古くはペニシリンショックやスモン病、クロロキン網膜症などがありますが、どれも、健康でありたいと願う人がよかれと思って服用した薬が、むしろ災いとなって害をなしたものです。
■ソリブジン事件
帯状疱疹治療薬薬として開発されたが、治験中に3人が死亡したまま認証され、結果として23人が死亡した。
最初の死亡例が開発元の日本商事に報告された直後、社員175名が自社株を売却し、インサイダー取引容疑で捜索された。
■サリドマイド
昭和30年代半ば頃、服用した妊婦に四肢の奇形児が生まれることが問題となった。
元はてんかん患者に抗痙攣剤として処方されていた睡眠剤だったが、副作用が少なく、大量服用による死亡もないため、睡眠薬や妊娠時のつわり軽減薬として処方された。
西ドイツで開発されたサリドマイドを日本の製薬会社が模倣品として販売し、ドイツ本国で薬害が報告された後も半年間販売されつづけ、309人の被害者が生まれた。実際は認定児数以上に死産が多いとされる。
■薬害エイズ
血友病の治療法として血液製剤が普及しだした1980年代、同時期にアメリカで広まっていたエイズ患者から売血された血液を原料として製造された非加熱製剤を治療に用いられた血友病患者のうち、40%がHIVに感染し、エイズを発症し死亡した事件。
治療の過程で、製薬会社と厚生省、大学教授らの予見可能性が議論となった。加熱製剤の承認が日本ではアメリカに2年遅れたこと、その間に血友病患者にHIV感染者が広まっており、死亡者が2人発生したにもかかわらず日本における最初のエイズ死亡患者を同性愛者と発表したことなど、国と製薬会社の責任が問われた。民事裁判では、当時の医療業界従事者の間で非加熱製剤の危険性は常識となっていた、と指摘されている。
感染者1800人、死亡者400人
'95年10月6日 東京地方裁判所 和解勧告に当たっての所見
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■C型肝炎
薬害エイズにも関与したミドリ十字社の後身である三菱ウェルファーマが製造したフィブリノゲンによってC型肝炎への感染が拡大した事件。
人の血液の成分を原料とするフィブリノゲン製剤は、大量出血時の止血目的で多く用いられていた。昭和63年7月以降は、肝炎ウイルスとの因果関係が疑われたため、使用が制限されたが、その後もウイルス不活性技術が未確立なまま平成6年まで処方されつづけ、被害を拡大させた。
日本では、100〜300万人がC型肝炎ウイルスに感染していると推計される。慢性的な感染状態では自覚症状はほとんどないが、長期に亘る罹患により、慢性肝炎・肝硬変・肝臓ガンなどを発症する可能性が指摘される。アメリカにおける調査では、成人の死因の1%を占める慢性肝臓病の内、40%がC型肝炎ウイルスによるものとされている。
C型肝炎ウイルス検査受診の呼びかけ
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薬は人類の歴史と共に長く存在しましたが、素朴な薬(自然の葉をすりつぶしたものや、まじないの類のもの)ではそもそも薬効が低く、それは即ち副作用も軽微であることに他なりません。しかし、近年の技術力の発展によって微生物を利用したり、高度な抽出技術をもって製造された薬は効能も高く、劇的な効果を見せる一方で、未知の反応や重篤な副作用を及ぼすことが少なくありません。
さらに、薬が工業製品化され大量生産されるに至っては、国際的な被害の拡大が生じることになります。また、副作用情報がもたらされているにもかかわらず、それが十分に開示されず、企業の利益主義や官僚的対応によって、被害が拡大する事件が後を絶ちません。
この点において改善が見られないまま、現在脚光を浴びている遺伝子治療やデザインドラッグのような、更に高度かつ複雑な治療方法がこのまま進んでいけば、我々の想像もつかない副作用が待ちかまえているのではないかと思います。 |
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