民主主義と市民運動の正体
160078 ガン死亡率が増えているのは高齢化が原因
 
タバコ問題ウォッチャー 07/08/30 PM10 【印刷用へ
1.喫煙(たばこ煙への曝露)から肺がんの罹患にはおよそ30年の時間差があります。20歳でたばこを吸いはじめた人が、1年や2年で肺がんになるわけではないのは理解できますよね? 現実の被害となって現れるのは、そのまま吸いつづけて50歳、60歳になってからです。たばこの害について検討するときは、このラグを考慮しなければなりません。

2.肺がんの死亡率についてですが、「年齢調整」してください。今は高齢化が急速に進んでいますから、肺がんの死亡者数(絶対数)も増えるのは当たり前です。年齢構成の変化を吸収して経年的な傾向を見るためのツールが年齢調整で、死亡率などを、ある年齢分布を想定して計算しなおすものです。「年齢調整済み」の日本の肺がん死亡率は減少に差しかかっており、これまでのたばこ規制の成果と考えられます。

3.喫煙率と肺がんの死亡率は直接には相関しません。喫煙者といっても、1日数本のライトスモーカーから数十本のヘビースモーカーまでさまざまです。たばこ煙に曝露するから肺がんになるのであって、喫煙者だから肺がんになるのではありません。個々人の喫煙実態を詳しく調べて追跡すれば、より直接的で明瞭な関係がわかります。たとえば、たばこ煙への曝露量の多い人(喫煙本数が多く、喫煙暦の長い人)ほど肺がんになりやすいこと、禁煙した人が肺がんになりにくくなることが分かっています。

もう少し踏み込めば、疫学には因果関係の判定基準というものがあります。

・密接性:関連が強いほど因果関係がある。曝露が多いほど疾病の発生率が高い。
・普遍性:特定の集団で認められた現象が、他の集団でも認められること。
・特異性:疾病があれば曝露があり、曝露があれば予測される率でその疾病が発生すること。
・時間性:曝露が発病よりも前にあったことが証明されること。
・論理性:曝露と疾病との関連が、生物学的論理性からも説明できること。

喫煙(たばこ煙への曝露)と肺がんの関係については、これらを綺麗に満たしており、因果関係があることは疑いの余地がありません。

4.上記に関連しますが、日本で紙巻たばこを1日に何十本も喫煙するようになったのは1960年代以降で、つい最近の話です。たばこが紀元前から存在するとしても(文明の表舞台に踊り出たのは大航海時代からでしょうが)、現在の喫煙習慣の歴史は日本では半世紀しかありません。この数十年になって嫌煙運動なり禁煙運動なりが表れたのは、なんのことはない、喫煙量がものすごく増えて、尋常な嗜好ではなくなったからです。

余談になりますが、人間の思考には、自分の生活習慣や価値観を、無意識にあらゆる時代に当てはめてしまう錯誤があるそうです。平均的な喫煙者が紙巻たばこを1日1箱吸っていれば、戦前もそうだったと考えてしまうのです。実際には数本なのですが……。

5.とどめを刺しますよ。イギリス、アメリカ、カナダその他もろもろ、早くからたばこ規制を推し進めた諸国では、肺がんの年齢調整死亡率が減少しています。特にイギリスでは激減しています。WHOなどが自信を持ってたばこ規制を進められるのもこの「実績」があるからで、肺がんの主な原因がたばこではない(たとえば大気汚染など)というなら、この肺がんの減少について合理的な説明が必要でしょう。

なお、受動喫煙についても実証が進みつつあるようです。なにしろ、これまで本当に受動喫煙をしていない(たばこ煙にまったく曝露していない)人などほとんどいませんでしたから。

6.最後に記事タイトルについて。全がん死亡率も年齢調整すれば減少しています。環境政策や医療の進歩によるものでしょう。がんの死者数が(絶対数では)増えている最大の原因は「高齢化」です。つまらない事実ですけどね。とにかくまず「年齢調整」という最も基本的なツールを知ってください。それに尽きます。
 
  List
  トラックバックを再送する(投稿者本人のみ)
  この記事は 81272 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_160078
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
229937 まことしやかな モキ 10/04/11 PM05
179322 トドメ イチ 08/06/17 PM01
160711 煙草は必要か否か 匿名希望 07/09/08 AM00

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
現代の神官=社会統合階級の欺瞞
私権秩序の根幹は身分序列にあったのでは?
支配階級の私有権は絶対不可侵だが、庶民の私有権は剥奪され得る
大衆の期待の変化に応じて統合力も変わってゆく
大衆には、運動を立ち上げる余力が無い→余力を与えられた悪徳エリートが支配する社会
金貸し勢力の弱点と自滅の構造
金貸しと悪徳エリートに止めを刺すのは?
企業を共同体化し、統合機関を交代担当制にする
農(漁)村共同体の建設
支配階級の骨身に染み付いた属国根性
庶民にとって「お上」のことなど、どうでもよかった
日本の首相がアホばかりになったもう一つの理由
民の「お上捨象」とお上の「民の生活第一」という日本人の特異な体質
潮流8:自民党は、なぜ見限られたか?
日本の政治を動かしているのは政治家ではなく官僚だ!〜中村敦夫氏が「霞ヶ関」の実態を暴露
官僚制と試験制の通史的総括
官僚制と試験制の構造的欠陥
文官高等試験合格者が権力の座に着いた昭和初期に日本はおかしくなり始める
幕末の志士亡き後、戦前の試験エリートは失策に失策を重ねた
徴兵制ならぬ徴員制の提案(「日本国の刷新・再生」―21世紀研究会より)
現職の鈴木宗男衆議院議員への不当な最高栽の有罪判決と投獄の政治弾圧@
広域暴力団「霞ヶ関」
「拒否できない日本」を読んで
「アメリカに食い尽くされる日本」を読んでA
日本の政治家も、絶えず監視され報告されているようだ
中川昭一は、なぜ殺されたのか? 亀井に対する「脅し」では?
小泉首相と中曽根元首相に見る奇妙な共通点
この国は電力会社に丸ごと買収されていた。原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ@
日航事故@ '85年、御巣鷹山上空で何が起こったのか?
日航事故A 御巣鷹山上空での日米ソ入り乱れた空中戦の真相
日航事故C 旧陸軍勢力の背後にいるのはロスチャイルド
日航事故D ロスチャイルドに乗せられた明治維新と日露戦争
日航事故E ロスチャイルドとロックフェラーに乗せられた太平洋戦争
日航事故F 旧陸軍勢力の頂点にいる裏天皇の正体は?
マスコミの第一権力化
政治家からマスコミへの権力移行の流れ
小泉の支持率と目先の秩序収束
小泉人気、マスコミに騙されるな!
“民主党攻撃を強化せよ! 徹底的にやれ!”
小泉自民党の“コミ戦”世耕チーム

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp