生物学を切開する
157918 生殖細胞と体細胞の起源(ゾウリムシの事例から)
 
田中素 HP ( 41 長崎 企画 ) 07/07/29 PM09 【印刷用へ
ゾウリムシは有性生殖と多細胞化の起源をなすモデル生物として、以前から研究が重ねられてきた。最近の知見をまとめてみる。
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■分裂の限界と接合による再生
単純な細胞分裂だけでは、700回(種によって約150回〜約700回の幅がある)が限界で死んでしまう。他の個体と接合し、減数分裂を行って小核を融合することで再生し、再び700回の分裂ができる。

■未熟期と老衰期
接合により生まれ変わった個体は、すぐには次の接合ができない未熟体である。約50回の分裂を行うことで性的に成熟し、接合が可能になる。また逆に、600回以上の細胞分裂を行った個体は、接合能力を失ってしまい、残り約100回の細胞分裂を経て死を待つ老衰体となる。

■「自家生殖」という仕組み
成熟した個体が接合する相手が見つからない場合、自らの細胞内で小核を減数分裂させ、自家受精する自家生殖(オートガミーと呼ばれる)を行う場合がある。この時も、通常の接合と同様、分裂回数はリセットされる。

■小核と大核
ゾウリムシは、小核と大核の二つの細胞核を持っている。小核が二倍体なのに対し、大核は数百倍体のゲノムを持ち、通常の細胞分裂に関わるタンパク質合成を行っている。小核は細胞分裂時にはほとんど働いていない。大核は、接合または自家生殖時には一旦消滅し、減数分裂→受精によって生じた新生小核から分裂生成される。

■細胞分裂の回数は大核DNAが規定している
分裂回数の少ない若い個体の大核を、分裂回数の多い(老化した)個体に移植すると、老化個体の分裂回数は若い個体の残存分裂回数分だけ回復する。逆に、老化個体の大核を若い個体に移植すると、その個体は老化個体の残存分裂回数分だけしか分裂ができなくなる。同じように老若個体の小核を交換移植しても、このような現象は起こらない。
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こうしてみると、ゾウリムシの小核は明らかに生殖細胞の起源であり、大核は体細胞の起源であることが分かる。

なぜ真核単細胞生物がこのような機構を獲得したのか。大型化・高機能化し、多量の遺伝情報を制御しなければならない真核細胞にとって、分裂や代謝過程でのコピーミスの蓄積が大きなリスクとなっていき、一方でリスク要因である単純分裂を制限し(大核→体細胞)、一方で制御された小変異を組み込みながら確実に生命を繋いでいく保存の機能(小核→生殖細胞)を分化していくことが、適応上有利だったのではないだろうか。

(参考)
ヒメゾウリムシにおける大核交換移植を用いた加齢の研究リンク
ゾウリムシの生命サイクルリンク
細胞寿命起源論リンク
 
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161473 ■ゾウリムシの小核の役割 やっさん 07/09/17 AM00
158517 オスメス分化したのはいつから? 田野健 07/08/08 PM08
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158489 ゾウリムシの成熟期前の分裂とは、全く新しい細胞に生まれ変わる過程ではないか 村上祥典 07/08/08 AM10
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