生物学を切開する
159510 哺乳類の性決定(性分化)のしくみ
 
岩井裕介 ( 35 山口 再開発プランナー ) 07/08/23 AM02 【印刷用へ
※参考
性分化の機序 →リンク 
♂と♀のバイオロジー →リンク (pdf)
生殖器の生理学 →リンク (pdf)
Sex determination →リンク (pdf)


1.減数分裂→受精→遺伝子的な性決定
ヒトの染色体は23組46本。この中の一組を性染色体といい、男はXY、女はXX。
精子と卵子の染色体は減数分裂により23本となる。

最初の性決定は受精時になされる。母親由来の23,X卵子は父親由来の23,X精子または23,Y精子が受精し、受精卵は46,XX (遺伝的女)または46,XY(遺伝的男)のいずれかになる。Y染色体は哺乳類において性を決定する重要な因子(遺伝的な性の決定権は精子にある)。


2.両性に共通な器官(性腺原基)の形成
受精卵は無数の細胞に分化して胎児になる。胎児の成長過程で染色体構成が46,XXか 46,XYによって卵巣あるいは精巣がつくられる。

胎齢4〜5週目には性腺の起源となる「性腺原基」(生殖隆起、生殖堤)が確認される。卵巣、精巣の共通の前駆体であり両性能力をもっている。この中には後に卵子あるいは精子に発育していく原始生殖細胞も含まれる。ヒトでは原始生殖細胞は胎齢24日目に確認されている。
胎齢6〜7週目には、男女の内性器の起源となるミュラー管とウォルフ管が二本ずつできる。
胎齢8週では男女両性の外性器は全く同じで、どちらの性へも分化できる能力を持っている。


3.性腺(精巣と卵巣)の分化
性腺原基が精巣、卵巣へと性分化する。男では性腺原基はY染色体上にある「SRY遺伝子」が働くことによって精巣に発育。SRY遺伝子がつくるタンパク質を精巣決定因子とも呼ぶ。女ではY染色体由来のSRY遺伝子がないので性腺原基は自動的に卵巣に発育していく。


4.性器の分化
・内性器
性腺が決定されると次の性分化は「ミュラー管抑制因子」(AMH)と「男性ホルモン」(テストステロンとその代謝物質)という二つの重要なホルモンの影響を受ける。
胎児精巣が発育するとセルトリ細胞がAMHをつくる。ヒトでは胎齢8〜10週の短期間作用。ミュラー管は胎齢初期では男女両性に認められるが、AMHにより発育が抑制される。
胎児精巣のもう一つの働きとして、ライディヒ細胞から男性ホルモンが分泌される。男性ホルモン(テストステロン)は胎齢8〜10週頃から上昇し、12週頃にピークに達し、17週頃には低下。男性ホルモンはウォルフ管を発達させ男の内性器をつくりあげる。ウォルフ管も胎齢初期では男女両性に認められる。

精巣とは対照的に、卵巣は男性ホルモンをつくらない。そのためウォルフ管は発達できなくなり、卵巣の発育と共に消失。卵巣はAMHもつくらないのでミュラー管が発達。

内性器分化の基本は女性型であり、精巣からの男性ホルモンとAMHが存在する場合にのみ男性型となる。


・外性器
男では胎児精巣からの男性ホルモンが外性器を男性化させる。性器結節から陰茎が発達し、陰唇陰嚢隆起が癒合して陰嚢になり、尿道ヒダは癒合して尿道海綿体になる。これらの変化は胎齢12週までの間におこる。
女では男性ホルモンがないので、男のような発達はしない。性器結節は陰核に、陰唇陰嚢隆起は大陰唇に尿道ヒダは小陰唇というように大きな変化はない。


5.脳の性分化
XYの性染色体構成をもつ男では、SRY遺伝子により性腺原基が精巣へと分化。胎児精巣から分泌される男性ホルモンは、8〜10週頃から上昇し、12週頃にピークに達し、17週頃には低下。この男性ホルモンが脳に作用し特定のニューロン群の分化やシナプスの形成に影響を与え、脳を男性型に分化させる。一方、XXの性染色体構成をもつ女では性腺原基が卵巣へ分化し、男性ホルモンがないため脳は女性型に分化する。この脳の性分化は脳の個体発生の途上で、胎齢90日前後に決まる。この時期を脳の性分化の臨界期と呼ぶ。脳の性分化も生殖器官系の性分化と同じように基本は女性型で、不可逆。
 
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159807 哺乳類の性決定遺伝子「SRY」 野田雄二 07/08/26 PM10
159792 脳の性分化と性ホルモンの関わり 清水昌広 07/08/26 PM06

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