思考革命:問題意識発から可能性発へ
171141 異化という近代科学の思考法
 
本田真吾 HP ( 壮年 香川 建築家 ) 08/02/19 PM00 【印刷用へ
国家時代(市場時代の前)のキリスト教世界において、理性という言葉は神の意思とか本性をさした。道徳とは、神の意思を知り守ることというニュアンスがあった。この辺が、一般的な日本語の意味とは異なり、キリスト教の影響を受けた言葉であることを意識しなけば彼らが何を言わんとしているのか解からなくなることがある。

だから、国家時代のキリスト教世界では、一般大衆の倫理観は神の理性に従うことで、自分の内面だけから来る判断は、ほとんど封鎖されていた。ここで、ほんの一部の支配者だけが神の代理者になり、自分の内面の意思をもとに、好きなように判断・行動をすることが出来た。

それに対して、現在のように、すべての人間に理性があると考えるようになったのは、市場時代になってからである。このときすべての人間が、自分の内面だけから良し悪しを判断することの出来る理性をもつと考えるようになったのである。

このような、市場時代の黎明期に、デカルトは登場した。彼が提唱したのは『我思う、故に我あり』、神もみんなも無く、ただ自分の内面から全てを判断していくという、倒錯した思考法である。その後、この思考法が定着してきたとき、ニーチェは『神は死んだ』といった。換言すると『市場社会の人々がそれぞれ神になった』のである。

このように、近代科学の思考法=市場社会の思考法の根源に、デカルトの『方法序説』がある。正確には、『理性を正しく導き、もろもろの科学における真理を探究するための方法序説』である。ここで述べられている主題は、平たく言うと客観性の重視ということになるだろう。そのためには、主体と対象の分離がまず前提になる。

そして、客観性を重視するため、必ず主観を排除するという意識で物を観る。しかし対象を観察する自分は絶対的で排除されることはない。つまり、事実は主観を排除しているのではなく、絶対的主観(我)が、観察できる範囲の限定した対象を事実とし、それ以外は事実ではないと断定していく、という傲慢な思考なのだ。

だから、主観的には一生懸命考えていても、その背後に起きる現実とのズレを認識できず、問題は解決しない。なぜならば、全ての現実を受け入れ、問題解決に当たるという意識が最初から排除されているからだ。環境問題はまさにこの状態にある。問題の発端になる科学技術の(偏った)発達そのものが問題視されたことがないことがその証左だ。

それに対して、主体と対象の可能な限り一致させ、対象に肉薄していく思考法が同化である。事実をありのまま捉え、現実対象に限り無く近づくことで、現実課題を突破することが出来る。そのとき、(主観)客観思考のような、切り捨てて燻っている潜在問題はない。

あるのは、いくら追求しても、完全に同化することは出来ないという感覚だけだ。つまり、対象に超越性を感じるという、謙虚な思考法である。

このように考えると、(主観)客観思考は、対象に同化するのとは全く反対で、自分の内面だけから、観察対象を限定し、その世界が全てであると思い込む、異化思考と言えるかもしれない。これは、近代科学的思考法の重大な欠陥であると思う。
 
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