドイツ第二位のE−○Nはこのシドクラフト社を買収し、東欧・南欧への進出も図っている。
 さらにまたドイツのRWE社は、英国第二の発電会社を買収し、フランスのEDFの株式買収計画も準備中である。
 欧州連合(EU)指令に発した加盟国の電力自由化は、このように複雑に絡み合いながら進み、ドイツの社民・緑の党連立の連邦政府は、電力の国際統合に熱心だという。国際間の統合は全産業強化に役立つという期待であろう。
 今後約十年間、ドイツ国内の旧式で非能率な原発を徐々に廃止していくと、いまは余裕の電力需給がタイトになると予想される。原因は京都議定書の炭酸ガス排出抑制の国際公約で、旧東独の褐炭発電などが制約される一方、風力など自然エネには必要電力供給を期待できず、供給は底打ちとなるからだ。                            
 そのドイツは、現にフランスから輸入中の原子力の電力量では足りず、ロシアなどに大きく依存せざるを得ない。約十年後、矛盾露呈で激しい原発論争が再燃するころ、全欧州は五大電力支配の新時代に様変わりである。
 日本では、ドイツは原発廃絶国という固定観念が強いが、欧州のダイナミズムを直視する必要がある。「木を見て森を見ざる」を反省したい。
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 全体的には、脱原発の動きが報じられているEU、とくにドイツなどは、統一通貨「ユーロ」に代表されるように、経済界の大再編が激しく動いており、長くて多額の先行投資が必要な原子力発電所の建設など、一旦凍結せざるを得なくなったのである。日本のマスコミが報じているように、原子力の危険性の認識が高まったわけでも、省エネ技術や自然エネルギーの開発が進み、原子力の役割が終わったわけでも、決してないということだ。

 その証拠に、「欧州全域は将来、五大電力グループに支配される方向」にあり、陸続きの特長を生かして、当面は原子力を進めてきたフランスなどから電気を輸入しようとしていることである。そして、「五大電力グループ」の支配が確立する約10年後には、その電力グループは、原子力発電所を建設するに十分な力を付けているということだ。

 「日本では、ドイツは原発廃絶国という固定観念が強いが、欧州のダイナミズムを直視する必要がある。<木を見て森を見ざる>を反省したい」という岸本論文の最後のパラグラフこそ、肝に銘じるべきだろう。
 
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