生物の起源と歴史
162695 多細胞生物の生命線 『細胞接着』
 
川井孝浩 HP ( 34 東京 設計 ) 07/10/04 AM11 【印刷用へ
人類も含め、地球上の全ての生命体は、細胞によって形作られている。
そして、多細胞生物の根幹を成す機能は、細胞同士が単に集まるだけでなく、細胞間相互のネットワーク機構とそれらを統合するシステムの確立によって、初めて一つの完成された個体となる事にある。

多細胞生物への進化の前段階、単細胞生物の真核細胞の段階でも、細胞内において既にいくつかの運動機能(小器官)が見られるが、多細胞化とは、それら小器官だけでは適応しきれない状況において、さらに各機能の役割を鮮明に打ち出す(細胞分化する)事によって適応力を格段に高めてきた姿が、現在の様々な動物や植物、菌類などの多様化した生命体への進化の過程である。

ここで、細胞の各段階ごとに獲得した機能を改めて整理してみる。

■単細胞生物
・原核細胞
 細胞膜:認識機能
 DNA:情報保管機能
 鞭毛:運動機能
 リボソーム:たんぱく質合成
 細胞分裂:無性生殖機能
 細胞質基質:生化学反応(捕食・排泄機能等)
 
・真核細胞
 核膜・2倍体:情報保護+修復機能
 減数分裂:有性生殖機能(変異・多様性)
 ミトコンドリア・葉緑体:エネルギー生産機能
 細胞骨格:骨格機能(形態維持)
 小胞体・ゴルジ体:たんぱく質輸送、カルシウム貯蔵機能
 細胞質基質:基礎代謝機能
※他にもいくつかの小器官が存在し、様々な反応を担っているが、詳細は上記機能を補足する器官or未解明のものもある。

原核細胞から真核細胞への進化におてい細胞内小器官が形成され、各機能は細分化したものの、機能面から見るとさほど大きな進化は見られない。原核細胞の時点で既に獲得している機能をより高度化(専門分化)して、生命体としての安定度を高めたものが真核細胞であると考えられる。

また、真核細胞内の各小器官の形成は、一部の器官を除いて細胞同士の細胞内共生により形作られたとする説が現在のところ最有力とされている。

では、これらの機能を既に備えた単細胞たちが多細胞化の必要に迫られた条件、及び最初に分化した機能は何か?

ポイントは、162176 多細胞生物:体細胞の分化について
でも述べたが、生態活動維持に必要なエネルギーの飢餓状態において、真っ先に必要とされた機能は何か?と言う所にある。

1.細胞同士の接着維持機能⇒細胞接着
細胞接着は、特定の膜たんぱく質(カドヘリン・インテグリンなど)による細胞接着分子により、細胞同士が接続されるだけでなく、細胞内において細胞骨格と連結しており、接着構造を安定化させ細胞全体の形態の維持、組織構造の維持を担う。接着構造は、上皮細胞に見られるように、細胞と細胞の間隙を充填することで、外界からの分子、細菌、ウイルスなどの侵入を防ぐという機能も有している。リンク

また、細胞接着の状態は、細胞同士の増殖や生存性維持の制御に関しても直接的で重要な役割を担っています。リンク
一度接着した細胞は、その時点で組織的な役割を果たす為に、増殖の抑制が行われます(抑制が破綻するとがん細胞の浸潤転移の分子メカニズムとなる)。

細胞性粘菌における多細胞化の段階でも、明確に抑制が行われた後に、柄や胞子への分化が見られます。

単細胞単体では受けきれない外圧に対し、内圧を高める必然性から細胞間の接着強度(一体化)を高める機能をまずは作り出したと考えられる。

2.神経機能 ⇒ 細胞間シグナル伝達
細胞分化を行う為には、隣り合う細胞同士の位置情報やそれらを伝達する為のシステムが必要になります。
細胞接着によって組織化された細胞が、次に必要とするのが、この細胞間シグナル伝達による神経機能であると考えられます。
また、相互に位置情報などを伝達しあう仕組みが出来上がった事で、後に各細胞ごと最も必要とされる機能への特化が次に形成されていったとも考えられます。この位置情報を基にして、運動機能、代謝機能、免疫機能などの各機能が、適材適所の働きを見せるようになるのでしょう。
 
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多細胞生物の機能分化 「Biological Journal」 07/10/20 PM04
植物の上陸 「Biological Journal」 07/10/19 AM11
163218 細胞接着における動物と植物の違い 野田雄二 07/10/11 AM04

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