原始共同体社会
170171 「クラ交易」にみる贈与
 
安藤太地 ( 28 埼玉 会社員 ) 08/02/01 PM11 【印刷用へ
贈与による友好関係を維持している事例として、トロブリアンド諸島の「クラ交易」がありますが、詳しく記述されているサイトがあったので紹介します。
「オイコス---あるいは埋め込まれた経済」リンク

注)このサイトでは、「クラ交易」を伝統的交換と定義していますが、交易(交換取引)との概念を分けるため、ここでは伝統的交換=贈与と定義して、一部修正を加えています。
「贈与」と「交易」の定義に関しては、(143035)を参照。


■クラ=装飾品の贈与
クラは、ニューギニアのマッシムと呼ばれる地域の島々間で行われる贈与であり、ルイジアード島、ウッドラーク島、トロブリアンド諸島、ダントルカストー島等を含む。
贈与されるものは、二種類の装飾品であり、一つはムワリとよばれる貝の腕輪、もうひとつはソウラヴァ(あるいはバギ)とよばれる赤い貝の円盤形の首飾りである。ムワリは常に反時計回りに、ソウラヴァは時計回りに交易圏のなかを動く。


■遠洋クラのやり方
クラには島と島との間で行われる遠洋クラと、地続きのコミュニティーの間で行われる島内クラとがある。ここでは遠洋クラに限定して記述します。

(1)ワガ(カヌー)つくり
遠洋クラは島と島の間の贈与である。たいへんに手の込んだカヌー(ワガ)を作ることからすべてのクラの作業は始まる。ワガの所有者、トリ・ワガが作業の中心となり、様々な呪術がほどこされて、ワガが完成する。

(2)誰が出かけるか
 もらい手が、遠洋航海をするのがクラの決まりである。

(3)途中の海
 もらい手のクラ・コミュニティーは何日間かの航海ののちに、クラ・パートナーのいる島に到着する。この地域の人々にとって、自分の島以外は、恐ろしい地域である。人喰い人種や、男を喰い物にする恐ろしい女性の住む島じまなのである。クラ・パートナーは、その様な恐ろしい異郷の地における友人である。

(4)目的地到着
 クラ船団はクラ・パートナーの島につく客人は儀礼的な歓迎をうける。
(5)クラ贈与
 そののち、人々はそれぞれのクラ・パートナーから贈りもの---すなわちムワリないしソウラヴァを受け取るのである。贈りものは様々な儀式的な手続きを経て行われる。取り引きが成立するたびにほら貝が鳴らされるという。

(6)お返しのクラ
 半年くらいの間をおいて、今度は先程はホストであった(そして贈りものの与え手であった)クラ・パートナーは海を越えて、贈りものの受け手であった人達のところへ大航海をする。そして、違った種類の贈りものを彼らから受け取るのである。

(7)クラの交渉のしかた
基本的に等価とされるようなものが交換されます。しかしクラは、あくまで「贈りもの」なのだ。それゆえ、値引交渉とか、もらったものが気にいらないとか、そういったことは言ってはならない。そして、もらったものは拒否できない---それがクラのしきたりである。

■ギムワリ=日用品の交換
 遠洋クラ航海は、単にクラを行うだけの航海ではない。同時に、ギムワリと呼ばれる「取り引き」の行われる大事な機会を提供してくれるのである。クラは、財宝すなわちムワリかソウラヴァをやり取りする活動であるが、それに対し、ギムワリでは日常使うような生活の財を交換する。
 クラが行われることがわかった場合、クラのホストとなるコミュニティーには、回りのコミュニティーから、ギムワリを目指して何人もの人がやってくるという。

(1)誰とギムワリをするか
 クラは決まったクラ・パートナーとのみとり行われる。それに対して、ギムワリをほとんどだれとでも行うことが出来る。ギムワリをおこなってならないのは、クラ・パートナーの間だけなのだ。

(2)ギムワリのやり方
 ギムワリでは値引交渉をしたり、もらったものが気にいらないとか、大声で言ってもかまわないその様なたぐいの交換活動である。

(3)クラとギムワリ
 ギムワリは、常にクラと同時に行われるので、対照して語られることが多い。クラのやり方を非難する一つの方法は、「おまえはそれを、ギムワリのように行っている」と非難することだという。たとえば、必要な儀式的壮重さを欠いていたり、贈られるものに関心を示し過ぎたりしたときに、そう言われるのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上引用終わり

 周辺島々との友好を結ぶための「クラ」は、半年というサイクルで次々と島々を移動していきます。興味深いのは「クラ」を始めるのは、装飾品をもらう側だという点です。普通友好関係を結ぶのであれば、装飾品を持っている側から始めるのがセオリーだと思ってしまいますが・・・
  また、「クラ」は集団内の誰もができるのではなく、特定の人間間で儀式的に行うものであり、これは集団統合や集団維持という観点で行われていたことを意味します。その代わり日用品の交換は「ギムワリ」という形で行われますが、あくまでも「クラ」という贈与関係の上に成り立っているのが特徴です。
 
  List
  この記事は 29463 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_170171
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
343609 仮想通貨も石貨も根本は同じ?世界で最も大きなお金、ヤップ島のフェイとは? 匿名希望 19/02/24 PM06

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp