心の本体=共認機能の形成過程
15927 「やりがい」に潜む社会的欠乏
 
阪本剛 HP ( 27 千葉 SE ) 01/11/11 AM04 【印刷用へ
> ろくに課題に取り組みもせず、仕事に対して「甲斐」を求める若者の姿は、闘争忌避の逃げのように感じますし、無いもの強請りの要求主義とも取れます
> また、やたらと「甲斐があった」と言うその姿は、課題策定が甘いか、もしくは単なる自己満足のように感じます

 まずは「やりがい」という言葉が重視されるようになってきた背景から考えてみてはいかがでしょうか?

■■「やりがい」が重視された時代的背景

 「やりがい」が注目されるようになった背景には、まず、「やりがい」というものがなければ、とても働こうとは思えない、働いてられないような状況に社会が変化したということだと思います。

 かつては、働くことは、なによりも「食っていく」=「生きていく」ことと表裏一体でした。
 「食っていく」ことに関して、自分の都合・興味関心など言ってられない、絶対的な貧しさという圧力が存在していたので、「やりがい」というものを考えることもなかったでしょう。

 現在はどうでしょうか?
 
 「やりがい」を別にすれば、とりあえず食べていくことができます。
 というよりも、現在では、親のスネをかじってさえおれば、はっきり言って働かずとも、充分生きている連中がたくさんおります。

 企業が、「やりがい」を訴えるのも、別にだまくらかそうとしているわけではなく、マシな「やりがい」、つまり企業としてのアイデンティティ=「何のために企業として存在するのか」という理念、社会的目的、使命を明確に主張しなければ、マトモで優秀な奴はこないから、そうしている、という事実があります。
 そうでなければ、もっとマシな「やりがい」を掲げる企業に、人材をみすみす奪われてしまうからです。

■■「やりがい」に潜む社会的欠乏

 確かに、どの企業も理念と言っても、似たり寄ったりだし、果たして本気で信じているのか疑う余地もあります。

 ですが、私は、この傾向は、悪いことではないと思います。
 むしろ、新しい可能性を示唆している事態だと、考えてはいかがでしょうか?

 かつては、疎外労働は当たり前とされ、労働者があえて気を遣うことと言えば、賃金と肩書きくらいだったのです。
 これは逆にいえば、カネさえもらえれば、ポストさえもらえれば、企業では自然破壊でも、肉体汚染でも、何でもやるのだ、ということです。

 現在では、賃金や肩書きにこだわらなくなったとはいえ、企業は利益追求主体ですから、いまだに環境も破壊しているでしょうが、それをおおぴらには出来なくなっているでしょう。つまり、社会的な存在性を重視されはじめた、ということです。

 このことは我々労働者にも言えます。何らかの社会性、公共性、人類的価値を念頭におきながら、職を探すようになった、働くようになったのです。企業が掲げる「やりがい」の中身が、決して個人的な利益に還元できない、社会性を重視したもの、社会的影響力を訴えたものであるのは、そのためです。 


■■社会の変革を促す価値的大転換

 かつて、社会に参加する運動といえば、何らかの思想的枠組み=イデオロギーの中で、観念的な制度批判と、挑発的なアジテーションによって、大衆の喚起を促す、といったスタイルが主流でした。
 この方法論では、結局、特殊な目的意識を持ったごく少数の人々が、不毛な要求闘争を繰り返すばかりで、何も変わらなかったのです。

 しかし、現在の労働観の変化は、もっと、意識の深い次元での変化があるように思えます。
 自分の労働の目的を、何らかの公共的価値に照らしながら考え、実践しようとする試みは、なんと日常の労働そのものを社会的価値につなげたいという潜在的な欠乏の、発露なのです。

 近代社会は、個々人が、個人的欲求を追求し、その活力によって社会のダイナミズムを発生させ、あらゆる体制は、この個人の内面=私益獲得闘争を前提として組み立てあげられています。

 その秩序の根幹とも言うべき近代人の心性が、もはや盤石ではなくなり、新しい可能性へシフトしているのです。
 これは、人間が私益主体として社会に存在していることが当然とされている近代社会においては、極めて大きな変化です。社会の体制変革を促す可能性を持った価値的に大きな転換なのです。

 ですから、我々がすべきことは、この変化を単なるムーブメントに終わらせずに、閉塞した社会を脱却する基盤として、いかに現実化させていくか、その戦略を考えていくこと、だという気がしています。

 
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