生物の起源と歴史
159333 性決定の要因
 
野田雄二 ( 46 大阪 営業 ) 07/08/20 AM10 【印刷用へ
人間にとって性別の分化は絶対的なものであるが、生物界を見ると必ずしも性別の分化は明確なものでは無い。高等動物においては、精子をつくるのがオスで卵子をつくるのがメスだが、原始的な生物では一つの個体で精子も卵子も作っている。

例えば、腔腸動物であるホヤは雌雄同体で、一つの個体が精子も卵子も作っている。もう少し進化して軟体動物になると、雌雄異体の者が登場してくる。

さらに進化した魚類になると、雌雄同体はごく少数となるが、成長に応じて性転換する種類も多く、相変わらず雌雄の分化はあいまいである。しかし、魚類では遺伝子レベルで性別が決まる種も多く、メダカでは性決定遺伝子DMYも同定されている。

しかし、魚類でほかに性が遺伝子で決定されている魚類の遺伝子を調べてもDMY遺伝子は見つかっておらず、魚類の中でも性決定の遺伝子は異なっているようである。

さらに進化した、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類では自然環境で性転換するものは見当たらず、概ね遺伝子により性別が決定されているが、両生類、爬虫類、鳥類ではホルモン投与などにより、比較的容易に後天的に性転換させることが可能である。

また、爬虫類では遺伝子で性決定されるものもいるが、性遺伝子の型がオス型であっても、孵卵期の温度でメスになったりオスになったり変化するものが多い。

哺乳類では性決定遺伝子であるSRY遺伝子が同定されているが、単孔類はY染色体が無くSRY遺伝子は発見されていない。

鳥類や爬虫類も性決定遺伝子は未発見である。さらに鳥類や爬虫類はメスの性染色体がヘテロタイプであるZW型、オスの性染色体がホモタイプであるZZ型であり、性染色体そのものが哺乳類とは大きく異なっている。これらの遺伝子は哺乳類のXY遺伝子とは相同性が無く、全く違う遺伝子で性決定が行われていると推測されている。

性決定の方法は様々であるが、これらの動物では、共通して、精巣の形成・維持にDMRT1遺伝子が重要な働きをしていることが示唆されているし、また、卵巣の形成・維持にはエストロゲン/エストロゲン受容体系が不可欠であることが実験的にもはっきりと示されている。

従って、精巣分化のカスケードと卵巣分化のカスケードの少なくても一部はこれらの動物間で共通であると考えるのが一般的である。そうすると、性決定遺伝子の主たる役割はこれらのカスケードを最上位でオン、オフすることにより生殖腺の性分化を制御している可能性が考えられる。

また、もっと原始的な段階から考えると、まずは生殖細胞と体細胞の分化が第一段階の分化であり、生殖細胞が卵子と精子に分化するのが第2段階の分化、卵子だけを作る個体と精子だけを作る個体に分化したのが第3段階の分化といえる。

雌雄同体の軟体動物では、もとは同じ細胞から精子と卵子をつくることが可能であり、性転換を行う魚類では卵巣と違う場所に精巣がつくられることから、体細胞が生殖細胞に変化していると考えられる。

遺伝子レベルでは、オスメスに関係なく全ての細胞の遺伝子に、生殖細胞、卵子、精子、卵巣、精巣をつくる情報が保存されており、それを制御する機構を徐々に発達させながら、雌雄分化を進めていったのであろう。

生物の進化とは、新たな機能を獲得し遺伝情報が増えていくと同時に、増えた遺伝情報の中から細胞によっては使わない機能を発現させないように制御する機能も獲得していくことであったのだろう。このようにして、生殖機能が高度化しオスメスの差異が大きくなるに従い、性の可変性が小さくなるように進化してきたのであろう。

性染色体リンク

メダカの性決定遺伝子リンク

雄と雌が決まる仕組み 魚から鳥、哺乳類までリンク

性染色体の進化と性決定 -爬虫類、鳥類、哺乳類を中心としてリンク

特集 動物の性はどのように決まるか?――性決定機構の共通性と多様性リンク

アフリカツメガエルの雌ゲノム特異的遺伝子 xDM−W の解析リンク

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