生命原理・自然の摂理
162773 多細胞生物の進化過程と細胞の機能分化A
 
西谷文宏 ( 30 和歌山 建築設計 ) 07/10/05 AM08 【印刷用へ
3.体細胞の役割分化
「全能性制御機構」によって、機能に応じて役割分化が可能となった体細胞は、外圧状況に応じて複雑に役割分化しながら進化していくが、最も初期に役割分化した体細胞機能は、消化器官と循環器官であると考えられる。

原始的多細胞生物であるカイメン類には、器官分化は見られず、運動器官も神経器官も存在していない。循環器・消化器と呼べるものも存在しないが、外皮に開いた多くの小孔から海水と食物を取り入れ、胃腔と呼ばれる内側の空洞上部に開いた大孔から取り入れた海水を吐き出している。
参考:リンク
食物の分解・吸収は、胃腔で行われるのではなく、各細胞ごとに分解・吸収が行われる。また細胞の酸素吸収は、小孔→胃腔→大孔のルートで流れる海水から摂取されるが、循環器が存在しないので、やはり各細胞単位で酸素吸収される。このように、摂取単位は各細胞毎になっているものの、小孔→胃腔→大孔の海水・食物の流れは、消化器・循環器の原始的形態と呼べる。

単細胞であれ、多細胞であれ、細胞にはエネルギー(食物)摂取と酸素摂取が必要不可欠。単細胞であれば、常に細胞膜が外界に接しているので、細胞膜を通してエネルギー摂取・酸素摂取が可能であるが、多細胞では外皮細胞を除いて、直接細胞膜が外界に接しなくなる為に、エネルギー摂取・酸素摂取する為の何らかの器官=消化器・循環器が必要になる。
初期多細胞生物では、カイメンの小孔→胃孔→大孔の摂取ルートに見られるように、消化器と循環器は分化していない、一体の器官だった。

これはカイメンの次に進化したと考えられている、腔腸動物(ヒドラ・クラゲ・サンゴ・イソギンチャク等)でも同様で、摂取・排泄の両方を行う口から、海水と食物の摂取を行い、胃水管とよばれる体内の腔所で酸素吸収と食物の消化・吸収を行っている。
カイメンがあくまで細胞単位でのエネルギー摂取・酸素摂取であるのに対し、腔腸動物では、胃水管で消化と酸素摂取が行われ、各細胞へと運ばれる。これは、体細胞の機能分化が進むにつれ、生活単位が細胞個別単位から細胞全体へと統合されていくことを示している。

なお、腔腸動物では、既に感覚器官・神経器官・更には筋細胞=運動器官が発達している。ただし、神経器官はまだ中枢神経系をもっておらず、外皮に網目状に神経系が存在する散在神経系となっている。
腔腸動物の祖先は、多細胞生物が爆発的に増殖した先カンブリア時代のエディアカラ動物群であると考えられているが、エディアカラ動物群の中には、自ら動くことのできないもの=運動器官を持たないものが存在する。このことから、運動器官の獲得は、感覚器官・神経器官分化の後であると考えられる。

以上をもとに、多細胞生物の体細胞機能分化の順番を仮説立てすると、以下のように整理される。

 消化循環一体器官→感覚・神経器官→運動器官
 →各器官の発達を統合する為に神経器官から中枢神経系が機能分化
  ≒脳の発生
 →中枢神経系の統合のもとに消化器・循環器が機能分化

 ※感覚器官と神経器官は一体的な働きをするので、同時期に分化したと
  考えられる。

この機能分化の流れを見ると、多細胞の機能分化は、「栄養(食物・酸素)摂取」をいかに効率的に行うか=よりエサを多く獲得するにはどうするか?と言うベクトルのもとに機能分化(=消化・循環器官+運動器官)を進めながら、一方で機能分化していく体細胞を統合する為に更なる機能分化(=感覚・神経器官 散在神経→中枢神経→脳)がなされていくと言う構造にあることが解る。
動物の中でも脊椎動物は高度な機能分化を実現しているが、これは文字通り「エサの取り合いが激しい」→体機能進化への圧力が絶対的に高い為と考えられる。
 
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多細胞生物の機能分化 「Biological Journal」 07/10/20 PM04
細胞接着の重要性 「Biological Journal」 07/10/13 PM11

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